トヨタが「誰でもドリフト回避」を世界初披露! 自動ドリフト「スープラ」で事故減少の研究を米で公開へ
トヨタの研究チームとなる「トヨタ・リサーチ・インスティテュート」は、人工知能を活用した自動運転技術によりドリフト走行する「スープラ」の最新映像を公開しました。
2022年2月2日、米国にある「トヨタ・リサーチ・インスティテュート」(以下、TRI)は、人工知能(以下、AI)を活用した自動運転技術によりドリフト走行する「スープラ」の最新映像を公開しました。
自動でドリフト走行をするスープラとはどのようなものなのでしょうか。
毎年、米国では約4万人、世界では約135万人が自動車事故により死亡しているといいます。
衝突事故の多くは日常的な状況で発生しますが、極端な状況ではドライバーが通常のハンドリングの限界に近づき、ときにはそれを超えるような操作をしなければならない場合も考えられます。
そうした状況を打開するための研究として、前述のスープラを2021年1月14日に世界初公開しました。
この研究は、AIなどの開発をおこなう研究所のTRIとスタンフォード大学の共同研究によって誕生。
その研究は、衝突事故などの場合に衝突を回避し、怪我や死亡を防ぐための新しいレベルのアクティブセーフティを設計することを目指しました。
例えば、路面が濡れて滑りやすい状態になり、クルマが通常のハンドル操作の限界に近づいた際には限界を超えた状況下でリカバリーすることがドライバーに求められます。
この状況の回避に関して、米国のドリフトドライバー・Ken Gushiとカスタマイズメーカー・GReddyの協力により、AIを駆使したスープラが開発されました。
この研究のために、ステアリング、駆動力、ブレーキを使ってドリフト中の後輪駆動を制御できるプログラミングを構築して、スープラに搭載しています。
TRIのヒューマンセントリックドライビング研究部門のシニアマネージャーであるアビナッシュ・バラチャンドラン氏は次のように述べています。
「TRIの目標は、人間の代わりではなく、人間を補強・増幅する先進技術を使うことです。
このプロジェクトを通じて、私たちは車両が制御可能な領域を拡大し、プロのレーシングカードライバーのような本能的な反射神経を一般ドライバーに与え、もっとも困難な緊急事態に対処できるようにし、道路上で人々をより安全に保つことを目標としています」
2021年1月にTRIが公開した動画では、ドライバーの手が膝に置かれたまま、スープラがドリフトし続ける様子が公開されていました。
そして、2022年2月に公開された動画では、自動でのドリフト走行に加えて、障害物を避けながら自律的にドリフトするプログラミングに世界で初めて成功したといいます。
今回発表されたソフトウェアの進歩は、20分の1秒ごとにまったく新しい軌道を計算し、コースを回るときに車両のバランスを保つようです。
新たなプログラミングについて、TRIの研究員であるジョナサン・ゴー氏は次のように説明しています。
「濡れた路面や滑りやすい路面に直面したとき、プロのドライバーは『ドリフト』して曲がることを選択するかもしれませんが、私たちのほとんどはプロのドライバーではありません。
だからこそ、TRIはクローズドコースにて障害物を識別し、自律的にドリフト走行できる車両をプログラミングの研究をおこなっています」
このプログラミングは、車両ダイナミクスと制御設計を組み合わせたTRIの非線形モデル予測制御(NMPC)アプローチによるもので、車両の動作領域を性能の限界まで拡大しました。
この研究の背後にあるアイデアは、突然の障害物やアイスバーン(路面凍結)のような危険な道路状況をナビゲートすることによって、事故を回避するために制御され自律的なドリフトを活用されています。
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この成果により、TRIの研究者は車両の性能の全領域を理解することに近づいたといい、トヨタは今後も安全技術の限界に挑戦し、安全技術が人間の能力を増幅させることをより効果的に研究していくとしています。
相当多くのGセンサーを搭載しているのでしょうか。それとも多数のカメラで自車の挙動と周囲の路肩や障害物を3次元で認識し、車両の挙動を把握し、コンピューターで滑りをコントロールしているのでしょうか。技術的にはすごいと言えますね。こういったハイパワーの車では空転により滑らせて回避ということはドライバーの腕次第でできるものですが、日本では軽自動車がかなり人気なので同様のことをノンターボの軽自動車で行おうとしたら、空転させるよりハンドルを切ってサイドブレーキなどで尻を滑らせる操作が必要でしょう。でも、凍結路面などでは制動距離が伸びるABSよりも前車や対向車に突っ込む事故を路肩に強制的に突っ込ませる自動化が欲しいところ。人身事故より自損事故のほうがマシですからね。