ハンドルもペダルもない未来のクルマ メルセデスが提案する生体認証接続による運転とは
SF映画やアニメで描かれていた未来のガジェットが、日常の道具になっているいま、メルセデス・ベンツが描く未来のクルマは、荒唐無稽なものでもないのかもしれません。2021年のIAAで、欧州プレミアした「ヴィジョンAVTR」を紹介します。
映画の世界を具現化したような未来のクルマ
2021年からこれまでのフランクフルトに代わり、ミュンヘンに開催地を変えておこなわれることになったIAA(Internationale Automobil-Ausstellung )。そこでメルセデス・ベンツは、2020年1月のCESでワールドプレミアした「ヴィジョンAVTR」をヨーロッパで初公開し、さらに専用のホールでその機能を体験させるという、非常に興味深い展示をおこなった。
ヴィジョンAVTRは、エンターテインメント業界でもっとも革新的なブランドのひとつであるディズニーと、世界で8番目に価値のあるメルセデス・ベンツ(インターブランドランキング2020による)の両社による、グローバルコラボレーションによるもの。
AVTRとは「ADVANCED VEHICLE TRANSFORMATION」の略であり、メルセデス・ベンツのデザイナーやエンジニア、あるいはトレンド研究者にとっての遠い将来のモビリティに対するヴィジョンを具現化することがその開発コンセプトの中核。生体認証接続によりまったく新しい相互作用が可能になるという。
そんなヴィジョンAVTRのボディスタイルは、とても特徴的だ。メルセデス・ベンツは2005年に、低燃費&低エミッションを実現したバイオニックカー・コンセプトカーを、魚のハコフグからイメージを得てデザイン、発表したことがあるが、今回のAVTRはより強度と軽量性で大きな特徴を持つ魚の骨格を感じさせるもののようにも思える。
一連のBEV、EQシリーズのさらに進化型という印象も強いのだが、メルセデス・ベンツはそれを、「未来のクルマがどのようになるのかというイマジネーションをかきたてるものだ」とコメントしている。
●まさしく「意のままに」操る
ヴィジョンAVTRに搭載される技術で最大のトピックとなるのは、ブレインコンピューターインターフェイス(BCI)だ。これは短いキャリブレーションプロセスの後、ドライバーの頭に取り付けられたBCIデバイスが測定された脳波を分析し、あらかじめ定義された機能をトリガーするという。
センターコンソールにある丸いディスクの上に手を乗せ、「思考」によってクルマをコントロールするというのがこのBCIの仕組みだ。結果キャビンには、ステアリングやペダルといったデバイスは皆無だ。
全面ガラス張りのシザース式の4枚ドア、33枚の条件によって開閉可能なエラ、あるいはバルーン式のタイヤ等々、いかにも未来のメルセデス・ベンツを予感させるヴィジョンAVTRだが、そのメカニズムもまた現代の最先端にあるものだ。
搭載されるエレクトリックモーターは合計4個で、それらは各輪に組み合わされる。最高出力は470psで、バッテリーはオーガニックセル。100%のリサイクルが可能であることが特長だ。満充電にかかる時間は約15分で、そこからの走行可能距離は700km。実用性は十分に高いといってよいだろう。
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ダイムラーAGとメルセデス・ベンツの取締役会メンバーであるマーカス・シェーファーは、次のようにコメントしている。
「BCIテクノロジーは、運転体験に集中できるようにするために、ユーザーをさらに安心させることができます。VISION AVTRは、私たちのブランドの勇気と開拓者精神を強調しており、BCIアプリケーションをテストしてさらに開発するためのまさに正しいコンセプトです。このコンセプトカーは、人間、自然、テクノロジーが調和するモビリティの未来を印象的に描いています」
果たして自分がクルマを運転できる間に、ヴィジョンAVTRの車名がリアリティになる日が来るだろうか。現代の技術革新の速さを考えれば、それも不可能ではないと期待したいところである。
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