まさにスポーツカーの理想的スタイル! 消えた高性能3ドアハッチバッククーペ3選
スポーツカーと聞いて思い浮かぶのは2ドアクーペ、もしくは3ドアハッチバッククーペが定番でした。なかでも3ドアハッチバッククーペのフォルムは、美しくスピーディなイメージを具現化しており、最新のスポーツカーも採用。そこで、惜しまれつつも消えた3ドアハッチバックの庶民派スポーツカーを、3車種ピックアップして紹介します。
惜しまれつつ消えた3ドアハッチバッククーペを振り返る
7代目となる日産新型「フェアレディZ(米名:Z)」が発表され、トヨタ「GR 86」/スバル「BRZ」も2代目が発表されるなど、国産スポーツカーに注目が集まっています。
しかし、2000年代初頭まではもっと多くの国産スポーツカーがラインナップされていました。
その多くはニーズの変化から販売が低迷したことや、排出ガス規制の強化に対応することを諦め、生産を終えています。
スポーツカーの定義は曖昧ですが、高性能なエンジンの搭載と優れた運動性能を発揮するクルマということ、さらに見るからに速そうなフォルムというイメージが一般的ではないでしょうか。
とくに2ドアクーペ、もしくは3ドアハッチバッククーペがスポーツカーの定番といえ、前述のとおり2000年代初頭までは隆盛を極めていました。
そこで、惜しまれつつも消えた3ドアハッチバックの庶民派スポーツカーを、3車種ピックアップして紹介します。
●日産「180SX」
1988年にデビューした日産5代目「シルビア」(S13型)は、美しいスタイルの2ドアクーペボディに、高性能エンジンを搭載したFRスポーツカーというコンセプトが見事に時代にマッチし、シリーズ屈指のヒット作になりました。
さらに日産はシルビアの姉妹車として、1989年に3ドアハッチバッククーペの姉妹車「180SX」を発売。3代目と4代目シルビアには、販売チャネルが異なる姉妹車として「ガゼール」がラインナップされていましたが、内外装のデザインは両車ともほぼ共通化されていました。
一方、180SXはシルビアと主要なコンポーネンツを共有していましたが、外装はシルビアが固定式の異形ヘッドライトだったのに対し、180SXはリトラクタブルヘッドライトを採用し、ノッチバックとハッチバックという全体のシルエットやリアまわりのデザインも異なる、完全な別車種として展開。
180SXのエンジンは当初最高出力175馬力を発揮する1.8リッター直列4気筒ターボ「CA18DET型」のみでしたが、1991年のマイナーチェンジで205馬力を発揮する2リッターターボ「SR20DET型」と140馬力の2リッター自然吸気「SR20DE型」に換装。
足まわりは共通で、フロントがストラット、リアがマルチリンクです。
180SXの走りの実力はシルビアと対等であり、スタイルはユーザーの好みで分かれましたが、スポーツカーらしいフォルムの180SXも多くの若者から支持されました。
その後、1993年にシルビアは6代目の「S14型」へフルモデルチェンジしましたが、180SXは従来型のまま継続して販売され、改良がおこなわれながらフルモデルチェンジすることなくロングセラーとなり、1999年に生産を終了。
絶版になった後は比較的安価な中古車が多く市場に出回っていたこともあり、チューニングベースとして人気が再燃しました。
それにしても、ボディタイプが異なるFRスポーツカーが同時にラインナップされていたとは、なんとも贅沢な時代だったといえるでしょう。
●トヨタ「セリカ」
トヨタは1970年に、若者でも手が届くスペシャリティカーとして初代「セリカ」を発売。内外装やエンジン、トランスミッション、装備が選べるセミオーダープラン「フルチョイスシステム」を展開するなど、斬新な販売方法が取られていました。
その後も高性能なDOHCエンジンをラインナップするモデルとして代を重ね、1985年に発売された4代目では全車FFが基本となる大きな転換期を迎えます。
さらに1986年には高性能なターボエンジンにフルタイム4WDを組み合わせた「GT-FOUR」が登場してラリーで活躍するなど、セリカはハイパフォーマンスなスポーツカーへとイメージチェンジ。
4代目のコンセプトは6代目まで継承されましたが、1999年にデビューした7代目は再び大きくコンセプトが変わり、全グレードがFFの2WDのみとされエンジンもすべて自然吸気にスイッチされました。
ボディは3ドハッチバッククーペのみで、縦長のヘッドライトと空気を切り裂くようなウエッジシェイプのフロントフェイスによって、スポーツカーらしいシャープなフォルムへと一新。
エンジンは全グレードとも1.8リッター直列4気筒自然吸気で、トップグレードの「SS-II」には最高出力190馬力を発揮する高回転・高出力な「2ZZ-GE型」を搭載。トランスミッションは6速MT(SS-II)、5速MT、4速ATが設定されました。
また、足まわりはフロントにストラット、リアにダブルウイッシュボーンを採用した4輪独立懸架となっており、SS-IIには6代目「カローラレビン/スプリンタートレノ」で新開発された「スーパーストラットサスペンション」搭載車を設定。1トン少々の軽量な車体と相まって、FFスポーツカーとしてハンドリング性能は高く評価されました。
しかし、クーペ人気の低迷からセリカの販売は好調とはいえず、2006年に生産を終了。長い歴史に幕を下ろしました。
●ホンダ「インテグラ」
かつて、ホンダのFFスポーツカーの代表的存在だったのが「インテグラ」です。その歴史は意外と長く、1980年に誕生した5ドアハッチバックの「クイント」が先祖にあたり、「クイントインテグラ」「インテグラ」と車名が変わり、よりスポーツカーのイメージが強くなっていきました。
最終モデルである4代目(クイントからは5代目に相当)インテグラは2001年に登場。
全グレードとも2リッター直列4気筒DOHC VTECエンジンを搭載し、「is」グレードで最高出力160馬力、ハイパフォーマンスグレードの「タイプR」では220馬力を誇り、まさにFF車最速の座に君臨しました。
ボディは3代目では4ドアハードトップがラインナップされていましたが、4代目はシャープなデザインの3ドアハッチバッククーペのみとされ、タイプRでは大型リアスポイラーや各種エアロパーツが装着され、より戦闘的なフォルムを演出。
足まわりはフロントにストラット、リアがダブルウイッシュボーンの4輪独立懸架で、タイプRだけでなくスタンダードなモデルでも優れた旋回性能は高く評価されました。
しかし、4代目が登場した時点で、すでにクーペの需要が下火になっていたことから販売は低迷し、2006年に生産を終了。インテグラの歴史も幕を下ろしました。
※ ※ ※
ホンダのアメリカ法人は、2022年にアキュラブランドからインテグラ復活を宣言しました。スポーツカーファンにとっては朗報といえるでしょう。
詳細はまったく明かされていませんが、かつてのインテグラのような庶民派のFFスポーツカーとなるかというと、難しいのではという意見も多く見られます。
仮に、同じく発売が宣言されている新型「シビックタイプR」と主要なコンポーネンツを共有した場合、アキュラというプレミアムブランドの価値も考えると、かなりの高額にならざるを得ないからです。
とはいうものの、このご時世で新たなスポーツカー誕生は歓迎すべきことではないでしょうか。
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