本当にガソリン税は適正なの? 改善の声高まるも「正しい使われ方」が最重要か
「適正な課税」とは「税金の引き下げ」ではない
JAFの要望書を読む限り、自動車ユーザーは非常に重い税金を課せられているような印象を受けます。
一方で、自動車ユーザーへの課税が「重い」かどうかは定量的に判断しにくいものでもあります。
諸外国との比較などが例に挙げられる場合もありますが、自動車関連以外の税制や、社会保障の状況も異なるため、同じ条件で比較することはできません。
もちろん、一般論としては税金は安いほうがありがたいことは間違いありませんが、とにかく安くすることが、税制のあるべき姿とはいえません。
正しい税制とは、納税者が理解しやすく公平で適正な課税がおこなれることです。
ただ、現実的には世論の多くが「適正な課税」と「税金の引き下げ」ことが混同しているように感じます。
重要なのは、納税者が理解しやすいかどうかであるというのが筆者(PeacockBlue K.K. 瓜生洋明)の見解です。

例えば、先に述べた、自動車関連諸税の一般財源化も、ある側面から見れば自動車ユーザーが不利益をこうむっているようにも思われますが、
それによって公共サービスや社会保障が充実するなら、自動車ユーザー以前に日本国民である納税者にもメリットはあるといえます。
ガソリン税のTax on Tax(「二重課税」)も、違法行為であると批判されることがありますが、ガソリン税は販売事業者に対して課せられているものであり、消費者が課せられているわけではありません。
飲食店などが店舗の固定資産税や食材を仕入れる際の消費税や関税などのコストを加味したうえで価格を決定し、消費者が購入する際にその商品価格に消費税が発生するというのと仕組みは変わらず、当然のことながら違法行為ではありません。
ガソリンの場合、販売事業者がガソリン価格の内容を消費者に説明するために、ガソリン税をレシートに記載することが慣例化しているため、このような誤解が生まれたものと考えられます。
もちろん、現状の税制が完成しているとは思いませんし、常に議論をしていくことは重要です。
ただ、その際にはやみくもに税金の引き下げを要求するのではなく、幅広く多角的な視点を持った上で適正な課税を提案してかなければなりません。
JAFはその立場上、自動車ユーザーにメリットのある税制を要望していますが、JAFの要望通り自動車関連税が引き下げられたとして、そのほかの部分でどのような影響が出るのかはまったく触れられていません。
筆者も自動車ユーザーですが、それ以前に日本国民のひとりです。
自動車関連税を引き下げられたとしても、それによってほかの税金が増税されたり、公共サービスが社会保障に影響が出たりするなら、それを手放しで支持することはできません。
※ ※ ※
今回のJAFから発表された要望書は、センセーショナルな部分が強調されたものとなっています。
ただ、われわれユーザーは常に冷静な視点で自動車関連税のあるべき姿を考えていかなければなりません。
Writer: PeacockBlue K.K. 瓜生洋明
自動車系インターネット・メディア、大手IT企業、外資系出版社を経て、2017年にPeacock Blue K.K./株式会社ピーコックブルーを創業。グローバルな視点にもとづくビジネスコラムから人文科学の知識を活かしたオリジナルコラムまで、その守備範囲は多岐にわたる。


























