5ナンバー車「全幅1695mm」なぜ多い? 軽も全長&全幅が共通化 規格ギリギリになる背景
軽自動車は全長3395mm×全幅1475mmで統一されている!?
しかしその一方で、数は少ないですが、小型車で全幅が1695mmに達しない車種もあります。コンパクトカーなら、スズキ「ソリオ」(1645mm)、日産「マーチ」(1665mm)、ダイハツ「ブーン」/トヨタ「パッソ」(1665mm)、ダイハツ「トール」/トヨタ「ルーミー」(1670mm)などです。
SUVでもクロスビー(1670mm)などが該当しますが、いずれも全長を4m以下に抑えたコンパクトカーです。

これらの車種が全幅を1690mm以下に抑えた理由は、狭い場所でのすれ違いなどを容易にするためです。車庫の広さが限られるユーザーも、全幅の狭いボディは使いやすいです。
そして全幅が1690mm以下のコンパクトカーを開発するメーカーを見ると、ソリオとクロスビーはスズキ、ブーン/パッソとトール/ルーミーはダイハツのクルマです。
両社とも軽自動車を多く扱っていますから、小型車も軽自動車ユーザーが乗り替えることを考えて全幅を狭めに抑えているのです。
最近はサイズや排気量などが大きいクルマから小さいクルマに乗り替える「ダウンサイジング」が話題ですが、実際には逆の「アップサイジング」も見られます。
軽自動車からアップサイジングする場合、全幅が1695mmだと運転しづらいと感じることもあるため、例えばソリオは1645mmに抑えました。
そして軽自動車も、全長と全幅は規格枠ギリギリに設定されたモデルが多いです。軽自動車の全長・全幅の規格枠は全長3400mm×全幅1480mmですが、各車とも実際の数値は全長3395mm×全幅1475mmに抑えています。
規格枠ギリギリになる理由は、軽自動車のボディが小さいためです。少しでも車内を広く確保して、そして走行安定性や衝突安全性も高めるため、ボディサイズを規格枠ギリギリに設定しているのです。
例外は2005年に発売されたスバル「R1」でしょう。全幅は1475mmですが、3ドアクーペとあって、全長は3285mmに抑えていました。
しかし売れ行きは低調で、2010年に販売を終えており、現在の軽自動車では全長と全幅が共通化されています。
なお軽自動車の規格枠は全長と全幅は小さいですが、全高は5ナンバー車と同じ2000mmまで許容されています。
そのために、ホンダ「N-BOX」やスズキ「スペーシア」、ダイハツ「タント」といったいわゆる「スーパーハイトワゴン」と呼ばれる軽自動車は、全高が1700mmを上まわります。
全長と全幅が小さい代わりに天井を持ち上げて、乗員を高い位置に座らせることにより、空間効率を向上させているのです。
全幅を1695mm以下に抑えた5ナンバー車も、大半の車種が全高は1500mm以上に設定しており、天井を高くすることで、運転のしやすさと車内の広さを両立させています。これは日本のメーカーがもっとも得意とする合理的なクルマ造りです。
全幅1700mmを上まわる3ナンバー車にすれば、外観のカッコ良さや側面衝突時の安全性、室内幅の広さ、走行安定性、さらに前輪の切れ角拡大による小回りの利きまで、いろいろなメリットが生まれます。
その一方、あえて5ナンバーサイズにこだわる車種があるのは、裏道や駐車場の幅など、日本の道路環境における運転のしやすさを重視しているからです。
5ナンバーサイズは、日本のユーザーに対する温かい思いやりともいえるでしょう。1695mmの全幅は、5ナンバー車のなかでは最大級ですが、この数値に収めるためにメーカーは創意工夫を凝らしているのです。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。






































