「イマ売れてないのに…」 メーカーはなぜEVを続々投入? シェア0.35%も今後は台数増加でEV大国になるのか
欧米から見れば、日本は「特別」な市場?
一方、EVシフトに積極的なメーカーは日本ばかりではなく、むしろ海外のほうだという指摘も少なくありません。
実際にここ数年でメルセデス・ベンツやアウディ、ポルシェ、ジャガー、ボルボ、プジョーといった欧州の自動車メーカーが日本市場にEVを投入しています。
さらに、2022年2月には韓国ヒョンデ(ヒュンダイ)がEVの「アイオニック5」とFCVの「ネッソ」を引っさげ日本市場への復帰を発表するなど、まさに百花繚乱となっています。
もちろん、自動車メーカー各社は、日本市場のためだけにEVを開発・販売しているわけではなく、あくまでEVシフトという世界的なトレンドのなかに、日本も含めているというのが正確なところです。
一方、現場レベルでは、日本市場に対してある種の「特別感」を持っているのも事実のようです。
ある輸入車ブランドの日本法人担当者は次のように話します。
「EVのシェア自体はそれほど多くはない日本市場ですが、新車販売におけるハイブリッド車(HV)のシェアは30%を超えています。
それどころか、2010年頃にはすでにHVが一般化しているなど、世界に先駆けて電動化を進めてきた国でもあります。
そのため、欧米の自動車メーカー幹部のなかには、HVがこれほどまでに普及している日本では同じ『電動車』であるEVもこれからシェアを伸ばしていくという期待感が強い人間が少なくないようです」

日本では、1997年に世界初の量産型HVとしてトヨタ「プリウス」が発売されて以来、世界に先駆けてHVが普及してきたという実績があります。
諸外国から見れば、HVという“未知のもの”を受け入れたという事実は、日本市場の受容性の高さを表すには十分だったのかもしれません。
もちろん、HVとEVでは使い勝手も大きく異なるため、HVと同じようなペースで今後EVが受け入れられていくかは定かではありません。
しかし、日本人が思っている以上に、日本市場はEVを受容する懐の深さがあると、海外の自動車メーカーは考えているようです。
※ ※ ※
現在のEVシフトは、どちらかといえば、各国政府や自動車メーカーの事情によって推進されている側面があり、ユーザーニーズを反映しているとはいい難いのが実情です。
しかし、ユーザーの選択なくしてEVシフト、そして脱炭素社会の実現はありません。
そういった意味で、今後のEVシフトのカギは、われわれユーザー自身が握っているといえます。
Writer: PeacockBlue K.K. 瓜生洋明
自動車系インターネット・メディア、大手IT企業、外資系出版社を経て、2017年にPeacock Blue K.K./株式会社ピーコックブルーを創業。グローバルな視点にもとづくビジネスコラムから人文科学の知識を活かしたオリジナルコラムまで、その守備範囲は多岐にわたる。




































