日本車の将来を左右する?「MBD推進センター」発足で注目されるMBDの「モデル」とは何なのか
2021年9月24日、トヨタ、日産、ホンダ、スバル、マツダの5社ならびに自動車部品メーカー5社が参画する「MBD推進センター」が発足したと発表されました。MBD(モデルベース開発)を全国の自動車産業に普及させていくための組織となりますが、そもそもMBDの「モデル」とは何を指すのでしょうか。
そもそも「MBD」ってなに?
MBD(モデルベース開発)が日本車の未来に大きな影響を与えそうです。
国内自動車メーカー5社(トヨタ、日産、ホンダ、スバル、マツダ)と、部品メーカー5社(アイシン、デンソー、パナソニック、三菱電機、ジヤトコ)は2021年9月24日、MBD推進センターの参画について、オンラインで共同記者会見をおこないました。
MBD(モデルベース開発)といえば、マツダが2010年代に入ってSKYACTIVを本格的に市場導入し始めた頃から、世間の注目を集めるようになった印象があります。
また、トヨタが2015年にマツダとの業務提携について協議を始めた時も、豊田章男社長はMBD(モデルベース開発)の重要性を指摘しています。
そもそも、MBD(モデルベース開発)はマツダやトヨタなど、個社で立案した考え方ではなく、デジタル化時代に入り、もの造りについての方法のひとつとして世界的に認識されています。
とはいえ、自動車ユーザーの多くがMBD(モデルベース開発)という言葉に馴染みがないと思いますし、また自動車業界のなかでもMBD(モデルベース開発)が具体的にどういうことなのかしっかり理解している人はけっして多くない印象があります。
そんなMBD(モデルベース開発)について、なぜこのタイミングで自動車メーカー各社と部品メーカー各社が歩調を合わせることになったのでしょうか。
記者会見で公表された各種資料と、会見後の記者との質疑応答から、MBD(モデルベース開発)に関する疑問を解き明かしてみたいと思います。
まず、なにを称して「モデル」なのでしょうか。
これについて、MBD推進センター・ステアリングコミッティ委員長で、マツダのシニアイノベーションフェローの人見光夫氏は「(もの造りの)ルール」または「流儀」という表現を使います。
近年の自動車開発は、エンジン、トランスミッション、車体といったハードウエアのみならず、コネクテッドなどデジタル化によるソフトウエアの開発などを複合的かつ同時並行で進める必要があります。
さらに、高度運転支援システム(ADAS)や自動運転では、車載コンピュータが解析するべきデータ量は膨大になるなど、クルマ造りの基本が大きく変わってきました。
これまでは、自動車メーカーや自動車部品メーカーがそれぞれ、開発のルールに違いがあり、新しく開発する都度、人と人が試作品やデータを基にすり合わせ作業をしてきました。例えば、エンジンとトランスミッションとの間での制御信号の方式に違いがありました。
こうした古い方法では作業があまりにも非効率であり、開発部門におけるコストと人材に対する負担が拡大するようになります。
確かに近年、筆者(桃田健史)のもとにも自動車の開発現場から旧態依然なすり合わせ作業は「そろそろ限界」という声も聞こえていました。
MBD(モデルベース開発)では、前述にようにルールを決めることであり、例えば開発のためのソフトウエアプログラムを共通化するといったことではありませんし、開発したデータを業界内で広く共有することを義務付けるものでもありません。
あくまでも、ルールであり、そのなかで個別の案件では自動車メーカーと自動車部品メーカーが同じソフトウエアを使って設計することもあり得るといいます。
繰り返しますが、あくまでもルールであり、ツールの共通化が前提ではありません。
裏を返せば、自動車開発の手法はこれまで、かなり古い体質のままだったいえます。これを一気に変えようというのです。
セキュリティについても、必要に応じてデータをブラックボックス化することで情報の外部流出やハッキングへの対応を進めるといいます。
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