時速400キロ以上でシフトチェンジ! ブガッティだからこその開発テストとは?

ブガッティ「シロン・スーパースポーツ」のテストが大詰めになっている。そこで、どのようにして400km/hオーバーのテストをしているのかをレポートしよう。その内容を知れば、5億円近い車両価格も納得するはずである。

5億円近い値段も納得の限界域での本気テスト

 空気のわずかな振動が、数秒後には恐ろしい雷鳴へと変わる。地面が振動し始め、ブガッティ「シロン・スーパースポーツ」、そのプロトタイプが空気の壁を破ると、一瞬でそれは地平線の彼方へと消えてしまう。

 もう何回この光景が繰り返されているのだろう。フランスの新しいスーパースポーツ、いや世界の頂点に位置するスーパースポーツは、こうやって高速トラックで最高440km/hの速度でテストされている。

 コックピットには、シロン・スーパースポーツのチューニングに最終セットアップを施している経験豊富な開発エンジニアの姿。彼らの仕事は400km/hを超える最高速においても、豪華さと快適さというユニークな組み合わせを実現することだ。

「シロン・スーパースポーツ」のエアロダイナミクスを始め、サスペンションの減衰などの再調整を400km/h前後の速度域でおこなう
「シロン・スーパースポーツ」のエアロダイナミクスを始め、サスペンションの減衰などの再調整を400km/h前後の速度域でおこなう

●時速400キロ以上でのセットアップとは

 シロン・スーパースポーツの第1号車は2021年8月に顧客に納車される予定だが、その前にエンジニア達はやらなければならないことが数多くあった。

 それは、数日間にわたっておこなわれた高速ドライブテスト中に、エンジニアたちはモルスハイムで手作業で製作されるシロン・スーパースポーツのエアロダイナミクスを始め、サスペンションの減衰などの再調整である。

 テストは380km/hでの速度域で始まり、最高440km/hでおもにハンドリングのセットアップだ。この信じられないような高速域でもシロン・スーパースポーツが、カスタマーにとって妥協のない安全性を確保できるように、一切の妥協は許されない。

 ブガッティのシャシ開発責任者であるヨハン・シュワルブ氏はこのように説明する。

「これは複数の技術的な変更と最適化によるものです。リアウイングの角度、車高、ダンピング、電動アシストステアリングの可変領域に基づいて、我々はさまざまなパラメーターを変更、および比較できます。これはすべて最高速モードでラップごとにおこなわれます。

 次に最大6人のエンジニアが、完璧なセットアップについてディスカッションをおこないます。ブガッティのエンジニアはさまざまな専門家のバックグラウンドを持っており、評価を包括的に検証できるため、テストの安全性を最大限に高めながら、将来のオーナーに最高の結果と最大のパフォーマンスを保証することができるのです。

 もちろんこれはブガッティならではの独占的な仕事です。なぜならシロン・スーパースポーツは最速のプロダクションカーなのですから」

 車両全体のテストを担当するミハエル・ボード氏は、主観的な印象に加えて客観的なデータを評価できるように、このテストに参加している。約100個の追加センサーが、テストドライブ中に温度や圧力など、さまざまなデータを記録する。

「信じられないほどの出力と速度によって、さまざまな圧力レベルによって、変形と熱が生じます。そのためすべての部品を最高速度と全負荷で監視し、必要に応じて最適化します。このレベルの作業ができるのは、この並はずれて高級な車両を購入していただいたお客様のおかげです」

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