どうしてポルシェ「911」にリトラクタブルライトを採用したフラットノーズが存在するのか?

ポルシェ「911」といえば、愛嬌ある丸目2灯が特徴でしたが、かつてスーパーカーの象徴であったリトラクタブルライトを採用したモデルがありました。フラットノーズと呼ばれるこうした911を紹介します。

ポルシェ「935」を彷彿とさせるフラットノーズとは

 アメリカにおける930型ポルシェ「911」の歴史は複雑だ。もともと930型はターボエンジンを搭載したモデルで、デビューした1974年当時、NAエンジンを搭載したモデルは外観が「ビッグバンパー」に改められるも、型式は先代の901型のままだった。その後、1978年になって、NAも930型へと移行する。

 デビュー当時の930型は、もちろん主要マーケットであるアメリカでも販売されていたが、1979年にアメリカでの排気ガス規制が厳しくなり、ポルシェはアメリカでの販売を断念する。販売が再開されたのは、なんと1986年。長期間にわたって、930型ポルシェ911は、アメリカで正規販売されていなかったのだ。

1987年にポルシェは、北米向けのオプションとしてフラットノーズへのカスタマイズパッケージを採用している(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's
1987年にポルシェは、北米向けのオプションとしてフラットノーズへのカスタマイズパッケージを採用している(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

●フラットノーズという選択

 エンジンマネージメントの進化によって排気ガス規制をクリアできるようになり、改めて930がアメリカで販売再開されると、アメリカの顧客はさまざまなリクエストをポルシェにオーダーするようになった。

 そのなかには、リトラクタブルライトを採用し、ノーズをフラットにして欲しいというものも含まれていた。この背景には、当時北米で人気を博していたCam-Am(カナディアン・アメリカン・チャレンジカップ)レースにおけるレーシングカー、ポルシェ「935」の活躍がある。

 当初は個人オーナーが、あくまでもプライベートにポルシェにオーダーしたそうだが、同様のカスタマイズを希望するオーナーの多さから、1987年にポルシェは、北米向けのオプションとしてフラットノーズへのカスタマイズパッケージを採用している。

 そんな930型ポルシェ911のフラットノーズが、アメリカ・モントレーで開催されたRMサザビース・オークションに登場した。それも、クーペボディとカブリオレという2台である。まずはそれぞれの個体を確認していこう。

 クーペボディの方は、1988年式で走行距離が7519マイル(約1万2000km)という低走行車だ。ガーズレッドのボディは美しく、レザーのインテリアにもへたりはない。新車当時のオプションとして、LSDやサンルーフ、セキュリティシステム、ラゲッジルームのベロアマットなどが装備され、Blaupunkt社製のラジオ・カセットプレーヤーも装備されている。

 カブリオレの方も同じく1988年式。走行距離は3501マイル(約5600km)と非常に少ない。ボディカラーはクーペボディと同じくガーズレッドで、インテリアも同じくレザー。ホイールがボディカラーと同色となっているため、オープンにしたときのイメージは、まさしくアメリカ西海岸を感じさせる仕様だ。工場オプションであるLSDやセキュリティシステム、Blaupunkt社製ラジオ・カセットプレーヤーの装備はクーペボディと同じ。ソフトトップは電動格納式だ。

 いずれのクルマも、装備に大きな違いはなく、コンディションも極上。走行距離も少なく、違いはボディタイプのみといっていいだろう。

 ところが、落札予想価格はクーペボディのほうが20万−24万ドル(邦貨換算約2200万−約2630万円)、カブリオレは30万−40万ドル(邦貨換算約3280万円−4580万円)と、カブリオレのほうがかなり高くなっている。そこにはカブリオレのほうがクーペボディと比べて販売台数が少ないという理由もあるだろう。

 ところが、2021年8月13日に開催されたオークションでの実際のハンマープライスは、クーペボディが25万4800ドル(邦貨換算約2780万円)、カブリオレが28万5500ドル(邦貨換算約3120万円)と、それほど大きな差はつかなかった。

 近年、空冷エンジン搭載のポルシェ、とくに930型や964型の値上がりは激しく、車両の状態を考えれば今回の落札価格は妥当なものといっていいだろう。

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