「2050年交通事故死者ゼロ」は本当に可能? AIを用いたホンダの最新安全機能を体験!
「Honda SENSING 360」や「知能化運転支援技術」を体験
ホンダのさくらテストコースでは模擬の交差点など市街地の状況を設定するなど、予防安全に対するさまざまな実験がおこなわれています。
まずは、「Honda SENSING 360」を体験しました。
従来のHonda SENSINGに加えて、交差車両の検知、カーブ減速支援、交差点での歩行者や二輪車を検知する性能が上がっています。
衝突被害軽減ブレーキでは、従来のHonda SENSINGに比べて初期制動から完全停止までの乗員が受ける力がジェントルになった印象がありました。しっかり止まるのですが、乗員への心理的な負担が少ないように感じます。
また、見通しの悪い交差点で右から時速80kmのクルマが目の前を横切るシーンでは、かなり早い段階でクルマを検知し、警報とブレーキがかかりました。
次に、世界初公開となった「知能化運転支援技術」について説明を受けました。
これは、「ドライバーが不安に感じる運転ミスの根本的な原因」を解明するため、医療で使われているMRI(磁気共鳴機能画像技術)を使って運転中の脳の状態を把握するという画期的なものです。
実験により、運転初心者や高齢者の不安の要因について、脳活動とのつながりが見えてきました。
そうした知見を組み込んだドライビングシミュレーターを体験しましたが、ドライバーの運転でのリスクをリアルタイムで認識し、AI(人工知能)がリスクから遠ざける操作を促しました。具体的にはステアリング操作の補助や、アクセルからの振動などを感じました。
また、実車による走行では、見落としや予知予見をミスしないよう、認知に対するアシストを体験しました。
交差点で右折して横断歩道の手前でいったん停止、歩行者の動きを見ていると、その後ろから来る自転車の動きが分かりにくい場合、ダッシュボード上のリスクインジケーターがリスクの場所や方向を知らせてくれました。またシートベルトを通じた振動で注意喚起します。
次いで、直進路では、斜め後方のバイクの存在について、シートの肩部分に搭載されたスピーカーから注意音(立体音響)が出ましたが、実用化された場合の有効性を強く感じました。
また、眠気を感じた場合、人は心拍数が下がる傾向があるといいますが、シート座面が振動し、心拍数を上げて眠気や疲労を軽減する機能についても、腕に心拍数計測機器を装着した状態で体験しました。
そのほか、自立する電動二輪車のデモンストレーションでは、2017年発表の初期モデルから大きく進化しライダーとバイクとの連携が自然となった印象がありました。
さらには、すでにソフトバンクと連携して実証実験が始まっている、接近するクルマの存在をスマホに音や振動で知らせる協調型リスクHMI(ヒューマンマシンインターフェイス)のデモンストレーションを見ましたが、歩行者事故軽減に極めて有効なシステムであることを実感しました。
こうしてさまざまな体験や説明、そしてホンダの研究者と最新技術を通じて意見交換することができました。
そのうえで、「2050年全世界での新車だけではなく保有を含めた、ホンダの二輪・四輪での交通死亡事故死者ゼロ」実現に向けた可能性を感じると同時に、社会全体が大きく変わることに対する課題も浮き彫りになったと感じました。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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