ワイパーはただ水を拭き取っている訳ではない!? 100年以上変わらないワイパーの仕組みとは

ワイパーは1人の女性がきっかけで誕生した?

 ワイパーの誕生には、ひとりのアメリカ人女性が深くかかわっています。

 その女性とはメアリー・エリザベス・アンダーソン(1866年-1953年)。アラバマ州で生まれた彼女はディベロッパー、牧場主、ブドウ栽培者として忙しく働くバイタリティ豊かな女性だったようです。

 そんな彼女が、1903年の冬、ニューヨーク市で路面電車に乗ったときにワイパーの原案を思いつきました。

 彼女が見たのは、悪天候のために、運転手がたびたび電車を止めてフロントガラスについた雪や氷を取り除く光景。

 そうして視界を確保しなければ、電車を進められないのは当然ですが、あまりに頻回だったため、ついに運転手はフロントウインドを全開にして運転をするはめになったのです。

 メアリーは地元に戻ると、運転手がフロントウインドの雪や雨を車内での操作で除去できる装置を地元の工場に試作させました。

 そして、木とゴムでつくったアームにバネを仕込んだものを窓の外に設置し、車内にあるレバーで操作する仕組みをつくったのです。

 これは、一度の操作で左右に往復して雨や雪を除去するもので、現在のワイパーの基本動作の元になっています。

基本構造は100年以上変わらないが、日々進化しているワイパー
基本構造は100年以上変わらないが、日々進化しているワイパー

 そして1903年、この装置に17年間有効な特許が認められ、彼女はこの装置が自動車メーカーに喜んで受け入れられると考え、積極的に売り込みましたが結果は惨憺たるものでした。

 ワイパーの動きのせいでドライバーが注意散漫になり、事故を引き起こす危険があると考えられ、普及しないまま1920年に特許が切れてしまったのです。

 しかしその後になって、自動車産業が飛躍的に発展すると、彼女の設計を利用したワイパーが自動車に装備されるようになり、1922年にはキャデラックが自動車メーカーとして初めてワイパーを標準装備しています。
 
 こうしてワイパーはクルマにとってなくてはならないものになっていきましたが、初期のワイパーは手動式で使いづらいものだったようです。

 エンジンの動力を利用する真空式ワイパーが開発され、便利にはなりましたが、クルマが減速するとそれに合わせてワイパーの動きも遅くなるという欠点もありました。

 この問題を解決したのがドイツの部品メーカー、ボッシュです。1926年、現在の製品と基本的に変わらない原理に基づく電気モーターを使ったワイパーが誕生しました。

 さらに1960年代には一定時間ごとに自動で動く「間欠式ワイパー」が誕生。20世紀初頭に誕生したワイパーはさまざまな面で進化を重ねてきているのです。

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