「きっかけは4年前の米国だった」日野がエンジン認証で不正 なぜ今? 原因は? 会見で語られた発覚の経緯
不正発覚、なぜこのタイミング? 原因は現場のプレッシャーか
それにしても、なぜこのタイミングで不正が発覚したのでしょうか。
その経緯について、きっかけは米国だったといいます。
2018年11月、日野の社員が米国での排出ガス認証に関して同社のやり方に疑問を持ったことが始まりでした。米国の弁護士を起用して調査を進めたところ課題が見つかり、米当局に対して報告しました。現在も、米司法省から調査を受けている最中です。
このように米国で課題が生じたため、一方の日本でも、2021年4月から社内調査として全機種の総点検を始めました。
特に排出ガスの劣化耐久試験では、中型エンジンで7か月、大型エンジンで9か月かかるため、不正の実態がある程度分かるまで時間を要し、取りまとめは2022年2月末時点となり、今回の発表に至ったということです。
では、なぜこのような不正が見逃されてきたのでしょうか。
会見では「現場における数値目標達成やスケジュール厳守へのプレッシャーなどへの対応が取られてこなかったことが、問題の背景にあると考えている」と説明されています。
つまり、認証に関わる社員が、性能を満たさないことを知りつつ意図的に内容を変えたということです。経営側もそうした理解をしています。
その上で、ひとつの部門が開発と認証の両方を担っていたことも問題だったとして、すでに2021年4月から部署を分けて、品質本部と異なるメンバーが認証試験をおこなっているそうです。
今後の再発防止に向けて、小木曽社長は「会社経営においてコンプライアンス最優先の姿勢を明確にして、すでに着手している組織変更や業務プロセスの改善に加え、従業員一人ひとりの意識改革への取り組みを進めてまいります」と真摯な姿勢を示しました。
こうした自動車メーカーによる認証不正というと、2016年に発覚した三菱やスズキの燃費不正問題を思い出す人も少なくないでしょう。
筆者(桃田健史)も当時、国土交通省で開かれた各社の会見や、国の自動車関連施設などで詳しい取材をしました。
その際、国交省からは、ほかの自動車メーカー各社についても燃費など各種認証試験での不正がないか社内調査を進めて国に報告するよう指示を出しています。
その点について、今回の会見で下会長は、当時は不正がない旨で国に報告しているとした上で、「その点を含めて(2016年度規制以前の状況把握も踏まえた)特別調査委員会で検証する」と回答しました。
特別調査委員会では、今回の不正事案の全容解明と真因分析に加えて、日野の組織のあり方や開発プロセスまで踏み込んだ再発防止策の提言を求めるとしています。
働き方改革、そしてSDGsが企業経営で重視される今、まずは原因の徹底究明が望まれます。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
スズキの場合は数値より実際の燃費のほうが良かったという珍事件ですけどね。三菱程度と一緒にされては可愛そうです。