豊田会長「五輪で許されても四輪二輪は許されない…」 同じスポーツでなぜ開催基準が異なるのか
2021年は新型コロナ禍ながら東京2020オリンピック・パラリンピックを開催しました。一方でモータースポーツのF1・WRC・MotoGP・鈴鹿8耐は軒並み中止となっています。そうしたなかで、自工会会長の豊田氏はその不公平感を語りました。
自工会会長、豊田氏自ら疑問呈す!
2021年は、2020年から続く新型コロナウイルス感染症の終息が未だに見えていません。
そうしたなかで、2021年は東京2020オリンピック・パラリンピックが日本で1年越しに開催されたほか、同じスポーツのモータースポーツのなかで“ニッポン”が光った年です。
しかし、日本で開催されるF1・WRC・MotoGP・鈴鹿8耐が軒並み中止となりました。
鈴鹿サーキットでおこなわれた記者会見では、トヨタの豊田章男社長(兼 日本自動車工業会 会長)がその想いを答えました。
世界最高峰のレースといわれるF1(フォーミュラ1世界選手権)には角田裕毅選手が日本人ドライバーとして7年ぶりに参戦。
さらに世界最高陣のラリーといわれるWRC(世界ラリー選手権)には勝田貴元選手が日本人初のフル参戦となっています。
また、モナコグランプリ(F1)とインディ500はホンダエンジン、ル・マン24時間耐久レースはトヨタと、世界三大レースを日本のメーカーが制覇しています。
しかし、その雄姿は日本で見ることができません。
2021年10月に鈴鹿サーキット(三重)で開催予定だったF1世界選手権シリーズ「Honda 日本グランプリレース」、11月に愛知・岐阜で開催予定だった世界ラリー選手権「フォーラムエイト・ラリージャパンは、中止となっています。
とくにF1日本グランプリは完全撤退を決めているホンダにとっては最後の母国レースになるはずでした。
どちらも新型コロナウイルス感染症による各方面の影響による判断で、今の日本の状況を考えると理解はできるのですが、多くの人が疑問に感じるのは、「なぜオリンピックは良くて、モータースポーツはダメなのか?」という不公平な所でしょう。
F1もWRCも多くの人と物が動く事は間違いありませんが、それはオリンピックも同じ……いやむしろ、規模や人の流れという意味ではオリンピックのほうが上にも関わらず。
そうしたなかで、2021年9月18日にスーパー耐久シリーズシリーズ2021 第5戦 鈴鹿大会に水素エンジン搭載のトヨタ「カローラ」で3戦目の挑戦となる「ルーキーレーシング」の記者会見がおこなわれました。
そのなかでメディアからチームオーナー兼ドライバーの豊田章男氏に次のような質問がありました。
「日本で開催される世界選手権が軒並み中止になってしまった事について、“自動車工業会会長”としてこの現状をどう思っているか?」
豊田氏は下記のように語りました。世の中には自分たちの都合で一部だけを切り取って報道するメディアもありますが、くるまのニュースでは完全ノーカットでお届けしたいと思います。
「自工会会長としてお応えします。
『五輪輪が許されても、四輪二輪は許されない』(会場から大きな拍手)
我々四輪/二輪系からすると不公平感を感じます。
五輪も支援させていただきましたし、アスリート支援をしております。
ただ、モータースポーツもアスリートだと思います。
そして、オリンピック/パラリンピックに関わる彼ら/彼女らもアスリートだと思います。
同じ“アスリート”に対してどうして入国に対しての許可が違うのか? どうして開催の判断が違うのか?
モータースポーツに関しては外国人選手がなかなか入国できない……などもありましたので、ひと言でいうと。
『五輪で許されても、四輪二輪は許されないのはなぜですか?』を見出しにしてください」
レーシングドライバーはアスリート……筆者(山本シンヤ)は当たり前の事だと思っていましたが、一般のなかにはそう思っていない人も多いと聞きます。
なかには「ドライバーが凄いのではなく、クルマが凄いんでしょ?」という人もいますが、それは誤解です。
もちろん、マシンの性能は年々アップしていますが、それをコントロールするのはドライバーです。
レース中は300km/hに迫るハイスピード、強烈な前後左右Gのなかで、mm単位で正確・冷静にクルマをコントロールしながら、時々刻々と変わる路面のコンディションとクルマの状況をリアルタイムでチェックしながら調整しながらライバルと競い合っています。
例えるなら、全力疾走中に計算式を解きながら針の穴に糸を通す……といったような事を長時間おこなっているのです。
つまり、レーシングドライバーはマルチパフォーマンスが求められるアスリートといえるでしょう。
モータースポーツはどうしてもマシンが注目されてしまいますが、豊田氏の発言は「人間」であるレーシングドライバーにもっとフォーカスすべき……という事も伝えたかったんだと筆者は考えます。
それは「道が人を鍛える、人がクルマが作る」というトヨタのクルマづくりの考え方とまったく同じ。ブレない軸に感服します。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
人重視とか言うならプリウスのセレクターはよ何とかしろや