運転に利き腕は関係ある? 右利きと左利きでクルマの運転に差は生じるのか
利き手よりも、運転技能を磨くことが重要
ここまで見てきたように、基本的に利き手による運転のしやすさに、有意な影響はないといえます。
ただ、運転に直接関わらない部分では、左利きの人にちょっとした不便があるのもまた事実です。
例えば、右ハンドル車の場合、運転席のドアを開けるのは左手より右手のほうが簡単かもしれません。
また、最近ではハンドル左側にエンジンスタートボタンがあるモデルも増えてきましたが、やはりハンドル右側にあるものが主流です。
シートを前後させるレバーやボタンも、右手の方が操作しやすく作られているものがほとんどです。
つまり、運転そのものよりも、運転に関わる細かな部分で、左利きの方がちょっとしたストレスを感じやすいのかもしれません。

冒頭で紹介したコレン博士の研究も、左利きのこうしたちょっとしたストレスが積もり積もってさまざまなリスクにつながるということが主張の根幹です(ただ、明確な因果関係があるかどうか議論されています)。
とはいえ、原則的にクルマは利き手にかかわらず安全に運転できることを前提に設計されており、個々人の運転技能の方が重要であることは間違いありません。
そもそも、左利きを右利きに矯正する例が少なくないように、利き手による差の多くは日々の訓練である程度解消することができます(利き手の矯正の是非は別として)。
したがって、利き手にかかわらず、十分な運転技能を磨くことが何よりもまず重要だといえます。
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F1レーサーのアイルトン・セナは左利きだったといわれています。利き足も左だったことで、左足でブレーキ操作をおこなう必要のあるF1において、絶妙な加減でブレーキを操作できたことが、活躍の要因のひとつといえます。
モータースポーツのような限界に挑戦するようなものであれば、たしかに利き手による有意差は存在するのかもしれません。
しかし、われわれが日常的に運転するクルマについては、利き手による影響よりも、個々人の運転技能のほうが重要であることはいうまでもありません。
Writer: PeacockBlue K.K. 瓜生洋明
自動車系インターネット・メディア、大手IT企業、外資系出版社を経て、2017年にPeacock Blue K.K./株式会社ピーコックブルーを創業。グローバルな視点にもとづくビジネスコラムから人文科学の知識を活かしたオリジナルコラムまで、その守備範囲は多岐にわたる。










