日本車の将来を左右する?「MBD推進センター」発足で注目されるMBDの「モデル」とは何なのか
「MBD推進センター」発足の狙いは
では、なぜこのタイミングでMBD推進センターが活動を始めたのでしょうか。
大きな理由として、経済産業省が2021年6月にまとめた「グリーン成長戦略」の影響があります。
電動化については、「2035年までに軽自動車を含めた電動化(ハイブリッド車・プラグインハイブリッド車を含む)新車100%」を目指すとしています。
そのなかで、「クルマのデジタル開発基盤の重要性」を指摘しており、いわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)によって自動車産業の競争力強化を図る狙いがあります。
そもそも、日本における業界内でのMBD(モデルベース開発)についての議論は、経済産業省が2015年度から2017年度に起こった「自動車産業におけるモデル利用のあり方に関する研究会」でガイドラインの作成や、燃費に関する議論などを本格化しました。
次いで2018年度から2020年度までは同研究会を継続しつつ、国の予算で3か年の補助事業として、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング等の新サービス、電動化)の普及シナリオ等も考慮した段階となり、それまでの合計6年間の議論の成果として、2021年度から民間主体の形としてMBD推進センター設立に至ったという経緯です。
日本国内では、開発に関する標準化を議論する団体として、エンジンについてはAICE、トランスミッションではTRAMI、そして電子技術やソフトウエア分野ではJasParがありますが、これらとMBD推進センターは連携を深めていきます。
また、海外との連携についてはどういう状況なのでしょうか。
この点については、欧米20か国の自動車メーカーや自動車部品メーカー等190社が参画するデジタル技術に関する国際標準化段階「ProSTEP iViP」や、フランスの研究機関である「SystemX」とすでに有効的な関係であり、国際的な標準化に向けた流れができてきそうです。
自動車産業が自動車からモビリティへ転換すると言われて久しいですが、MBD推進センターが中核となり、これから日本版の自動車産業DXが一気に加速しそうです。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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