3人乗り「F1」で同乗走行!? ひと味違うイタリアのサーキットイベントとは
F1を見るだけでなく、サウンドに酔いしれ同乗もできるイベント
入り口を通り過ぎ、すぐ目の前にあるミュージアム(Maicc Museo Multimediale Autodromo di Imola- Checco Costa)の1階ではエリス・サルネージ作のF1ミニカーと共にフェラーリの歴史を辿る展示、2階では6台のレシングカー、なかにはF1マシンであるティレル「P34」が2台、2号車と5号車が並んだ。1976年仕様と1977年仕様が共に並んでいる光景はなかなか目にすることができない貴重な展示だ。
また昨年亡くなった、F1チーム(フェラーリ、その他)に常に帯同していたセルジョ・マントヴァーニ神父の写真の展示。彼の言葉に助けられたF1ドライバーは数知れない。
ミュージアムを出ると、パドックが待っている。ここには数々のストーリーを生んだマシンが並んでいる。パドックに入ると運が良ければ当時のレジェンド達にも会えるかもしれないし、会話もできるかもしれない。勿論彼らからサイン獲得は絶対だ。
●F1のエキゾーストノートを肌で感じる
先ずはF1マシン。
ミナルディのイベントには欠かせないミナルディ「189」。当時のドライバー、ピエル・ルイジ・マルティーニがステアリングを握った。エンジニアのガブリエレ・トレドッツィも自らが設計したミナルディ「PSO4B」を持ち込みステアリングを握った。ふたりともミナルディにはなくてはならないスターだ。
その他、ミナルディ「M194」、ジャッキー・イクスのフェラーリ「312B2」、プロストのフェラーリ「642」、マンセルのフェラーリ「643」、アルボレートのフェラーリ「126C4」。マシンに貼ってあるドライバーの名前を見るだけでも興奮する。
シャドーDN3、サーティスTS8、ブランビッラのマーチ761、マーチ 732、トヨタ TF 108-07・TF105-06、ヨッへン・マスのアローズA3、オゼッラFA1G、ジャガーR1・R3、ウルフWR7、スクーデリア・イタリアF188・F192などなど、約30台のF1が集まった。
アレックス・カフィのスタンドでは「F1X3 Experience」でジョーダンのF1マシンを改造した3人乗りのF1カーが2台用意され、元F1ドライバー、アレックス・カフィとニコラ・ラリーニがファン2人を同乗させF1マシンの体験という企画を実施。
1万4500rpmまで回るエンジンの最高出力は750ps、最高時速320km/hのマシンに同乗し、元F1ドライバーの運転、しかもイモラサーキットでその走りを味わえるというのだから、ファンにはたまらない。
ちなみに、ジョーダンの「EJ13」はジャンカルロ・フィジケッラが2003年にブラジルGPで優勝したマシン、「EJ14」はニック・ハイドフェルド、ジョルジョ・パンターノ、ティム・グロックがステアリングを握ったマシンだ。
現在メルセデス・ベンツからダラーラに移ったテクニカルディレクターのアルド・コスタはダラーラ・ストラダーレEXPを走行。
スクーデリア・タッツィオ・ヌボラーリからはフォーミュラー・ジュニアが約30台参加。彼らが企画したMemorial Lucchini ではロータス「エリーゼS1」を走らせた。
スクーデリア デル ポルテッロ、AC Storicoではアルファ ロメオの歴史を作り上げてきた数々のマシン、1950年代から1990年代のF1、F2、F3、フォーミュラAlfa Boxer、スポーツ・プロト、GT、Superツーリズモが並んだ。
その他、フェラーリ「250GT Competition Drogo」、フェラーリ「ディノ206SP」、フェラーリ「F40 LM」、アルファ ロメオ「ジュリエッタSZ」「TZ1」,アルファ ロメオ「156スーパーツーリズモ」、アルファ ロメオ「RL タルガフローリオ」、アバルト「 2000 Sport プロトティーポ」、マセラティ「3500GT」、ハイパーカーのPJ-01 Pambuffettiなど、1930年代から続くモータースポーツの歴史がパドックでくり広がれた。
別のブースでは新書籍の出版記念イベント、ラジコン大会、メモラビリア、ミニカーなどのショップが展示。
28日の土曜日には、オークション会社Finarteによるレーシングカーに特化したオークションが開催された。出品されたレーシングカーのリストの一部を以下に紹介しよう。
1990 Lola Alfa Romeo T90/00 (Formula Indy)
1981 Osella PA 9/90
1979 Abarth SE033 (Formula Abarth)
1963 De Santis Formula junior
1951 Volpini (Formula 3)
このほか、実際に1990年代に使用されていたスクデリアフェラーリのモーターホームなど約20台が出品された。
また、今回初めて登用したQRコードによる観客投票(世界20か国から参加)における人気の受賞車は、1位がアルファ ロメオ「GTAm」、2位はハイパーカーPJ-01 Pambuffetti、3位はミナルディ「M194」となった。
コロナ感染対策のためにグリーンパス提示という新しい規制が生まれ、コロナと共存というイベントとなった。しかも土日の雨、夏休み最後の週末(天気がよいと海に出かける人が多い)ということで、イベント主催者には非常に難しい開催だったが、約300台に及ぶマシンの参加、2日間で入場者数約9000人という数字は、モータースポーツの根強い人気を語っているといっていいだろう。
* * *
長い中断期間を経ての今回のヒストリック ミナルディ デイはモータースポーツファンには何にもまして心に残る記念すべきイベントになったのではないだろうか。
主催者のジャン・カルロ・ミナルディはイベントを終え、このようにコメントしている。
「今回の開催は私たちにとってひとつの挑戦でした。コロナ禍のなかで確かなものは何もありません。第5回ヒストリック ミナルディ デイは一般向けに公開されたコロナ後初めてのサーキットイベントのため、観客への安全性を第一に考慮し、グリーンパス、PCR検査提示など数々の規制のもとにおこなわれました。
しかしそうしたなかでも大勢のファンがヒストリック ミナルディ デイに足を運んでくれ、多くの方からたくさんの賛辞をいただきました。不安を抱いての幕開けでしたが、2日間のイベントを終え、開催できたことをとても嬉しく思っています。
これからもまだ調整しなくてはならないことが多々ありますが、重要なことは続けること。モータースポーツは街の活性化にもつながっていきます。イベントに関わった全ての方へ感謝の言葉を伝えたいと思います」
世界的なコロナ禍である現在、この先、モータースポーツはどのような方向性を辿るか予想がつかない。
しかし、モータースポーツがこのように大勢のファンに支えられている現状を見ると、時代の変化とともに進化していくモータースポーツ界は、これからも若いドライバーの出現や根強いファンによって途絶えることはないだろうと、そんな気持ちにさせられたヒストリック ミナルディ デイだった。
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