誕生した時点で他を圧倒!? 初代の完成度が高かったスポーツカー3選
何代にもわたって長い歴史を刻んでいるクルマは、フルモデルチェンジをおこなうごとに改良されることから「最新が最良」といえます。しかし、初代の時点でかなり作りこまれていたモデルも存在。そこで、初代の完成度が高かったスポーツカーを、3車種ピックアップして紹介します。
初代が誕生した時点で高い完成度を誇っていたスポーツカーを振り返る
何代にもわたってフルモデルチェンジを繰り返しながら長い歴史を刻んでいるクルマがあり、なかには半世紀以上も途切れることなく系譜が続いているモデルもあります。
一般的にフルモデルチェンジの際に各部の改良がおこなわれ、代を重ねるたびに性能の向上が図られます。
とくにスポーツカーの場合はエンジンスペックや、サーキットの走行タイムが性能の指針であり、よりパワーアップしてタイムを短縮することが進化の証といえます。
一方で、性能的には「最新が最良」ながら、誕生した時点でかなり秀逸なモデルも存在しました。
そこで、初代の完成度が高かったスポーツカーを、3車種ピックアップして紹介します。
●日産「フェアレディZ」
日産は2022年1月に、7代目となる新型「フェアレディZ」を発表。初代は1969年に誕生しました。
前身となるダットサン「フェアレディ」は英国調デザインのオープンカーでしたが、初代フェアレディZはクローズドボディのファストバッククーペへと一新されました。
足まわりは4輪ストラットの独立懸架で、優れたロードホールディング性能を発揮。
エンジンは標準モデルが最高出力130馬力(グロス、ハイオク仕様)を発揮する2リッター直列6気筒SOHC「L20型」で、パワフルかつなめらかな吹け上がりを実現しました。
さらに、同年に発売された「スカイラインGT-R」と同型の、2リッター直列6気筒DOHC4バルブエンジンで最高出力160馬力(グロス、ハイオク仕様)を発揮する「S20型」を搭載した「フェアレディZ 432」がラインナップされました。
そして、1971年には輸出用のエンジンを搭載した高性能モデル「240Z」シリーズが登場。搭載されたエンジンは2.4リッター直列6気筒SOHCの「L24型」で、SU型ツインキャブレターを装着して最高出力150馬力(グロス、ハイオク仕様)を発揮。
外観もトップグレードの「240ZG」では通称「Gノーズ」と呼ばれる専用デザインのフロントノーズに、前後フェンダーにリベット留めのオーバーフェンダー、ダックテール状の小型リアスポイラーが装着され、空力性能の向上を強く意識したボディとなっていました。
初代フェアレディZは6気筒エンジンのFR車、4輪独立懸架の足まわり、ロングノーズのファストバックという一連の仕様を確立し、前述の最新モデルである7代目にも継承されています。
●ユーノス「ロードスター」
1960年代には前出のダットサン・フェアレディを始め、国産オープンカーは比較的多く存在していました。
しかし、1970年代にはほとんど姿を消し、1980年代にはスポーティなオープンカーは完全に消滅。
これは海外メーカーでも同じで、英国のMGやロータス、トライアンフなどが販売していたコンパクトなオープンカーは、1980年代初頭には激減しました。
そんな状況のなかマツダは1989年に、ユーノス「ロードスター」を発売しました。
ロードスターはコンパクトボディの2シーターFRオープンカーという、往年のスポーツカー像に回帰し、エンジンは最高出力120馬力を発揮する1.6リッター直列4気筒DOHCを搭載。
決してパワフルなエンジンではありませんが、940kgという軽量な車体には十分なパワーで、さらに既存のモデルから流用されたことから手頃な価格を実現しました。
ロードスターは2シーターという趣味性が強いモデルながら、手軽に乗れるスポーツカーとして異例のヒットを記録し、オープンカー大国であるアメリカでも大ヒットを記録するなど、世界的にロードスターは受け入れられました。
ロードスターの誕生をきっかけにして、世界中のメーカーは同様のコンセプトのオープンカーを開発し、一大ムーブメントに発展したほどです。
初代ロードスターは「人馬一体」の走りという明確なコンセプトを確立し、現行モデルの4代目にも受け継がれています。
●ホンダ「シビック タイプR」
ホンダは1997年8月に6代目シビックのマイナーチェンジと同時に、3ドアハッチバックモデルをベースとした初代「シビック タイプR」を発売。ホンダのタイプRシリーズとしては「NSX」「インテグラ」に続く第3弾でした。
外観では専用のエアロパーツに加え、専用のボディカラー「チャンピオンシップホワイト」をイメージカラーとし(他の色も設定)、タイプRの証である赤地のホンダエンブレムを装着。
搭載されたエンジンは高度にチューニングされた1.6リッター直列4気筒DOHC VTECで、最高出力185馬力を発揮し、自然吸気エンジンとして当時世界最高クラスの高出力である、リッター当たり116馬力を達成しました。
また、車高のダウンによる低重心化、ハードチューニングサスペンション、トルク感応型ヘリカルLSD、専用チューニングのブレーキが採用されました。
さらに、パフォーマンスロッドの追加によるボディ剛性アップや、タイプR専用の「ポテンザRE010」ハイグリップタイヤが装備され、運動性能が飛躍的に向上。
内装ではMOMO製小径ステアリングホイール、レカロ製バケットシートと、シートに合わせてコーディネイトしたインテリア素材、ショートストローク化されたシフトノブはチタン削り出し品を採用するなど、従来のタイプRの作法に則って仕立てられていました。
シビック タイプRはサーキット走行を想定して開発されたため、公道での乗り心地を犠牲にしていましたが、そうしたストイックな面が走り好きには魅力的に映り、ヒット作になりました。
そして、2022年中には6代目シビック タイプRの発売を控えており、初代から続いているハードな走りの性能はそのままに、よりコンフォートな面が強化されると予想されます。
※ ※ ※
スポーツカーに限らず長い歴史を刻むモデルは、初代の時点で明確なコンセプトを確立しているケースが多いです。
たとえばトヨタ「クラウン」は1955年に登場した初代の時点で、すでに高級車として開発されました。
また、日産「スカイライン」は1957年にプリンス自動車の前身である富士精密工業から発売されましたが、初代から先進的な技術と高性能エンジンを採用していました。
こうしたブレないコンセプトこそ、長寿なモデルとして存続できた秘訣ではないでしょうか。
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