パワー競争激化で出現したガチのライバル! 昭和デビューの1.6リッター2BOX車3選

1980年代から1990年代にかけて走り好きの若者を夢中にしたクルマといえば、高性能な1.6リッターエンジンを搭載した2BOX車です。そこで、1980年代にデビューした1.6リッターエンジンのホットハッチを、3車種ピックアップして紹介します。

昭和の終わりを彩ったテンロク・ホットハッチを振り返る

 近年、世界的にも極端に数が少なくなってしまったのが1.6リッターエンジン車で、もはや「風前の灯火」といった状況です。

1980年代にデビューした高性能1.6リッターエンジン搭載車たち
1980年代にデビューした高性能1.6リッターエンジン搭載車たち

 一方、1980年代から1990年代には各メーカーから1.6リッターエンジン車が販売されていました。

 1.6リッターエンジンは日本の自動車税からすると不利な排気量といえますが、モータースポーツの世界ではクラス分けの区分としてメジャーな存在でした。

 そのため、市販車においても1.6リッターエンジンは高性能化が顕著で、多くの走り好きの若者から熱狂的な支持を得て、なかでも新時代のスポーティモデルである高性能FF2ボックスカーがもてはやされていました。

 そこで、昭和の終わり頃に登場した1.6リッターエンジンのホットハッチを、3車種ピックアップして紹介します。

●ホンダ「シビック Si」

レースでの活躍もあって高性能ハッチバック車というイメージを確立した「シビック Si」

 ホンダは1972年に、初代「シビック」を発売。次世代のFFベーシックカーとして国内外で大ヒットを記録しました。

 そして、最初の大きな転機を迎えたのが1983年にデビューした3代目で、時代の流れから一気に高性能化を果たしました。

 さらに1984年には、パワー競争でアドバンテージを築くべく新グレードとして「Si」が加わり、新開発の1.6リッター直列4気筒DOHC4バルブ「ZC型」エンジンが搭載されました。

 シビック Siはわずか890kg(MT車)と軽量な車体に最高出力135馬力(グロス)を発揮するエンジンを組み合わせ、シビック=高性能FF車というイメージを確立することに成功。

 実際に動力性能だけでなく優れたコーナリング性能を誇り、若者たちを夢中にさせました。

 一方、ZC型は高回転域までスムーズに回るエンジンでありながら、シリンダーボアよりもストロークが大きいロングストロークの設計としたことで、中低速域でのトルクも十分に確保しており、優れたドライバビリティから実用性の高さも高く評価されました。

 シビック Siは市販車をベースにしたグループAカテゴリーのツーリングカーレースでも活躍し、FF1.6リッター車を代表する存在となり、後の「SiR」「タイプR」など高性能シビック誕生の礎になりました。

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●日産「サニー 306 ツインカム NISMO」

流行のエアロパーツが装着され見た目にもスポーティに演出された「サニー 306 ツインカム NISMO」

 かつて日産を代表する大衆車といえば「サニー」でしたが、サニーは幅広いユーザー層に訴求するため、早くも1970年発売の2代目から高性能グレードをラインナップしていました。

 そして、1985年に登場したFF化第3世代である6代目では、シリーズ初のDOHCエンジンを搭載した「ツインカム」シリーズが展開されました。

 1986年に加わったツインカムシリーズは、4ドアセダンの「スーパーサルーン」と3ドアハッチバックの「306」、3ドアハッチバッククーペの「RZ-1」にそれぞれ設定され、なかでも「306 ツインカム NISMO」は3ドアハッチバックの最上位に位置するモデルで、流行のエアロパーツが装着されるなどエンジン以外でも魅力的なモデルでした。

 搭載されたエンジンは最高出力120馬力の1.6リッター直列4気筒DOHC「CA16DE型」で、前述のZC型と同じくロングストロークの設計でした。

 また、ボディにはフロントスポイラー、サイドステップ(サイドシルプロテクターと呼称)、リアアンダースポイラーが装着され、カラーリングも専用の「クリスタルホワイト」と「ニスモブラック」の2色を設定。

 ほかにもボディサイドには専用のデカール、内装ではスポーツシートに本革巻ステアリング、ホワイトメーターなどによってスポーティに演出され、足まわりではアジャスタブルショックアブソーバー、4輪ディスクブレーキ、ブリヂストン「ポテンザ」ブランドのハイグリップタイヤが純正装着されるなど、NISMOの名にふさわしい仕様となっていました。

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●三菱「ミラージュ サイボーグ」

ハイパワーなターボエンジンによってライバルにアドバンテージを築いた「ミラージュ サイボーグ」

 前出の2台は1.6リッターDOHCの自然吸気エンジンを搭載していましたが、三菱はパワー競争でさらに優位に立つ目的でDOHC+ターボを展開。

 そして1987年に登場した3代目「ミラージュ」には、トップグレードに最高出力145馬力を誇る1.6リッター直列4気筒DOHCターボエンジン「4G61型」を搭載した「サイボーグ 16V-T」がラインナップされました。

 外観は精悍なフロントフェイスにロングルーフのスタイリッシュなシルエットで、とくにサイボーグではフロントにスポイラー形状のバンパー、サイドステップ、リアハッチのセンター付近(ベルトライン)にスポイラーが装着され、スポーティなフォルムが強調されていました。

 また、このハイパワーを支える足には、ダッシュボードのスイッチでスタビライザー特性とショックアブソーバ減衰力特性を同時に切り換えられる「デュアルモードサスペンション」が与えられ、最高出力125馬力の自然吸気エンジンモデルでは、世界初の路面からの入力周波数に感応して瞬時に減衰力を変化させる「GTサスペンション」が採用されるなど、シャシ性能も高められていました。

 さらに1989年のマイナーチェンジではターボモデルの最高出力が160馬力までパワーアップし、4WD車も加わるなど、同クラスでは圧倒的なパフォーマンスを誇りました。

 その後、1991年に登場した4代目からは高性能グレードが高回転型の自然吸気エンジンにシフトしたため、ハイスペックなターボモデルはこの3代目の一代限りでした。

※ ※ ※

 かつて高性能な1.6リッターエンジン車はコンパクトカークラスの主役として君臨していましたが、各メーカーともモータースポーツへの参戦が沈静化すると激減してしまい、現在に至ります。

 現行モデルで採用されているダウンサイジングターボエンジンも大いに魅力的ですが、高回転型の1.6リッター自然吸気エンジンのフィーリングは格別でした。

 もはや高回転型エンジンの時代ではないということは理解できますが、失われたのは大きな損失といえるでしょう。

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