バブル末期は当たり年だった? 1991年に誕生した美しいクーペ3選

近年、日本ではニーズの変化からラインナップが激減してしまったクーペですが、大型かつ高額なモデルは世界的にもパーソナルカーとして一定の人気があります。そんな大型クーペはバブル景気の頃は日本でも各メーカーから販売されていました。そこで、バブル末期の1991年に誕生した美しいクーペを、3車種ピックアップして紹介します。

1991年というバブル景気の終わりに誕生した大型クーペを振り返る

 日本の自動車市場では、1990年代の中頃以降にミニバンが爆発的に普及しました。そして2010年代の終わり頃にはSUVの人気が加速し、現在に至ります。

 これらの影響から、セダンやステーションワゴン、そしてクーペといったモデルのニーズは低下し、なかでも小型で比較的安価なクーペは風前の灯火といった状況です。

バブル景気の終焉とともに誕生したスタイリッシュなクーペたち
バブル景気の終焉とともに誕生したスタイリッシュなクーペたち

 一方、大型かつ高額なクーペは世界的にもパーソナルカーとしての需要が一定数あり、日本でもレクサスや輸入車を中心にラインナップされています。

 そんな高級クーペは日本のバブル景気の頃、今よりももっと豊富で、各メーカーから販売されていました。

 そこで、バブル景気末期の1991年に誕生した国産高級クーペを、3車種ピックアップして紹介します。

●スバル「アルシオーネSVX」

美しいフォルムは今も色褪せない魅力がある「アルシオーネSVX」

 1985年にスバルは同社初のスペシャリティカー「アルシオーネ」を発売。空力性能向上を目的にデザインされた外観は、まさに「クサビ」そのものといったシャープなフォルムが印象的でした。

 そして1991年には後継車にあたる「アルシオーネSVX」が登場し、外観はアルシオーネの直線基調から一転して、曲面で構成された美しいフォルムのクーペへと変貌。

 デザインの原案は、イタリアの名門カロッツェリアであるイタルデザインを主宰するジョルジェット・ジウジアーロによるもので、「ミッドフレームサイドウインドウ」と呼称されるボディサイドの造形が、アルシオーネSVXの個性を引き立てています。

 搭載されたエンジンは最高出力240馬力を発揮する3.3リッター水平対向6気筒自然吸気で、駆動方式はフルタイム4WDを採用し、トランスミッションは4速ATのみです。

 パワートレインから想像できるように、アルシオーネSVXはスポーツカーというよりも、あらゆる路面で安定した走りが可能なラグジュアリークーペというコンセプトでした。

 アルシオーネSVXはヒットすることはありませんでしたが、1997年までの約6年間と比較的長く生産され、現在は美しいデザインが再評価されており、アルシオーネSVXを専門に扱うショップもあるほどです。

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●ホンダ「レジェンドクーペ」

重厚感と美しさを兼ね備えたフォルムの「レジェンドクーペ」(画像は北米仕様)

 ホンダは1986年に他メーカーに先駆けて、アメリカで高級車ブランド「アキュラ」の展開を開始しました。そのフラッグシップとして開発されたのが初代「レジェンド」です。

 そして、セダンが登場してから2年後の1987年には、専用の2.7リッターV型6気筒エンジンを搭載する高級パーソナルクーペの「レジェンド ハードトップ」が追加ラインナップされました。

 その後、1990年にセダンが2代目にモデルチェンジして、1991年には同じく2代目となる「レジェンドクーペ」が登場。

 レジェンドクーペの外観はセダンと共通のイメージながらフロントフェイスからリアまわりまで専用にデザインされ、全長4880mm×全幅1810mm×全高1370mmという体躯を生かして伸びやかで美しいフォルムを実現しています。

 搭載されたエンジンは最高出力215馬力を発揮する3.2リッターV型6気筒自然吸気のみで駆動方式はFF。クーペ専用のチューニングが施された新開発の4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションと相まって、上質な乗り心地とスポーティな走りを両立。

 また、当時最先端の安全装備だった、「A.L.B.(アンチロックブレーキシステム)」、「TCS(トラクションコントロールシステム)」、運転席助手席エアバッグシステムなどが標準装備されていました。

 内装もセダンと変わらずゴージャスですが、ホールド性を重視したシートを採用するなどクーペならではモディファイが施されています。

 その後、1996年に3代目へモデルチェンジするとクーペが廃止となり、以降のレジェンドはセダンのみのラインナップで展開されました。

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●トヨタ「ソアラ」

大柄なサイズ感を生かしたスタイリッシュなフォルムの3代目「ソアラ」(画像は北米仕様)

 今では考えられませんが、昭和の時代にトヨタは「クラウン」にも2ドアクーペを設定していました。ただし、当時は珍しいことではなく、日産も「セドリック/グロリア」にクーペをラインナップするなど、あらゆるニーズに対応していたのです。

 ところが、1980年代になるとトヨタはラグジュアリークーペをクラウンから専用車種へと移行。それが1981年にデビューした初代「ソアラ」です。

 ソアラは世代を問わず絶大な人気を誇り、後の「ハイソカー」ブームの火付け役となった存在で、1986年に登場した2代目は初代以上のヒット作となります。

 そして1991年に登場した3代目ソアラは、それまで国内専用モデルだったのに対し、北米でレクサス「SC」として販売するために開発されました。

 そのため、ボディサイズは全長4860mm×全幅1790mm×全高1340mmと堂々とした3ナンバー専用ボディとなり、その大柄なサイズを生かした流麗なフォルムへと変貌。

 駆動方式は全車FRのみで、エンジンは最高出力260馬力の4リッターV型8気筒自然吸気と、最高出力280馬力を誇る2.5リッター直列6気筒ツインターボを設定し、後に3リッター直列6気筒自然吸気も追加されました。

 トランスミッションは4速ATが基本ですが、2.5リッター車のみ5速MTも設定されるなど、エンジンのキャラクターに合わせています。

 また、走行状況により車体の振動やロールなどの姿勢変化を抑える、世界初のハイドロニューマチック式「アクティブコントロールサスペンション」や、同じく世界初の後輪自動操舵システムが設定されるなどの先進技術を搭載。

 その後、2001年に4代目がデビューするとクーペカブリオレとなり、よりラグジュアリー路線へと変化し、日本でも2005年からレクサス「SC」の名に改められ、ソアラは消滅してしまいました。

※ ※ ※

 文中に紹介したレジェンドですが、2021年をもって生産を終えることになりました。北米版レジェンドであるアキュラ「RLX」もすでに販売を終えています。

 現行モデルのレジェンドは、2021年3月に世界初の自動運転レベル3を実現して大いに話題となりましたが、直近の販売台数は極めて低調だったため、生産終了は仕方のないことでしょう。

 レジェンドは初代から一貫してホンダらしさあふれる高級セダンとして歩んできましたが、ニーズの変化には抗うことができず、35年という長い歴史に幕を下ろします。

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