スーパーカーじゃないけどカッコイイ! 往年の小型ミッドシップカー3選

超高性能なクルマといえばスーパーカーですが、多くのモデルはエンジンを車体の中心付近に搭載するミッドシップを採用しています。一方で、スーパーカーではなくてもミッドシップ車は存在し、十分にスポーツカーといえるモデルもありました。そこで、往年の小型ミッドシップカーを、3車種ピックアップして紹介します。

ミッドシップレイアウトを採用した往年の小型スポーツカーを振り返る

 クルマのジャンルはさまざまな要素で分類されますが、そのなかのひとつに駆動方式があり、エンジンをどこに搭載して、どのタイヤを駆動輪にするかで大きく分けられています。

往年のコンパクト・ミッドシップスポーツカーたち
往年のコンパクト・ミッドシップスポーツカーたち

 その例を挙げると、フロントにエンジンを搭載して前輪を駆動する「FF」と後輪を駆動する「FR」。リアの後端にエンジンを搭載して後輪を駆動する「RR」。そして、前輪軸と後輪軸の間にエンジンを搭載して後輪を駆動する「MR」があり、それぞれに4WDも設定されています。

 このなかでMR(ミッドシップ・リアドライブ)はフォーミュラカーやスーパーカーでは広く採用されており、重量物であるエンジンを車体の中心に近い場所に搭載し、4輪に作用する慣性力をなるべく均一にするすることで、高い旋回性能が得られるというメリットがあります。

 一方で市販車の場合、MRはキャビンスペースを広くすることが難しいレイアウトのため、居住性よりも走行性能を優先するスーパーカーやスポーツカーに限られてしまうということです。

 そこで、MRを採用したクルマのなかから比較的身近な存在だった往年の小型スポーツカーを、3車種ピックアップして紹介します。

●トヨタ「MR2」

国産乗用車初のリアミッドシップカーという記念すべきモデルの初代「MR2」

 1984年、トヨタは国産乗用車初のMRを採用した記念すべきモデル、初代「MR2」を発売しました。

 MR2という車名は「ミッドシップ・ランナバウト2シーター」に由来し、ボディはピュアスポーツカーをイメージさせながらも「スポーティコミューター」というコンセプトを採用しています。

 外観はリトラクタブルヘッドライトを採用したシャープな直線基調のウェッジシェイプで、パワートレインや足まわりは既存のFF「カローラ」から流用する手法で開発され、安価な価格を実現しました。

 上位グレードの「G」と「Gリミテッド」には「カローラFX」と同じ最高出力130馬力(グロス)の1.6リッター直列4気筒DOHCエンジン「4A-GELU型」を横置きに搭載し、廉価グレードの「S」は83馬力(グロス)の1.5リッターSOHC「3A-LU型」で、トランスミッションは全車に5速MTと4速ATが設定されました。

 Gリミテッド(MT)で940kgと軽量な車体によって優れた走行性能を発揮しましたが、乗降性も考慮した最適なシートポジションや、2シーターミッドシップながら荷室も十分に確保するなど、コンセプトどおり高い実用性もありました。

 その後、1986年のマイナーチェンジでは最高出力145馬力(ネット)を誇るスーパーチャージャー付き「4A-GZE型」エンジン搭載モデルを追加し、同時にサスペンションセッティングを最適化するなどの改良もおこなわれ、よりスポーツカーとしてのポテンシャルを向上。

 初代MR2は「AW11型」という型式から「エーダブ」の愛称で親しまれ、1989年によりハイパワーな2代目MR2にバトンタッチされましたが、初代の軽量コンパクトボディも魅力的なことから絶版後も人気がありました。

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既存のFF車のコンポーネンツを使って開発されたMRスポーツカー「X1/9」

 前出のMR2の開発手法に大きな影響を与えたといえるモデルが、1972年に発表されたフィアット「X1/9」です。

 X1/9はショーカーをベースに、イタリアのカロッツェリアであるベルトーネがデザインを担当。チーフデザイナーはランボルギーニ「ミウラ」や「カウンタック」、ランチア「ストラトス」など数多くの名車を手掛けたマルチェロ・ガンディーニです。

 設計のベースとなったのは同じくフィアットの小型FF車である「128」で、128のエンジンとトランスミッションをミッドシップに配置。

 外観はリトラクタブルライトを採用したクサビそのものといったシャープなウェッジシェイプで、低いボンネットに2シーターの小ぶりなキャビン後方の太いCピラーがデザイン上のアクセントになっています。

 また、FRP製ルーフが脱着可能なタルガトップで、ルーフはフロントボンネット内に格納でき、リア後端にもトランクが設置されていました。

 リアミッドシップに横置きに搭載されたエンジンは最高出力75馬力の1.3リッター直列4気筒SOHCで、トランスミッションは4速MTのみと、パワートレインのスペックは平凡でしたが、900kgを下まわる軽量な車体と優れた空力性能により、最高速度170km/hを記録。

 足まわりは4輪ストラットの独立懸架で、ブレーキは4輪ディスクが奢られるなど、安価なスポーツカーながら基本的な部分はしっかりと押さえられていました。

 その後、1.5リッターエンジンと5速MTに換装し、外観のモディファイなど改良がおこなわれ、1983年には生産を移管したことからベルトーネ「X1/9」となり、1989年まで生産されました。

 日本にも輸入されましたが当時のフィアット車は防錆に難があり、高温多湿の日本で長く維持することは困難だったようです。

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●ポルシェ「914」

ポルシェとフォルクスワーゲンの共同開発によって誕生したMRスポーツカー「914」

 ポルシェの代表的なモデルといえば誰もが知るRRの「911」ですが、現行ではエントリーモデルとしてMRの「718ボクスター/ケイマン」があり、さらにその前にはFRの「968/944/924」がラインナップされていました。

 そして、もっと遡ると1970年に誕生した2シーターMRの「914」が、911シリーズとは独立した最初のエントリーモデルです。

 914はポルシェと縁があるフォルクスワーゲンと共同開発したスポーツカーで、主要なコンポーネンツはフォルクスワーゲンから供給されて生産されたことから、911よりも価格が抑えられました。

 そのため、「ワーゲン・ポルシェ」という愛称を持ち、エンブレムにも「VW」と「PORSCHE」の両方が使われるダブルネームとなっています。

 外観のデザインは抑揚のある911とは異なり、リトラクタブルライトを採用したことで前端から後端まで比較的フラットなウエストラインで、全長に対して極めて長く設定されたホイールベースと短い前後オーバーハング、独特な形状でセーフティバーの役目も果たすCピラーが特徴的です。

 また、ルーフはX1/9と同じくFRP製で脱着可能なタルガトップとされ、取り外したルーフはリアリッド内に格納できました。

 発売当初、標準仕様である「914/4」のエンジンは、フォルクスワーゲン製となる最高出力80馬力の1.7リッター空冷水平対向4気筒OHVを搭載。もともとRR用に設計されたパワートレインを前後逆向きでリアミッドシップに縦置きに搭載。

 高性能グレードの「914/6」では911用で110馬力の2リッター空冷水平対向6気筒を、同じく911とは前後逆向きに搭載していましたが、911のエントリーグレードとあまり変わらない高額な価格から販売は低迷し、1973年モデルからは1.7リッターエンジンをベースにした100馬力の2リッター4気筒エンジンに換装した「914 2.0」にスイッチ。1974年モデルからは標準仕様も85馬力の1.8リッター4気筒エンジンに換装されました。

 トランスミッションは5速MTがスタンダードで、914/6では911に採用された2ペダルの4速セミAT「スポルトマチック」も選べました。

 914は安価な価格から人気を獲得し、1976年の生産終了までに世界中で11万8000台以上が販売されたヒット作となりました。

※ ※ ※

 コンパクトで比較的安価な国産MRスポーツカーというと、ホンダ「ビート」と「S660」、オートザム「AZ-1」、MR2の後継車である「MR-S」がありましたが、S660も受注を終えてしまったので現行モデルでは小型の国産MRスポーツカーは消えてしまうことになりそうです。

 さらに、2代目「NSX」も2022年で生産終了が決まっていますから、このままでは日本車から完全にMR車が絶滅してしまいます。

 SUV人気が続くなか、今やスポーツカーにとって冬の時代です。今後、国産MRスポーツカーが復活することは、残念ながらかなり難しいといわざるを得ません。

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