トヨタの「秘策」新ビジネスが始動! 新車工場でリフォームも!? KINTO社長が描く「新しいクルマの売り方」とは
「KINTO ONE」とはまったく別物
さて、KINTOというと、2019年3月に始まった新車のサブスクリプションサービス「KINTO ONE」がありますが、「KINTO FACTORYと、KINTO ONEはまったく別物」(小寺社長)という解釈です。
そもそもKINTOは、トヨタの豊田章男社長が小寺社長にいった「新しいクルマの売り方を考えろ」という命題を解くための、トヨタにとって新たなチャレンジの総称という位置付けなのです。
自動車産業界を見ると、「CASE」(コネクテッド、自動運転、シェアリングなどの新サービス、電動化)と称される要素や技術を原動力として、販売のあり方の変革が世界レベルで起きています。一方で、消費者のニーズとしては、クルマをもっと気軽に楽しみたいという側面があります。
なかでも、トヨタにとって課題の1つは、クルマ所有者の高齢化です。それに対してサブスクとしてKINTOは着実な実績を上げています。
KINTOによると、2019年の3月(サービス開始)から12月末までの契約件数は約1200件とKINTO関係者が想定していた数に大きく及びませんでした。
それが2020年にはプランの追加や対象車種を拡大したことで、契約件数は累計約1万2000件と前年比で10倍近くへと躍進。さらに若者層に向けた宣伝広報活動なども強化し、2021年11月末時点で契約数は累計約2万8000件と大きく伸びています。
背景として、新たに導入した7年プランが好調なことを挙げました。
また、契約者の内訳を見ると、これまで一度もクルマを所有していない人が4割強、またトヨタ以外のメーカー所有者が2割程度と、トヨタ車を乗り継ぐ傾向が強いこれまでのトヨタユーザーの傾向とは明らかに違うユーザー層を獲得できています。
さらに、年齢層についても20代と30代が合わせて4割超となっており、トヨタの思惑と合致します。
その他、2020年4月から、モビリティサービスを「ことウリ」として提供する「モビリティ・マーケット(モビマ)」を開始。契約企業は約50社、プログラムは約110に及び、なかでもキャンピングカーレンタルやオフロードコース体験などが人気アイテムといいます。
また、KINTOの契約者同士でクルマをシェアする「わりかんKINTO」も好評とのこと。
さらに、今後強化する分野としては、ユーザーの運転特性に合わせたソフトウエアのパーソナライズについても、できるだけ早期の実用化を目指すとしています。
KINTO誕生から約3年。KINTO FACTORY登場でKINTOは「多くの人たちがクルマの楽しむことができる新しいプラットフォーム」を目指して、事業としての第二ステージへと進化します。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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