まさに有終の美を飾る集大成! ホットな絶版コンパクトカー3選

日本の道路事情にマッチして使い勝手も良いコンパクトカーは、古くから人気を集めているクルマです。しかし、近年は経済性を重視してか、高性能なモデルが少なくなってしまいました。そこで、絶版コンパクトカーのなかから集大成ともいえるホットなモデルを、3車種ピックアップして紹介します。

失われたホットなコンパクトカーを振り返る

 近年、SUVが話題となっていますが、日本の自動車市場で常に販売台数の上位に位置しているモデルといえばコンパクトカーです。

惜しまれつつ消えた往年のスポーティなコンパクトカーたち
惜しまれつつ消えた往年のスポーティなコンパクトカーたち

 コンパクトカーは文字どおりコンパクトサイズの2ボックスボディで、現在はほぼすべて5ドアハッチバックのボディですが、かつては3ドアハッチバックも盛んに販売されていました。

 1970年代から普及が始まり、1980年代には各メーカーのエントリーモデルとして主流となり、今に至ります。

 日本の道路事情にもマッチしたサイズと軽自動車よりも広い室内空間による優れたユーティリティ、さらに十分な動力性能と低燃費を両立し、車両価格も比較的安価で、すべてが噛み合って売れるべくして売れているといえるでしょう。

 しかし、直近のモデルは経済性を重視してか、かつてのような高性能モデルは激減してしまいました。

 そこで、絶版コンパクトカーのなかからシリーズの集大成ともいえるホットなモデルを、3車種ピックアップして紹介します。

●ダイハツ「シャレード デ・トマソ」

シリーズの最後で初の自然吸気エンジンを搭載していた「シャレード デ・トマソ」

 ダイハツは1977年に、自社開発した初代「シャレード」を発売。量産車では世界初の1リッター4サイクル直列3気筒SOHCエンジンを搭載し、2代目では世界最小の1リッターディーゼルエンジン、同ターボエンジンを設定するなど先進的なモデルであり、同社の登録車のなかで長く主力車種に君臨していました。

 1984年には2代目シャレードをベースに、イタリアのチューナーであるデ・トマソが監修した高性能モデル「シャレード デ・トマソターボ」が発売され、走り好きの若者からも高い支持を得ました。

 3代目ではデ・トマソがラインナップされませんでしたが、1993年に発売された4代目で再度登場。

 外装には専用のエアロパーツが装着され、4輪ストラットの足まわりは専用セッティングでピレリ製タイヤ、4輪ディスクブレーキが奢られました。

 内装ではナルディ製ステアリング、レカロ製シートなど、デ・トマソモデルに共通する海外の逸品が取り付けられました。

 そして、エンジンはシリーズ初の1.6リッター直列4気筒DOHC自然吸気を搭載。最高出力125馬力と同クラスでは決してパワフルなエンジンではありませんでしたが、車重はわずか900kg(MT車)と軽量なことから、十分な動力性能を発揮しました。

 その後、2000年に実質的な後継車である「ストーリア」が登場したため、シャレードの長い歴史は幕を下ろしました。

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●トヨタ「ヴィッツ GRスポーツ“GR”」

高性能すぎないライトチューンで価格も手頃だった「ヴィッツ GRスポーツ“GR”」

 トヨタは1999年に、新時代のコンパクトカー初代「ヴィッツ」を発売しました。日本では大ヒットを記録して海外でも成功を収め、初代ヴィッツはBセグメントのベンチマークとなり、代を重ねました。

 そして2020年に、ヴィッツは4代目となると同時に「ヤリス」へと車名が変わり、現在も高い人気を誇っています。

 このヤリスには高性能モデルとして「GRヤリス」がラインナップされていますが、手軽に買えるモデルではありません。

 一方、3代目ヴィッツではスポーティグレードの「RS」、さらに2017年に「G’z」シリーズに続く新たなチューニングモデルの「GRスポーツ」と「GRスポーツ“GR”」が登場しました。

 GRスポーツ/GRスポーツ“GR”ともに、最高出力109馬力を発揮する1.5リッター直列4気筒エンジンを搭載し、スペックだけを見ると平凡ですが、足まわりやシャシを中心にチューニングされていました。

 なかでもGRスポーツ“GR”は、ローダウンされた専用強化スプリングに、減衰力を高めたショックアブソーバー、専用のブレーキキャリパーとスポーツブレーキパッドが装着され、さらにシャシの各所に補強パーツを追加することで剛性アップが図られました。

 また、内装もスポーツシートと小径のステアリングホイールを装備し、GRスポーツ“GR”専用メーターパネルを採用。センターにタコメーターを配置するなど、スポーティな演出が施されていました。

 しかし、現行モデルのヤリスではこのようなライトチューンのモデルは無く、ヴィッツの終焉をもって消滅しました。

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●日産「パルサーセリエ GTi/VZ-R」

打倒「シビック」を目的に開発されたレースベース車の「パルサーセリエ VZ-R・N1」

 日産は1978年に「チェリー F-II」の後継モデルとして初代「パルサー」を発売しました。

 当初はチェリー F-IIのメカを受け継いでOHVの「A型」エンジンを搭載するなど、スペック的には平凡なモデルでしたが、その後代を重ねるとスポーツグレードも展開しました。

 そして1990年に登場した4代目では、世界ラリー選手権に参戦するベース車としてターボエンジンを搭載した高性能4WD車の「パルサーGTI-R」がラインナップされ、スペック的にはコンパクトカーの頂点に君臨しました。

 しかし、1997年に発売された5代目では一転して全車自然吸気エンジンとなり、4ドアセダンがパルサー、3ドアハッチバックが「パルサーセリエ」の車名で展開されました。

 当初、パルサーセリエのトップモデルは「GTi」で、最高出力140馬力の1.8リッター直列4気筒DOHCの「S&18DE型」を搭載し、1997年のマイナーチェンジでは、最高出力175馬力を誇る1.6リッター可変バルブタイミング&リフト機構を採用した「SR16VE型」エンジンを搭載した「VZ-R」が加わりました。

 さらに同年には、このVZ-Rをベースにオーテックジャパンによって開発・生産された「パルサーセリエ VZ-R・N1」が誕生。

 VZ-R・N1は車名のとおりN1レース用のベース車で、エンジンは専用のシリンダーヘッドと吸排気システムを搭載し、吸排気ポートや燃焼室の研磨などのメカチューンが施され、1.6リッタークラス最強となる最高出力200馬力を発揮しました。

 1998年には「VZ-R・N1 VersionII」にアップデートし、最高出力は200馬力と変わりませんでしたが、サスペンションの強化と車体の軽量化、フジツボ技研製マフラーが装着されるなど、改造範囲が狭いN1レースでのポテンシャル向上が図られました。

 その後パルサーセリアは2000年に生産を終了し、パルサーシリーズの実質的な後継車は「サニー」系のセダンである「ブルーバードシルフィ」でしたが、高性能モデルは設定されませんでした。

※ ※ ※

 スポーティなコンパクトカーは今や貴重な存在となってしまい、国内メーカーでは絶滅が危惧されている状況です。

 コンパクトカーは前述のとおり経済性に優れていることから、燃費や車両価格はもっとも重要な要素で、もはや高性能モデルのニーズはほとんど無いのかもしれません。

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