日産とドコモがAI運行バスでタッグを組む! 自動運転は日本が抱える問題を解決するのか?
これからの日本はみんなにやさしい移動手段が必要
直近で自動運転バスや自動運転タクシーの話題といえば、東京2020パラリンピック大会の選手村で起こった接触事故が頭に浮かぶ人も少なくないでしょう。
本事象の当該車両「e-Palette」の製造者であるトヨタの豊田章男社長は、2021年9月9日に実施された日本自動車工業会の会長定例会見でこの点にも触れています。
現場検証は、これからおこなわれると承知しているとしたうえで、自動運転の実用化に向けては、クルマ、インフラ、歩行者が三位一体となった安全技術の確立が不可欠であるとの認識を示しました。
自工会としては今後、自動運転の安全性の基準化に対する提言をおこなっていきたいといいます。
今回の日産のオンライン説明会で、筆者(桃田健史)は自動運転サービスカーの安全性について聞きました。
これに対して日産は、安心安全な自動運転の実現に向けて「一足飛びではなく、一歩一歩、できるとこからおこなうことに尽きる」として「さまざまな場面を想定して、設計できないようなシステム設計はしない」という回答でした。
これまで量産車向けプロパイロットやEasy Rideを含めた自動運転技術の開発を地道におこなってきたメーカーとして、素直な思いを語ってくれたと思います。
このほか、今回の日産のプレゼンテーションでは、EVやe-POWER搭載車を気軽に使えるシェアリングサービス「e-シェアモビ」の使用実績も紹介しています。
会員数は2万人を突破。30代以下が全体の50%、また全体の62%が自家用車を保有していない人だといいます。
また、e-シェアモビの活用例として、地方自治体や企業が平日の日中は業務で使用し、夜間や週末などは一般向けに対応するなど、クルマの稼働率を上げることに成功している事例もあります。
こうしたサービス事業の責任者は「所有とシェアリングの比率が今度どのように変化するのか(正確な)予測に至る段階でない。さまざまなソリューションでの実証をしながらこれからも考えていく」と現状と今後について示唆しました。
今回の横浜でおこなわれる第3期Easy Ride実証試験は、場所としては観光目的が多い都市部ですが、地方部での公共交通の減少や物流事業でのドライバー不足など、日本が抱えるさまざまな社会課題を解決するためのひとつの方策という位置付けです。
今回のプレゼンテーションの冒頭、次のような言葉を日産は社会に対して投げかけました。
「これから先の日常を考えたとき、環境にやさしく、維持していくこともやさしい、みんなの移動手段が必要だと思う」
自動運転はけっして、打ち出の小槌ではなく、社会変化に対応するための手助けのひとつなのだと思います。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
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