ニュル最速にポルシェ「911 GT2 RS」が再び! ノルドシュライフェ最速ベスト10【公道走行可能車両編】

高性能車ブランドがその実力を試す場所としてあまねく重用するのが、「ノルドシュライフェ」ことニュルブルクリンク北コースだ。2021年6月14日、マンタイのパフォーマンスキットを装着したポルシェ「911 GT2 RS」が、3年ぶりとなるコースレコードを更新したニュースが世界に配信されたことで、再びスポットライトを浴びているノルドシュライフェの歴代レコードについて解説しよう。

世界一過酷なテストコース、ニュルブルクリンクとは

 世界中に知れ渡る「ノルドシュライフェ(Nordschleife)」というドイツ語。日本語に直訳すれば「北のコース」という意味になるのだが、自動車の世界でノルドシュライフェといえば、そのままニュルブルクリンク旧グランプリコースのことを示す。

ニュルブルクリンクのノルドシュライフェでのタイムは、スーパースポーツを謳うクルマにとっては、カスタマーへアピールする上で重要なステージでもある
ニュルブルクリンクのノルドシュライフェでのタイムは、スーパースポーツを謳うクルマにとっては、カスタマーへアピールする上で重要なステージでもある

●世界一タフなレーシングコース、ノルドシュライフェとは?

 1976年に、フェラーリ「312T2」に乗る前年のワールドチャンピオン、ニキ・ラウダが生死の境を彷徨う大事故を起こすまでは、F1ドイツGPの舞台としても使用されていたこのクラシックサーキットは、ドイツ北西部のライン川左岸、ケルンから60kmほど南西に行ったアイフェル山中にある。

 同じニュルブルクリンクでも、現代のF1GPに使用されている南コース、通称「グランプリサーキット」が1周5.144kmという常識的な全長なのに対して、北コースはかつてのFIGPがおこなわれていたコースで、最盛期には22.835km(!)、現在でも1周20.832kmという、まさに常識外れのコース距離を誇る。

 しかもバンピーな路面に狭いコース幅、次々と出現するブラインドコーナーなど「世界一タフなコース」としても名を轟かせ、F1サーキットのなかでも最悪の難コースとして恐れられてきたのだが、現在ではそのタフさゆえに世界中の自動車メーカーや有力チューナーにとって、その総合性能を磨き上げるための最高のテストコースとなっているのもご存知のとおりだろう。

 その一方で、既に完成した高性能スポーツカーが、その総合性能の高さをアピールする舞台としても活用されており、各メーカーおよびコンストラクターが公式タイムアタックに相次いでチャレンジ。そのラップタイムは、高性能車の象徴ともなっているのだ。

 そこで、2021年7月現在のノルドシュライフェにおける市販車のラップタイム歴代Best10を、カウントダウン形式で紹介しよう。

第10位/ランボルギーニ「ウラカン・ペルフォマンテ」
第10位/ランボルギーニ「ウラカン・ペルフォマンテ」

●第10位/ランボルギーニ「ウラカン・ペルフォマンテ」:6分52秒01(2016年)

「EVO」に進化する直前のランボルギーニ・ウラカンに設定されたハードコア版。カーボン製パーツを多用することによってスタンダードの「LP640-4」から40kgの軽量化を図る一方、最高出力は30psアップ。「ALA(エアロダイナミカ・ランボルギーニ・アッティーヴァ)」の追加で空力面もリファインした。

 正式なデビュー半年前の2016年秋に、ランボルギーニとともにGTレースで活躍するマルコ・マペッリ選手のドライブで、6分52秒01という量産スーパーカーとしては素晴らしいタイムを樹立した。

第9位/ラディカル「SR8LM」。写真は「SR8」。現在5万ユーロで販売中(C)1997 - 2021 Radical Sportscars LTD
第9位/ラディカル「SR8LM」。写真は「SR8」。現在5万ユーロで販売中(C)1997 – 2021 Radical Sportscars LTD

●第9位/ラディカル「SR8LM」:6分48秒28(2009年)

 英国のラディカルは、鋼管スペースフレームのミッドに、もともとはスズキ「隼」用、ないしはカワサキ「ZZ-R1400」に積まれていた二輪車用4気筒エンジンを搭載。2000年代初頭のLMPマシンを思わせるカウルで覆っただけの、まさに公道走行も(なんとか)可能なレーシングカーだ。

「SR8LM」は、隼の直列4気筒をベースに2基連結させたような2.6リッターV8を搭載するトップモデル「SR8」をベースにさらにサーキット志向としたモデルで、エンジンは360psから460psにチューンアップ。ボディカウル形状も、空力面で大幅なブラッシュアップが図られた

 オランダ人のレーシングドライバー、マイケル・ヴェルジェ氏の操縦で、その2005年にSR8+ヴェルジュ氏本人が計上した「6分55秒」の記録を大幅に更新した。

第8位/パガーニ「ゾンダR」
第8位/パガーニ「ゾンダR」

●第8位/パガーニ「ゾンダR」:6分47秒50(2010年)

 パガーニ・ゾンダの資質をさらに先鋭化したサーキット専用車として、2009年から15台が製作された。搭載されるAMG製V12NAエンジンは750psまで増強され、空力パーツも完全なサーキット向けとされていたゾンダRは、様々なチームを渡り歩きつつ、GTレースの第一線で活躍したマーク・バッセング選手のドライブで、2009年のラディカルSR8LMのタイムを打ち破ることに成功した。

 ただし、ゾンダRは原則として公道走行が認められないサーキット専用車両ということで、このBest10に入れるべきかどうかは意見が分かれるものの、一応は「市販車」として顧客にも引き渡されたことから、ランクインとしている。

第7位/ポルシェ「911 GT2 RS ヴァイザッハ・パッケージ」
第7位/ポルシェ「911 GT2 RS ヴァイザッハ・パッケージ」

●第7位/ポルシェ「911 GT2 RS ヴァイザッハ・パッケージ」:6分47秒25(2017年)

 現在のポルシェ「911」のなかでも、もっともハードコアかつ過激な特別モデルとして君臨する「911GT2RS」。現時点での最終型である991時代に製作された軽量オプション特装バージョン「ヴァイザッハ・パッケージ」は、2009年以来「ラディカル SR8LM」が長らく保持してきた公道走行が認められた車両のノルドシュライフェ最速記録を、ポルシェ本社の開発ドライバー兼レーサーのラース・カーン氏の操縦により、8年ぶりに更新した。

第6位/ニオ「NP9」(C)NIO
第6位/ニオ「NP9」(C)NIO

●第6位/ニオ「NP9」:6分45秒25(2018年)

 2017年、ポルシェ911GT2RSがマークしたばかりの記録を、翌年さらに2秒以上も縮めたのは、中国「ネクストEV」社が開発したEVスーパーカー「ニオ(NIO)EP9」とベテランドライバー、ピーター・ダンブレック選手だった。

 EP9は4つの電動モーターで4輪を駆動し、その総出力は1360ps。最高速度は313km/h、0-200km/h加速タイムは7.1秒。この高性能を利して、ノルドシュライフェ最速EVの地位を獲得した。

 現時点ではまだ正式発売には至っていないようだが、あくまで法規上では公道走行を可能とする装備が施されていることから、ここでも市販車にカテゴライズすることにした。

【画像】ニュルブルクリンク・ベスト10のラップタイム一覧【公道走行可能車両編】(32枚)

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