単なる「マイチェン」とは違う? 大幅進化の「ビッグマイナーチェンジ」が実施される事情とは

ビッグマイナーチェンジで商品力をアップさせたモデルは?

 販売が好調だから大きく変える必要がないケースや、逆に新型の開発が遅れていてひとまず現行モデルを延命措置するためなど、ビッグマイナーチェンジにはさまざまな事情がありますが、最近では熟成以上のアップデートとして採用されることが多いようです。

 大幅なアップデートでさらに商品力を高めたモデルにはどのようなものがあるのでしょうか。

●マツダ「CX-5」
 現在のマツダはSUVを主軸としたラインナップとしていますが、その中心となるのが「CX-5」です。

 2012年に誕生した初代は、「SKYACTIV」技術を採用し、とくにクリーンディーゼルエンジンで環境対策を図った作戦が大当たり。新世代のマツダを象徴する1台としてヒットモデルになりました。

オフロード色を強めたマツダ新型「CX-5 フィールドジャーニー」
オフロード色を強めたマツダ新型「CX-5 フィールドジャーニー」

 2017年には現代風の薄目ヘッドライトが印象的なフロントフェイスなどエクステリアも大幅に進化。使い勝手の良さそうなミドルサイズSUVとして手堅く「キープコンセプト+α」路線で高い商品力と人気を維持しています。

 そんなCX-5が2021年12月に大きく進化。マツダとしては大幅改良という扱いとしていますが、内容的にはかなり深部にまで手をつけたビッグマイナーチェンジがおこなわれ、「マツダ3」から採用された第7世代にあたる「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE」が盛り込まれました。

 そして、これまでのCX-5のデザインを保ちつつ、ヘッドライトをL字型の4連に変更するなど都会的なルックスをブラッシュアップしたこともトピックスですが、さらに大きく変わったのが、これまでの都会派SUVをアピールしていたCX-5に、オフロードを意識した特別仕様車として「フィールドジャーニー」が設定されたことです。

 新型CX-5から、シーンに応じて走行モードが変更できる「Mi-Drive(マツダ・インテリジェント・ドライブ・セレクト)」が採用されましたが、フィールドジャーニーでは「オフロード」を専用設定。

 さらに車体フレームに減衰構造が採用され、シートフレームの取り付け剛性を強化、スプリングやダンパーのセッティングの見直し、ロードノイズの低減なども実現しました。

 オフロード志向のフィールドジャーニーだけでなく、スポーティな装備の「シグネイチャースタイル」や上級仕様の「エクスクルーシブモード」なども設定。これまで以上に幅広いニーズにも対応してくれそうです。

●レクサス「IS」

 高級ブランド「レクサス」の4ドアスポーツセダンとして人気を誇る「IS」。現行モデルは2013年登場し、2016年にマイナーチェンジがおこなわれたとはいえ、すでに8年以上が経過しているロングセラーモデルです。

 高級感は変わらないものの、やはりブラッシュアップは必要とのことで、2020年11月にビッグマイナーチェンジが実施されました。

 ビッグマイナーチェンジとはいえ、フルモデルチェンジに匹敵する内容となっており、ボディサイズを拡大するなどかなり大掛かりな変更がおこなわれています。

 全長4170mm(+30mm)×全幅1840mm(+30mm)×全高1435mm(+5mm)となったボディはよりグラマラスになり、トレッドもフロント1580mm(+45mm)、リア1570mm(+30mm)へと変更。車両安定性も向上させました。

 これに合わせて前後19インチタイヤを装着しながらも、車両重量はわずか+10kgの1690kgに収めています。

 いまや貴重な大排気量の3.5リッターV型6気筒エンジンはスポーツグレード「Fスポーツ」のみ搭載となりましたが、新設した車両開発用のテストコースで徹底的に走り込み、操縦性や乗り心地を鍛え上げました。

 さらに、先進運転支援システム「レクサス・セーフティー・システム+」もアップデートされ、大型のタッチパネル式マルチメディアモニターも装備しています。

 そしてデザインは、レクサスの象徴でもある「スピンドルグリル」がさらに幅広くなり、ヘッドライトはデイタイムランニングライトの位置を上部に移設した小型タイプに変更。ボディのサイズアップと合わせてワイド&ロー感がさらに強調され、スポーツセダンとしての存在感をより一層高めました。

●日産「エルグランド」

 現在のミニバン市場ではトヨタ「アルファード」が圧倒的な人気を誇っていますが、もともとミニバンに豪華さやハイパワーといった付加価値を与えた「高級ミニバン」の先駆けとなったのが、日産「エルグランド」です。

 1997年にデビューした初代エルグランドは、キャブオーバータイプの1BOX「キャラバン」から受け継ぐ部分もあったことで、ボンネットのあるミニバンとしては珍しいFR方式を採用。

 さらに「フェアレディZ」や「ムラーノ」などにも搭載された3.5リッターV型6気筒エンジンを搭載し、パワフルな走りも楽しめるミニバンでした。

 2002年誕生の2代目もFR方式を採用。低床がミニバンのトレンドとなっていたなかでシャフトの関係で低床化も実現できず、また燃費を含む環境性能では逆に大排気量エンジン搭載は足かせとなっていました。

 そこで時代のニーズに応えるべく2010年に誕生した3代目(現行)は、新たに「Dプラットフォーム」を採用。FFと4WD(オールモード4×4)となり低床化を実現したことで、ライバルに負けない室内高を確保することができました。

 搭載されるパワーユニットは3.5リッターV型6気筒エンジンと2.5リッター直列4気筒エンジンが用意されていますが、走りを意識したスポーティさがエルグランドの長所でもあり、3.5リッターモデルは280馬力に到達しています。

 そして2020年10月には、最大のライバルであるアルファードに対抗すべく、フロントグリルをより複雑なデザインに変更し、安全装備も現在の基準に沿うべくビッグマイナーチェンジをおこないました。

 単眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせ前方2台前の車両の挙動を検知する「インテリジェントFCW(前方衝突予測警報)」や、後方からのクルマとの衝突回避をサポートする「インテリジェントBSI(後側方衝突防止支援システム)」の採用など、360度セーフティアシストが採用されています。

 一方で、日産が誇るシリーズ式ハイブリッド「e-POWER」や先進運転支援システム「プロパイロット」の搭載が期待されていましたが、残念ながら実施されず。これらの新技術の搭載は次期型へ持ち越しされました。

※ ※ ※

 ビッグマイナーチェンジは、現行モデルを延命させる措置という側面もありますが、むしろ「0.5世代の進化」と受け取ることができそうです。

 とくにISは、輸入車に負けない色気と高い走行性能を身に付け、ビッグマイナーチェンジの成功例ともいえそうです。

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3件のコメント

  1. 自動車技術の進化も緩やかになり
    プラットフォームも共用モジュール化し改良しつつ使いまわすようになったので
    フルモデルチェンジの定義自体が意味をなさなくなくなってきた。
    北米同様にもうイヤーモデル制で考えれば良いのでは?

  2. 生産終了したオデッセイもだな。
    ヘッドライトやバンパーだけでは無く、ボンネットやフロントフェンダー、テールゲートまで新開発したからな。
    内装も特にナビ周りがガラッと変わったね。

  3. 日本では年次改良はほとんどしてない&公表しないから”マイナーチェンジ”という概念が曖昧。
    今回のフェアレディZなんかは書類上はビッグマイナーチェンジでメーカーも曖昧にしているが、販売上もあるのかフルモデルチェンジのように雑誌類は宣伝しているのはちょっと微妙。
    まさに日本のマイナーチェンジとフルモデルチェンジの曖昧さ出ているモデルと思うがそれが、この記事には記載されていないから、それそのものだろうな。

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