ローパワーでも優れた走り! 昭和・平成・令和に誕生したFFスポーツカー3選

一般的にスポーツカーというと、高性能なエンジンを搭載しているイメージがあります。しかし、ローパワーなエンジンでも、軽量化や優れた足まわり、高いシャシ性能によって、十分にスポーティなクルマも存在。そこで、昭和・平成・令和に誕生したローパワーなFFスポーツカーを、3車種ピックアップして紹介します。

ローパワーながら優れたFFスポーツカーを、時代別に振り返る

 高い動力性能と優れた運動性能を誇るスポーツカーというと、やはりパワーユニットも高出力というのが一般的なイメージではないでしょうか。

 実際、世界的に低炭素化が叫ばれているなかでも、スポーツカーのパワーユニットは高性能化を続けています。

スポーツカーとはパワーだけじゃないことを証明したクルマたち
スポーツカーとはパワーだけじゃないことを証明したクルマたち

 しかし、エンジンの出力とスポーティな走りは、必ずしも一致しないケースもあります。

 ローパワーなエンジンでも、車体の軽量化や優れた足まわり、高剛性のシャシを採用することで、十分にスポーツカーといえるモデルも存在。

 そこで、昭和・平成・令和に誕生したローパワーなFFスポーツカーを、3車種ピックアップして紹介します。

●ホンダ「バラードスポーツCR-X 1.5i」

日本を代表するライトウェイトFFスポーツカーに君臨する「バラードスポーツCR-X 1.5i」

 かつて、ホンダのライトウェイトスポーツカーとして高い人気を誇っていたのが、「バラードスポーツCR-X」です。

 バラードスポーツCR-Xは3代目シビックと共通のコンポーネンツを使って開発された3ドアハッチバッククーペで、デビューは3代目シビックより少し早い1983年6月でした。

 外観で特徴的なのがセミリトラクタブルライトのフロントフェイスで、洗練されたファストバックスタイルのフォルムは生粋のスポーツカーといえます。

 トップグレードの「1.5i」に搭載されたエンジンは最高出力110馬力(グロス)の1.5リッター直列4気筒SOHCで、電子制御燃料噴射装置を搭載。ちなみ、3代目シビックにも同型のエンジンが搭載されましたが、100馬力にデチューンされていました。

 今の水準からするとパワフルではありませんが、わずか800kg(MT)と軽量な車体で、さらにシビックよりも180mm短いホイールベースが相まって、優れた加速性能とコーナリング性能を発揮。

 この軽量なボディを実現するために、フロントマスクをはじめ、ヘッドライトフラップ、フロントフェンダー、ドアガーニッシュ、サイドシルガーニッシュなどに軽量で耐久性の高いプラスチックを採用するなど、技術的にも意欲作です。

 その後、同クラスのパワー競争から、1984年10月には最高出力135馬力(グロス)を発揮する1.6リッターDOHCエンジンを搭載した「Si」グレードが追加されますが、とにかく軽量化にこだわった1.5iこそ、CR-Xのコンセプトを体現していたのではないでしょうか。

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●ダイハツ初代「コペン」

優れた走りだけなく所有する満足度も高めた初代「コペン」

 ホンダ「S660」の生産終了が発表され、唯一の軽オープンカーとなってしまうのがダイハツ「コペン」です。現行モデルは2014年に登場した2代目で、初代は2002年に誕生しました。

 FF2ドアオープンクーペとして登場した初代コペンは、軽自動車では初の、約20秒でメタルトップルーフが後部のトランク部分に収納される「アクティブトップ」を採用。手動で着脱できる軽量な樹脂ルーフの「ディタッチャブルトップ」も設定されました。

 エンジンは全グレードに64馬力を発揮する660cc直列4気筒ターボエンジンを搭載し、組み合わされるトランスミッションは5速MTと4速ATです。なお、このエンジンはダイハツの軽自動車で最後の4気筒となりました。

 足まわりはフロントにストラット、リアにトーションビームを採用する軽自動車ではオーソドックスな形式ですが、ビルシュタイン製ショックアブソーバーやLSDが装着されたモデルを設定するなど、本格的なスポーツカーの走りを実現。

 また、内装もかなりこだわっており、発売当初からシートヒーター付きの本革シートやMOMO製ステアリングホイールが選べ、さらに特別仕様用ではレカロ製シートが奢られました。

 初代コペンは数々のスポーティなアイテムを搭載しただけでなく、軽量高剛性ボディによる基本性能の高さから優れた走りを実現するとともに、「持つ悦び」を体現した稀有な軽自動車です。

 実際に2代目が登場しました今も初代の4気筒エンジンにこだわるユーザーは多く、中古車市場で高い人気を誇っています。

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●トヨタ「GRヤリス RS」

シャシ性能が優れ、手軽に乗れるスポーツカーというコンセプトの「GRヤリス RS」

 トヨタは2020年9月に、ベーシックカー「ヤリス」の高性能な派生車として「GRヤリス」を発売しました。

 ただし、派生車といっても中身はヤリスとは別モノで、ボディから中身のほぼすべてが専用に設計されています。

 トップグレードの「RZ」は、トヨタが世界ラリー選手権で培った技術をフィードバックした生粋のスポーツカーで、新開発の1.6リッター直列3気筒ターボエンジンを搭載し、最高出力272馬を発揮。トランスミッションは6速MTのみで、駆動方式はトルク可変型4WDシステム採用し、運動性能と加速性能はまさにラリーマシンを彷彿とさせます。

 外観はヤリスのシルエットを残しながらも専用の3ドアハッチバックのみで、前後をワイドフェンダー化した迫力あるフォルムです。

 一方で、RZと同じボディにヤリスに搭載される1.5リッター直列3気筒自然吸気エンジンを組み合わせた、FF2WD車の「RS」グレードも設定されています。

 エンジンは最高出力120馬力を発揮し、トランスミッションはパドルシフト付きのCVTのみと、スポーツカーの雰囲気を味わえるイージードライブが可能なコンパクトカーといった印象です。

 しかし、シャシはRZと同じく高剛性で、フロントがストラット、リアがダブルウイッシュボーンの足まわりもRS専用にチューニングされ、ブレーキも4輪ディスクが奢られるなど、内容的には十分にスポーティです。

 実際の走りも秀逸で「速いシャシ」にローパワーなエンジンは、ドライビングプレジャーあふれる組み合わせといえるでしょう。

 価格も265万円(消費税込)とRZの396万円よりも大幅に安価で、ハード過ぎないスポーツカーで日常の使い勝手も良い、ベストなチョイスではないでしょうか。もっとも、MTが設定されればさらにいうことはありませんが。

※ ※ ※

 今回はFF車に限定しているため選に漏れていますが、同様なモデルでマツダ「ロードスター」があります。

 初代は1989年にユーノスブランドから発売されましたが、まさにローパワーでも乗って楽しいクルマを具現化したといえるでしょう。

 ロードスターの存在は国内外のメーカーに大きな影響を与え、同様なコンセプトのモデルが次々と誕生したほどで、まさに日本の自動車史に残る名車です。

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