ホンダ新型「シビック」は日本市場にも本気で殴り込み!? 「シビックらしいシビック」登場の背景は?

11代目で表現された「シビックらしさ」とは?

 エンジンは1.5リッター直列4気筒のVTECターボ。10代目からのキャリーオーバーと思いきや、高効率ターボチャージャー&低圧損過給配管、4-2エキゾーストポートシリンダーヘッド、低フリクション化、高剛性クランクシャフトの採用など、改良項目は多岐に渡ります。

 乗ると「本当に同じエンジン?」と思うくらいの進化幅です。

 具体的には先代はパワフルだけどドッカンターボでスムーズさに欠けるなど意外と武闘派でしたが、新型はアクセルを踏んだ時の過給の立ち上がりのスムーズさ、アクセルを踏んだ時応答性の良さや過給の立ちあがりの滑らかさ、そして高回転まで力強さが持続する伸びの良さなど、より洗練、より扱いやすいユニットに改善されています。

 また、元気だけどどこかガサツな印象が拭えなかったフィーリングもまるでバランス取りされたかのように整えられ、まさにスッキリ爽快なエンジンに仕上がっています。

 ホンダは電動化に舵を切る宣言をしていますが、「まだまだエンジンもやるよ!」という本音が表れているのかもしれません。

 トランスミッション先代同様に6速MT/CVTを用意。MTは先代の隠れ人気グレード(販売比率30%)だったことから新型にも継続採用となりました。

 先代に対してシフトフィール向上とショートストローク化がおこなわれ、軽いタッチでより正確なシフト操作が可能になっています。

 また、エンジン側の進化に合わせたギア比のワイドレシオ化もおこなわれ、エンジンの旨みを活かしやすくなったうえにビジーシフトも減りドライバビリティも高められています。

 CVTはエンジン回転と加速感のズレを解消する全開加速ステップシフトの制御など、エンジンと同じくドライバビリティ向上を実感。

 注目は減速Gに合わせてエンジンブレーキを併用したスムーズな減速が可能なブレーキ操作ステップシフトダウン制御で、スバリ「パドルいらず」といってもいい賢さです。

 コーナリング中もエンジン回転をキープしてくれるので再加速時もギクシャクすることなく走ることが可能です。正直、全開にしない限りはいわれないとCVTだと気が付かないくらいの仕上がりです。

 プラットフォームは先代から採用のグローバルプラットフォームの改良版ですが、基本素性の変更(ホイールベースは+35mm、リアトレッドは+12mm)やアルミサブフレームの採用、各部のフリクション低減、リアコンプライアンスブッシュの容量拡大など、エンジンと同じく変更部位は多岐に渡ります。

 車体も前後環状構造や格子状フレーム配置、アルミ材・高ハイテン材の採用、構造用接着剤の最適配布(現行比9.5倍)などがおこなわれ、ねじり剛性は現行比18%アップの実力です。

ホンダ新型「シビック」
ホンダ新型「シビック」

 その走りはどうか? 先代は軽快でキビキビしたクルマの動きなどスポーティハッチらしさを備えていましたが、上級ハッチとしては荒削りな部分があったのも事実です。新型ではその辺りがほぼ改善されています。

 ハンドリング路で走ると、スポーティなフィーリングながら先代とは別物なのがすぐに解ります。

 具体的には微小舵角でもスッと反応する応答性の高さと探ることなく一発で舵が決まるステア系、車両重量を感じさせない身のこなしの良さ、コーナリング時に荷重を上手に分散し4つのタイヤを効果的に使えるハンドリングバランス、ボディの無駄な姿勢変化は抑えながら路面をしなやかに捉える足さばきなど、リアの接地性の高さから来る安心感など、インパクトよりも本質を追求した走りなのです。

 この辺りはフィットやヴェゼルと同じ考えですが、基本素性が優れるシビックがもっとも色濃く反映されています。

 本質の追及は高速周回路でも実感できます。ステアリングに軽く手を添えるだけでビシーッと走るの直進安定性はアコードに匹敵するレベル、そしてシビックであることを忘れるほど外乱に影響されにくいドッシリとした安定性の高さなど、ハンドリング路とは違う顔を見せます。

 新型は世界初のレベル3を実現したホンダセンシングエリートの技術を水平展開した、新世代ホンダセンシングを採用していますが、そのなかの車線維持支援システム(LKAS)の精度の高さは、システムの進化に加えて基本性能の高さも大きく影響しています。

 乗り心地は先代と比べるとやや硬めに感じる人もいるようですが、目線がブレにくいバネ上のフラット感やショックの吸収性の高さや収まりの自然さ、さらに新世代シートフレーム採用の「ボディスタビライジングシート」のかけ心地の良さ&姿勢の安定性などの相乗効果で、むしろ快適性は上がっています。

 静粛性の高さも新型のポイントですが、単に音量を下げるのではなくエンジンサウンドなど必要な音は雑味を抑えたうえで聞かせるようにしているのはホンダらしいこだわりです。

 EXにはBOSE製オーディオが採用されていますが、シンプルな構成ながら広がりのある音場は上級モデル顔負けの実力です。

 これらの伸び代は飛び道具ではなく各部の成熟により実現しており、どこかが突出しているのではなく総合的なレベルアップといえるでしょう。例えるならゴルフV→ゴルフVIのような進化に近いかもしれません。

 ただ、面白いのは単純に性能がアップしただけでなく、先代よりも「シビックらしさ」が増していると感じたことです。それは何なのか? そのヒントはグランドコンセプト「爽快シビック」にありました。

 爽快は人間の気持ちであり、数値では測ることは難しいので人の感覚で磨き上げていく必要があります。

 つまり、絶対性能よりも官能性能を重視した開発になったわけで、それが結果として今まで以上にドライバー中心のクルマづくりに繋がったのではないか……と考えています。

 つまり「シビックらしさ」とは、ボディサイズでも車両重量でも、エンジンパフォーマンスでもなく、スバリ「人に寄り添うこと」であると。

 新型は先代と同じくグローバルモデルで海外市場がメインですが、先代とひとつ違うのは「日本市場でのシビックの扱い」でしょう。

 その証拠にハッチバックとしては7代目以来となる日本での生産、2グレード設定、そして発表→発売のタイムラグがほぼ無いこと(実は10代目は世界初公開から日本での発売まで2年かかった)など、「とりあえず日本にも用意しました」ではなく、「日本市場でもシッカリ売るぞ!」という開発陣の強い想いがあることです。

 それが「シビックらしさ」に繋がったのではないでしょうか。

 価格(消費税込)はLXが319万、EXが354万9800円と、ライバルと比べると高めです。それが販売にどう影響するかはもう少し様子を見てから判断したいと思っています。

 個人的にはEXはともかく、LXはもう少し装備をシンプルにして戦略的な価格(300万円以下!?)を掲げても良かったかな……と。

 そろそろ結論にいきましょう。11代目、ハード自体は大きく変わっていませんが、考え方は大きく変わっています。そういう意味では、久々に「シビックらしいシビック」のような気がしました。

 そういう意味では11代目は『シビック』を再適義するいいタイミングだと思っています。来年でシビックは生誕50年を迎えますが、次の50年に向けてシビックを再び日本人の手で育てていけたらいいな……と思っています。

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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3件のコメント

  1. 先代のシビックセダンが売れなかった原因はHVがなかったことと
    サイズの近いインサイトとの共食いが原因だから
    古くなったインサイトは潔く廃止しながら
    シビックセダンにe:HEVを搭載しつつ日本に導入すれば
    ちゃんと売れるし部品を共有化できるから製造コストも浮かせられる
    e:HEV限定でもいいから日本にもシビックセダンを導入するべき

  2. いろいろ褒めちぎってるけど、300万を越えるシビックを誰が買うんだ?

    その値段ならゴルフとか輸入車の方がいいんじゃないのか?。

    日本人の所得って下がり続けてる一方だろうに、誰が買うんだろうか?。

  3. 悪い事を言わないからフィットのコンポーネントを使って、新型シビックと同じデザイン言語のエクステリア・デザインにして、5ナンバーに収めるか少しはみ出す程度のを、シビックとして出せ。

    後、HBのテールランプはダサくてクサイから、止めとけ。

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