不人気フェラーリでもMTだと値段は高いのか? 相場より3倍5倍になるMT仕様跳ね馬とは

限定モデルでなくともMTで5倍近い価格になるフェラーリとは

 2005年の夏、「575Mマラネッロ」に代わるフェラーリV12ベルリネッタとして発表された「599(日本以外では599GTBフィオラーノ)」は、コレクターズカーとしての需要を得るのは、まだまだ先のことと思われる。

 しかし599といえば、ごく少数ながら6速MT仕様車が存在することも有名なエピソードであり、もしもその希少なマニュアル車が市場に出てくれば「話は別」のようだ。

日本における「599」のユーズド価格がおおむね1500万円前後であることを考えると、驚異的な落札価格だったMT仕様の「599」(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's
日本における「599」のユーズド価格がおおむね1500万円前後であることを考えると、驚異的な落札価格だったMT仕様の「599」(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

●2009 フェラーリ「599 GTBフィオラーノ」

 599のフロントに搭載されるエンジンは、かの「エンツォ・フェラーリ」用を起源とする「F140C」型6リッターV12で、最高出力620psを発生。0-100km/h加速3.7秒、最高速は330km/hを超える素晴らしいパフォーマンスを発揮した。

 また、トラクションコントロールを組み入れた「F1-TRAC」に「SCM」サスペンションなど、フェラーリのレゾンデートルたるF1GP参戦で培われた当時の最新電制技術もふんだんに盛り込まれ、サイズを感じさせないハンドリングを身上としていた。

 しかしこの高性能は、575Mマラネッロ時代の「F1マティック」に比べて、変速スピード・マナーともに洗練された「F1スーパーファスト」ギアボックスを前提としたもの。したがって6速MT仕様車は、フェラーリにとって重要な得意客の求めに応じて、ごく少数が製作されたに過ぎない。

 RMサザビーズ北米本社のWEBカタログによると、マニュアル仕様の599は総計30台、そのうち20台が北米に向けて作られたという。

 このほどRMサザビーズ「Montley」オークションに出品された599は、2009年モデル。フェラーリの正規ディーラーを介して、新車時にハワイ州に納車されたとのことである。そののち12年の時を経てきたものの、現状での走行距離はわずか4730マイル(約7570km)。しかも2019年には大規模なメンテナンスや若干のお色直しも施されるなど、大切に保有されてきた個体とのことであった。

 今年2月、同じくRMサザビーズ社が開催した「OPENROAD」オークションでは、今回の出品車と同様2011年モデルとなる599GTBフィオラーノ「F1スーパーファスト」仕様に15万-17万5000ドルのエスティメートが設定されていたが、流札に終わっている。また、日本国内における599のFor Sale情報を見ても、おおむね1500万円前後に収まっている事例が多いようだ。

 そのかたわら、今回の「Montley」オークション出品に際して、RMサザビーズと現オーナーは55万-60万ドルという、少々強気にも感じられるエスティメートを設定していたのだが、「強気」と思っていたのは筆者だけだったようだ。

 実際の競売では、エスティメート上限をはるかに上回る70万9000ドル、邦貨換算約7750万円という、驚異的な落札価格を計上することになったのだ。

 かつての「355F1」や「360モデナF1」など、F1マティック創成期に併売されたマニュアル仕様のフェラーリがユーズドカー市場で高価なのは、マニュアルならではの本質的なドライビングプレジャーに加えて、信頼性でもマニュアルに軍配が上がることも理由のひとつであったようだ。

 翻って、以前、筆者がインタビューした東京都内のフェラーリ専門ユーズドカーショップによると、599以降の6速F1スーパーファストは心配されがちなクラッチのトラブルや摩耗も少なく、非常に信頼性が高くなったとのこと。

 つまり、599の6速MT仕様車が現在のマーケットでこれだけの高評価を受けるのは、信頼性についてのアドバンテージやストイックな魅力もさることながら、やはり圧倒的な希少価値が反映したものと思われる。

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