新車売れ筋20年で大変化! クラウンやオデッセイ激減!? 今と昔で異なる新車事情とは
売れ筋車種もコンパクト化!? 20年で何があった?
ベスト10車を見て、20年前ともっとも大きく変わったのはミニバンでしょう。2001年にはストリーム、エスティマ、ステップワゴンの3車種が入りましたが、2021年はアルファードのみ。
しかもストリームのような後席のドアが横開きで全高も1700mmを下まわるワゴン風のミニバンは、今では車種自体がありません。
ミニバンは1990年代の中盤以降に選択肢を充実させたことから、2001年頃には売れ行きを急速に高めました。当時はミニバンを初めて購入するユーザーも多く、ワゴンとの中間的な車種も用意したのです。
それがいまでは、ミニバンはもはや新しいカテゴリーではなくなり、多人数で乗車したり荷物を積んだりするユーザーのためのクルマという位置づけになっています。そのためにワゴン風のミニバンはすべて消滅して、スタイル優先のエスティマも廃止されました。
ベスト10車に入るメーカーの数も変わりました。トヨタは2001年には3車種でしたが、2021年は5車種に増えています。
逆にホンダは、2001年はトヨタよりも多い4車種がベスト10に入りましたが、2021年はN-BOXだけです。ストリームは前述の通り廃止され、ホンダ「フィット」やステップワゴンはベスト10の圏外です。
2001年に国内販売2位だったホンダは、クルマの売れ方もいまに比べてバランスが良く、軽自動車は40%で小型/普通車が60%を占めました。
ところが2021年上半期のホンダは、N-BOXだけで国内新車販売台数の35%に達します。「N-WGN」なども加えた軽自動車比率は57%と高く、小型/普通車は残りの43%。軽自動車と小型/普通車の販売比率が20年前とは逆転しています。
軽自動車とコンパクトカーのフィットおよび「フリード」の合計では、国内で新車として売られたホンダ車の80%近くになります。
ホンダは2000年代の中盤に全店が全車を扱う販売体制に移行した影響もあり、国内の売れ筋が特定の車種に限られて販売ランキング順位も20年前の2位から4位に後退しました。
また、日産も軽自動車比率が高く、40%を超えています。
ホンダや日産が軽自動車に力を入れた影響で、2021年上半期には国内で販売された小型/普通車の52%がトヨタ車でした(レクサスを含む)。
国内市場全体ではトヨタ比率は33%なのに、小型/普通車に限ると半数を超えるのです。トヨタは一部のOEM車を除くと軽自動車を扱わず、小型/普通車に専念しているためだといえます。
ベスト10以外のクルマでも変動があります。トヨタ「ハリアー」「ライズ」、日産「ノート」、ホンダ フリード、スズキ「ハスラー」といった車種は、ハリアーを除くと2002年以降に初代モデルを投入して、売れ行きを伸ばしました。
逆にトヨタ「クラウン」は2001年には1か月平均で6908台を登録しましたが、2021年上半期は2121台です。ホンダ「オデッセイ」は2001年に5918台で、2021年上半期は1754台まで減っています。スバル「レガシィ」は2001年に5231台で、いまは販売を中断しています。
このように、20年前に堅調に売れた上級クラスの車種が、いまでは売れ行きが落ちたり廃止に追い込まれたりしています。
その背景には、衝突被害軽減ブレーキをはじめとする安全装備や運転支援機能の充実、燃費の向上、消費増税などによってクルマの価格が上がった事情があります。
20年前の2代目ステップワゴンの「D」グレードは、消費税を加えて205万8000円でしたが、現行型はもっとも安い「Gホンダセンシング」でも271万4800円と価格は20年前の1.3倍になりました。
クラウンは20年前には11代目の「3.0ロイヤルサルーン」が消費税を含めて401万1000円でしたが、現行型はもっとも安価な「ハイブリッドB」が489万9000円。20年前の1.2倍です。
このようにクルマの価格は20年前の1.2倍から1.3倍に上がりましたが、1世帯当たりの平均給与所得は逆に下がっています。その結果、売れ筋車種もコンパクト化したのです。
日本の道路環境を考えると、コンパクトな車種をさらに充実させて欲しいです。いまの小さなクルマは実用性が高いのですが、カッコ良いモデルや運転が楽しい車種も必要でしょう。そのためにコンパクトSUVも人気を集めています。
またスズキ「スイフトスポーツ」は、1か月平均で約1000台を登録しており、スイフト全体の約半数を占めます。日産「ノートオーラ」やトヨタ「アクア」などの新型車もいまのニーズに合っています。今後の新型車に期待したいです。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
オデッセイは2013年にとっくに廃止されてる
今のあれは死に損ないのエリシオン