復活が期待できないからこそ貴重な存在! 超絶魅力的なシリーズ最後の傑作高性能セダン3選
近年、ニーズの変化から日本の自動車市場ではセダンの人気は低迷しています。そのため、多くのセダンが姿を消しましたが、シリーズの最後に登場した魅力的なモデルも存在。そこで、有終の美を飾った高性能セダンのファイナルエディションを、3車種ピックアップして紹介します。
シリーズ最後となった高性能セダンの限定車を振り返る
現在、世界的なSUV人気が続いており、もはやブームにまで発展しています。さらに日本の自動車市場では、ファミリーカーの定番車種であるミニバンや、経済性に優れたコンパクトカーと軽自動車が販売台数の上位を占めている状況です。
一方、存在感が薄れてしまったモデルのひとつがセダンで、1990年前後にはトップセラーに君臨していたものの、今ではすっかり不人気車の一員になっています。
そのため、各メーカーとも「売れないから売らない」という自然な流れから、セダンラインナップは極端に減少してしまいました。
しかし、そのなかには惜しまれつつ消えた高性能なモデルもありました。
そこで、有終の美を飾った高性能セダンのファイナルエディションを、3車種ピックアップして紹介します。
●三菱「ランサーエボリューション ファイナルエディション」
三菱は1992年に、世界ラリー選手権(WRC)に参戦するベース車として、それまでの「ギャラン VR-4」に代わって「ランサーGSR エボリューション」を開発しました。
その後、WRCでは最大のライバルだったスバル「インプレッサWRX STi」と激戦を繰り広げ、今ではありえないほど短いスパンで改良を重ねました。
しかし、三菱は業績悪化によりWRCから撤退し、第4世代である「ランサーエボリューションX」をもって2015年に歴史に幕を下ろしました。
ランサーエボリューションシリーズの終了を宣言した同年4月に、最終モデルとして限定車の「ランサーエボリューション ファイナルエディション」が1000台限定で発売。
ベースは「ランサーエボリューションX GSR」の5MT車で、2リッター直列4気筒DOHCターボの「4B11型」エンジンは新たにナトリウム封入エキゾーストバルブを採用する改良を受け、歴代で最高となる313馬力までパワーアップ。
また、それまでメーカーオプション設定だった「ハイパフォーマンスパッケージ」を標準装備し、ビルシュタイン製前後単筒式ダンパー、アイバッハ製前後コイルスプリング、ブレンボ製2ピースタイプフロント大径ベンチレーテッドディスクブレーキ、ハイグリップタイヤが組み込まれました。
ほかにも、リアトランクリッドに「Final Edition」のエンブレムと、フロアコンソールにシリアルナンバープレートが取り付けられ、マルチインフォメーションディスプレイのオープニング画面では「Final Edition」を表示するなど、特別に仕立てられていました。
ランサーエボリューション ファイナルエディションは2015年4月10日から先行予約が開始されましたが、8月20日に完売と宣言され、三菱のラインナップからセダンそのものが姿を消しました。
●スバル「WRX STI EJ20ファイナルエディション」
スバルは1989年に、新時代のセダン/ステーションワゴンとして初代「レガシィ」を発売。新開発の2リッター水平対向DOHCエンジン「EJ20型」を搭載し、トップグレードの「RS」ではターボを装着して最高出力220馬力を発揮。WRC参戦のベース車にも起用されました。
その後、1992年に誕生した「インプレッサ WRX」がWRC参戦車両となり、前出のランサーエボリューションと同じく改良が重ねられ、2014年にインプレッサから独立した「WRX STI」へと、EJ20型エンジンとともに高性能セダンの系譜が受け継がれました。
しかし、スバルは2019年度でEJ20型エンジンの生産を終了すると発表し、同時にWRX STIも消えることになり、最後の限定車「WRX STI EJ20ファイナルエディション」が、2019年10月に555台限定で発売されました。
WRX STI EJ20ファイナルエディションは「WRX STI タイプS」をベースに、エンジンの回転系パーツであるピストン、コンロッド、クランクシャフトなどの重量公差・回転バランス公差を最小限に抑えた「バランスドエンジン」を搭載。最高出力は308馬力のままでしたが、高回転域まで気持ちよく吹け 上がるフィーリングにさらに磨き上げました。
外観では、ゴールド塗装のBBS製19インチ鍛造アルミホイールを装着し、フロントグリルやリアバンパーには、STIのコーポレートカラーである「チェリーレッド」の差し色を採用。ドアミラーやシャークフィンアンテナはブラックに塗装することで、全体を引き締めるアクセントとなっていました。
WRX STI EJ20ファイナルエディションは受付期間中に購入希望者が台数を上まわったため、最終的に商談権が抽選となり、予定どおり2020年3月に生産を終了しました。
●トヨタ「マークX“GRMN”」
トヨタは2019年12月に、「コロナマークII」から50年以上も続いた歴史あるセダンの「マークX」の生産を終了しました。
2004年にデビューした初代マークXは、長年にわたってヒットを続けていた「マークII」の後継車にあたり、フォーマルな印象の外観と基本性能が高さから人気を集めました。その後、2009年には初代からキープコンセプトとした2代目が登場。
2015年には2代目マークXをベースとしたハイパフォーマンスなコンプリートカー「マークX“GRMN”」が100台限定で発売され、さらに2019年3月には改良された第2弾の350台が販売されました。
車名の“GRMN”は、TOYOTA Gazoo Racingが開発したコンプリートカーのなかでも最高峰に位置し、2022年1月に発表された「GRMNヤリス」が最新モデルです。
第2弾で登場したマークX“GRMN”に搭載されたエンジンは、ベースの「マークX 350RDS」と同じ3.5リッターV型6気筒自然吸気で、最高出力は変わらず318馬力を発揮。エンジンは出力特性が変更されるにとどまるライトチューンでしたが、組み合わされるトランスミッションはカタログモデルには無い6速MTが与えられました。
一方、シャシは252か所のスポット溶接打点追加によって大幅な剛性アップが図られ、足まわりでは新開発のダンパーを装着。パワーステアリングのアシスト特性を最適化するなど、マークXの基本性能をさらに高めるチューニングメニューでした。
また、外装のエアロパーツは控えめですが、専用の前後バンパーにリアの4本出しマフラー、19インチ鍛造ホイールが装着されるなど、スポーティに演出。
内装も専用スポーツシートを搭載し、インパネやセンターコンソールにカーボン調パネルが用いられ、ブラックに統一したカラーコーディネートによって、シックながらスポーツマインドあふれる装いとなっていました。
マークXの生産終了目前の2019年4月に特別仕様車の「250S“ファイナルエディション”」がリリースされましたが、マークX“GRMN”こそ集大成というべきモデルでした。
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2台目に紹介したWRX STIですが、2021年1月に新型「WRX S4」が発表されたことから、同じく新型の登場が大いに期待されました。
ところが米国スバルは2022年3月11日に、新型「WRX」をベースとした内燃機関を持つ次期WRX STIを生産しない予定であることを公表。
EVとして新型WRX STIが登場する可能性は残されていますが、多くのスバリストにとって悲しい発表だったようです。
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