無くなったのは本当に残念! 消えた高性能コンパクトカー3選
現在、日本の自動車市場では、スポーツカーにとって冬の時代といえます。さらに、かつて隆盛を極めていた高性能なコンパクトカーもかなり減ってしまいました。そこで、惜しまれつつ消えたホットなコンパクトカーを、3車種ピックアップして紹介します。
消えたちょっと前のホットハッチを振り返る
自動車に対するニーズは時代によって変化しています。近年はSUVの人気が高い状況が世界的に続いていますが、その反面、とくに日本の市場では高性能なスポーツカーにとって冬の時代といえるでしょう。
さらに、2000年代になるまで隆盛を極めていていたのが、1.6リッター以下のエンジンを搭載した高性能なコンパクトカーです。
ホットなコンパクトカーは走り好きの若者を中心に高く支持され、各メーカーからラインナップされていましたが、次第に人気は下降して、現在は貴重な存在になってしまいました。
そこで、ちょっと前まで販売されていた高性能コンパクトカーを、3車種ピックアップして紹介します。
●日産「ノート NISMO S」
日産は2020年12月に3代目となる新型「ノート」を発売。パワーユニットが全車「e-POWER」となったことで純粋なエンジン車はラインナップから消滅してしまいました。
一方、2代目では2014年に、ガソリンエンジンのホットモデルの「ノート NISMO S」が追加されました。
外装は専用のエアロパーツを装着してカラーリングも専用とされ、内装もスポーツシートと専用のハンドルを採用し、インパネまわりは赤い差し色でコーディネートされるなど、NISMOシリーズに共通するスポーティな装いです。
エンジンはNISMO Sのためだけにチューニングされた1.6リッター直列4気筒自然吸気を搭載。高圧縮比化してハイリフトカムシャフトが組み込まれるなどのメカチューンによって最高出力140馬力を発揮し、組み合わされるトランスミッションは5速MTのみでした。
また、足まわりでは強化サスペンションと専用のブレーキシステム、補強による車体剛性のアップやハイグリップタイヤを装着するなど、NISMOモデルにふさわしいシャシ性能を実現しました。
ノート NISMO Sは貴重な1.6リッター自然吸気エンジンを搭載したホットハッチでしたが、前述のとおり2020年12月で生産を終えました。
●ダイハツ「ブーン X4」
ダイハツは1990年代から2000年代にかけて、モータースポーツへの参戦とサポートを積極的におこなっていました。
そのためのモータースポーツベース車の「ミラ X4」や「ストーリア X4」を開発し、さらに2006年にはストーリアX4の後継車として「ブーン X4」を発売。
ベースとなったブーンはトヨタと共同開発されたベーシックなコンパクトカーで、トヨタからは「パッソ」の車名で登場しました。
そしてブーン X4には最高出力133馬力を発揮する936cc直列4気筒ターボエンジンが搭載され、駆動方式はフルタイム4WDを採用し、トランスミッションはクロスレシオの5速MTのみを設定するなど、スタンダードなブーンとは完全に別物でした。
また、外観ではボンネット上にインタークーラー冷却用の大型エアダクトを設置しており、ブーンを戦闘マシンへと変貌させています。
戦闘力を高めるためにエンジン以外でも、前後スタビライザーを装着した強化サスペンション、機械式フロントLSDを搭載し、わずか980kgという軽量な車体により高い運動性能を発揮。実際にラリーやダートトライアルで好成績を残しました。
なお、普段使いにも適するように装備が充実した「ハイグレードパック」も設定されました。
その後、2009年をもってブーン X4の生産を終了。ダイハツはモータースポーツ活動を縮小したため、以降は高性能なコンパクトカーは登場していません。
●三菱「コルト ラリーアート バージョンR」
三菱の現行モデルでラインナップされているベーシックカーは、2012年に発売された6代目「ミラージュ」です。
この6代目ミラージュの登場以前は、2002年に誕生した「コルト」がベーシックカーのポジションを担っていました。
そして、2004年のマイナーチェンジで、ショートワゴンの「コルトプラス」の追加と同時に、最高出力147馬力を発揮する1.5リッター直列4気筒DOHC MIVECターボエンジンを搭載した「コルト ラリーアート」と「コルトプラス ラリーアート」が設定されました。
コルト ラリーアートはかなりの意欲作で、エンジンだけでなくシャシまわりも本格的にチューニングされていました。
さらに2008年4月には、最高出力163馬力まで向上した改良型をベースにした「コルト ラリーアート バージョンR スペシャル」を限定300台で発売。トランスミッションは5速MTのみです。
ドア開口部の4か所に、自動化されたスポット溶接に加えて手作業による「連続シーム溶接」を施したことで、ボディの曲げ剛性は約10%向上。
そのためタイヤの接地性が上がり、ステアリングレスポンスとトラクション性能も高められました。
外観ではラリーアート製のスポーツマフラーを採用し、内装ではレカロ製バケットシートを標準装備するなど、よりスポーティなアイテムが奢られました。
このコルト ラリーアート バージョンR スペシャルは好評だったことから、2010年4月にも第2弾として一部改良したモデルが200台限定で販売されました。
しかし、コルト ラリーアート バージョンR自体が2012年に生産を終了し、高性能なコンパクトカーは同社のラインナップから消滅してしまいました。
※ ※ ※
コンパクトカーは現在も好調なセールスを記録していますが、ユーザーのニーズとしては高性能なモデルよりも経済性が最優先されているためか、ハイスペックなモデルはほとんど消えてしまいました。
これは、ある意味自然な流れといえ、ベーシックカーの本来の姿に回帰したといえるでしょう。
今後は電動化の流れもあって、かつてのような高性能コンパクトカーの復活は、難しい状況です。
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