運転に利き腕は関係ある? 右利きと左利きでクルマの運転に差は生じるのか
日本人のほとんどは「右利き」となり「左利き」はおよそ10人に1人といわれています。では、クルマの運転において利き腕は影響するのでしょうか。
「左利きは事故率が高い」という研究はあるが…
日本人のおよそ10人に1人存在するといわれる左利き。日常生活には不便なことも少なくありません。
その一方で、その希少性からスポーツなどでは有利になることもありますが、果たしたクルマの運転にも影響があるのでしょうか。
少し古い論文ですが、カナダの心理学者であるスタンレー・コレン博士は、1989年に発表した論文で、ブリティッシュ・コロンビア大学の学生1896人を対象に利き手に関する調査をおこなった結果、左利きは右利きに比べて生活上のリスクが多いということを述べました。
クルマの運転についても、左利きは右利きに比べて1.85倍の交通事故のリスクがある発表したことから注目を集め、この論文は大きな議論を巻き起こしました。
しかし、それぞれのリスクが、果たして本当に左利きであることに起因するものかはまだまだ議論の余地があり、あくまで心理学上の一見解に過ぎません。
そもそも、日本の道路交通法では利き手によってクルマの運転になんらかの制限がかかることはなく、利き手による運転技能の優劣は認められていません。
したがって、ここでは、右利きもしくは左利きがクルマの運転に向いている、あるいは不向きであるということではなく、あくまで利き手による運転上の影響について考えてみたいと思います。
前置きが長くなりましたが、運転をする際、手がもっとも触れる場所であるハンドル操作について、まず考えてみましょう。
基本的に、ハンドルは両手で持つことが義務付けられています。
シフトチェンジをしたり、エアコンなどを操作したりといったことをおこなうために、一時的に片手運転になる程度であれば検挙されることはまずありませんが、継続的に片手運転をおこなうと安全運転義務違反の検挙対象になることがあります。
いわゆる「10時10分」のかたちでハンドルを握った際、握り方による重心の偏りはないため、右手と左手の力加減が直接的に影響します。
多くの人は、利き手のほうが握力や反応速度が優れていると考えがちですが、実は利き手に起因する左右の手の能力差はそれほど多くはないようです。
実際に、右利きでも左手のほうが握力が強いことは珍しいことではありません。
人によって、左右どちらかの手の力が強かったり反応速度が速かったりすることもありますが、ハンドルには「あそび」と呼ばれる部分があり、左右の手のわずかな感覚の差が影響することはまずありません。
最近ではかなり少なくなりましたが、MT車のシフトチェンジはどうでしょうか。
右ハンドルのMT車では、左手でシフトチェンジをおこなうことになります。右利きでは利き手でないほうでシフトチェンジを、左利きでは利き手でないほうでハンドル操作をおこなうことになります。
そもそも左ハンドル車ではシフトチェンジにかかわらず、ほとんどのものが左右対称となります。
右ハンドルを運転する左利きの人と同様に、左ハンドルを運転する右利きの人も一定数存在します。
個々人の慣れの問題はあるかもしれませんが、少なくともどちらのパターンも現行法で認められていることから、利き手による差は、やはりそれほど大きくないと考えられます。
クルマの運転のように、頭の中で言語化せずともおこなえる行動は、一連のシステムとして脳が認識しているといわれています。いわゆる、「身体で覚える」というものです。
文字を書くような細かな動作や、スポーツのような絶妙なパワーバランスが求められるものは別ですが、クルマの運転のようなものであれば、脳内で左右反転するのはそれほど難しくないと考えられています。
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