戦うために生まれたマシンたち! バブル絶頂期に登場したネオクラシック4WD車3選

バブル景気の頃には数多くの名車が誕生しましたが、なかでも4WDスポーツカーといえば日産「R32型 スカイラインGT-R」が真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか。一方、ほかにもハイスペックな4WD車が数多く登場。そこで、ネオクラシックな4WDスポーツモデルを、3車種ピックアップして紹介します。

バブル絶頂期に登場した4WDスポーツモデルを振り返る

 日本がバブル景気に湧いていた1980年代の終わりから1990年代の初頭には、今も語り継がれるような名車が数多く登場しました。

バブル絶頂期に登場した魅力的なハイスペック4WD車たち
バブル絶頂期に登場した魅力的なハイスペック4WD車たち

 同時に日本車の高性能化も一気に進み、なかでもレース参戦は各メーカーのPR施策としても重要だったことから、レースベース車となるハイスペックなモデルが次々と発売されました。

 その代表的なモデルといえば1989年発売の日産「R32型 スカイラインGT-R」が挙げられますが、ほかにも高性能的な4WDモデルが登場し、スポーツカー市場は活気に満ち溢れていました。

 そこで、バブル絶頂期に発売された4WDスポーツモデルを、3車種ピックアップして紹介します。

●トヨタ「セリカ GT-FOUR」

スタイリッシュなボディの高性能4WDスポーツカーに仕立てられていた「セリカ GT-FOUR」

 トヨタは1970年に、スペシャリティカーの普及拡大を狙って開発された初代「セリカ」を発売。当時は特別な存在だったDOHCエンジン車を設定するなど、スポーティなモデルとして人気を集めました。

 その後セリカは代を重ね、1985年にはFF化された4代目がデビューし、さらに1986年には世界ラリー選手権(以下、WRC)参戦を目的としたハイパワーなターボエンジンとフルタイム4WDを組み合わせた「セリカ GT-FOUR」が加わり、4代目セリカのイメージリーダーとなりました。

 そして、1989年に5代目が発売されると、基本的なコンセプトは4代目から踏襲されましたが、3ドアハッチバッククーペのボディは丸みをおびた流麗かつボリューム感のあるフォルムへと一新。

 4代目と同じくGT-FOURがラインナップされ、最高出力225馬力を誇る2リッター直列4気筒DOHCターボ「3S-GTE型」エンジンを搭載し、駆動方式はフルタイム4WDで、リアのディファレンシャルギヤに日本初のトルセンLSDを採用していました。

 また、限定モデルとして世界初の油空圧式のアクティブサスペンションを装備した「アクティブ スポーツ」や、ワイドボディの「GT-FOUR A」、競技用ホモロゲモデルの「GT-FOUR RC」などを展開し、次世代スポーツカーとしてのポジションを明確にしました。

 ちなみに当時の新車価格(消費税含まず)はGT-FOURが268万円、アクティブ スポーツが320万円と、同クラスのなかでも高額で、バブリーなモデルでした。

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●マツダ「ファミリア GT-R」

オーソドックスな3ドアハッチバックを戦闘マシンに変貌させた「ファミリア GT-R」

 マツダは1963年に、初代「ファミリア」を発売。トヨタ「カローラ」や日産「サニー」に先駆けて開発された大衆車です。

 その後、マツダの主力車種の1台となり代を重ね、1985年に発売された6代目では日本初のフルタイム4WDシステムを搭載した「ファミリア GT-X」が登場し、ターボエンジンとの組み合わせによる高性能4WD車の先駆者でした。

 ファミリア GT-Xは国内外のラリーで活躍したことからファミリアのイメージアップに貢献し、走り好きな若者から絶大な人気を誇りました。

 さらに1989年に登場した7代目では、トップグレードに最高出力180馬力を発揮する1.8リッター直列4気筒DOHCターボエンジンを搭載した第2世代の「GT-X」をラインナップ。

 しかし、より高性能なライバルの台頭から、1992年に大径タービンと大容量インタークーラーを採用して最高出力を210馬力まで向上させた「ファミリア GT-R」が加わりました。

 ファミリア GT-Rにはインタークーラーの冷却効率アップのために開口部を大きくしたフロントバンパーや、エアアウトレットが付いたボンネットが採用され、改造がほとんど許されないグループNカテゴリーに特化したマシンとして開発されました。

 そして、ファミリア GT-Rは目的どおりグループNクラスのWRCやその他のモータースポーツで活躍しましたが、バブル崩壊後の経営状況悪化から、マツダは1992年シーズンをもってワークス活動を中止。

 その後のファミリアには高出力なターボエンジンを搭載した4WDモデルは設定されず、2004年に歴史に幕を下ろしました。

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●日産「パルサー GTI-R」

日産で最後のワークスラリーマシンとなってしまった「パルサー GTI-R」

 日産が初めて本格的なラリーに参戦したのは1958年の「豪州ラリー」で、その後は「ブルーバード」や「フェアレディZ」などによるWRCでの活躍もあって、かつては「ラリーの日産」と呼ばれたほど、実績を積み重ねていました。

 そのWRCへの参戦において最後のベース車となったモデルが、1990年に発売された「パルサー GTI-R」です。

 パルサー GTI-Rは4代目パルサーの高性能グレードとして開発され、エンジンは2リッター直列4気筒DOHCターボの「SR20DET型」を搭載し、最高出力230馬力を発揮。このSR20DET型エンジンは「S13型 シルビア」などに搭載されたものと同型ですが、パルサー GTI-R用は4連スロットルが装着されるなど特別に仕立てられていました。

 トランスミッションは5速MTのみで、駆動方式はセンターデフとビスカスカップリングを組み合わせたフルタイム4WDシステムの「アテーサ」を搭載。

 外観ではボンネット上にインタークーラー冷却用の大型ダクトと、リアには巨大なルーフスポイラーが装着され、生粋のラリーマシンにふさわしい戦闘的なデザインにモディファイされていました。

 パルサー GTI-Rは同じくラリーベース車の「ブルーバード SSS-R」よりもショートホイールベースのボディということから、ラリーカーとしてポテンシャルの高さが期待されましたが、WRCでは最高位が総合3位と結果を残せませんでした。

 バブル崩壊という背景もあって1992年シーズンを最後に、日産はWRCのワークス活動から撤退し、パルサー GTI-Rはこの代限りで消滅してしまいました。

※ ※ ※

 モータースポーツと直結した市販車は昭和から平成にかけて数多く存在しましたが、近年はトヨタ「GRヤリス」やマツダ「ロードスター NR-A」などごくわずかになってしまいました。

 そもそも、国産自動車メーカー各社がモータースポーツ参戦やサポートに消極的になってしまったため、仕方ないことなのですが、それに比例して比較的安価な高性能車が少なくなってしまい、今後も復活することは難しいでしょう。

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