ホンダ「シビック」“らしさ”追求した新型はどう進化? 誕生50周年目前に11代目へ

ガソリン車のみの設定? 電動化はどうなる?

 新型シビックのパワートレインは現行モデルと同じく1.5リッター直列4気筒VTECターボを搭載。

 スペック的には182馬力/240Nmと不変ながらも(CVT車のトルクは20Nm向上)、立ち上がりの応答性やアクセル踏み込み時の追従性、加速の伸び感、音と加速の一体感といったドライバビリティ向上のために、高効率ターボチャージャー&低圧損過給配管、4-2エキゾーストポートシリンダーヘッド、低フリクション、高剛性クランクシャフトの採用など各部をアップデートしています。

ホンダ新型「シビック」(11代目)
ホンダ新型「シビック」(11代目)

 また、トランスミッションは6速MTとCVTを用意。6速MTはシフトフィールの改善やワイドギアレシオの採用。

 CVTは「パドルシフトいらず」といわれるブレーキ操作ステップシフトダウン制御、CVTのエンジン回転と加速感のズレを解消する全開加速ステップシフト制御など、エンジンと同じくドライバビリティ向上のための最適化がおこなわれました。

 恐らく、「電動化に舵を切る宣言をしたホンダなのに、なぜガソリン車のみの設定なのか?」という疑問を持つ人もいるでしょう。

 この辺りは同じグローバルモデルながらも日本仕様はハイブリッドの「e:HEV」のみに割り切った「アコード」や、ガソリン車は用意するもののe:HEV中心のグレード構成を取る新型ヴェゼルなどとは考え方が異なります。

 この矛盾が気にならないといえば嘘になりますが、良いように解釈してみると、「宣言はしたものの、模索している」ということなのかもしれません。2040年までまだ時間もあるわけでして。

 とはいうものの、すでに2022年にハイブリッドとタイプRの追加設定を公言しています。今回は詳細を語ることはありませんでしたが、ハイブリッドは2モーターの「e:HEV」なのは間違いないでしょう。

 ただ、ホンダ関係者からは「フィットやヴェゼルとは違う、“シビックらしい”ハイブリッドです」と意味深なコメントも聞かれました。

 フットワークは質の高い軽快感を実現するために、車両全体に手が入っています。プラットフォームは先代から採用されているグローバルプラットフォームを踏襲しますが、基本素性の変更(ホイールベースは+35mm、リアトレッドは+12mm)やアルミサブフレームの採用、各部のフリクション低減、リアコンプライアンスブッシュの容量拡大など変更部位は多岐にわたります。

 車体も前後環状構造や格子状フレーム配置、アルミ材・高ハイテン材の採用、構造用接着剤の最適配布(現行比9.5倍)などがおこなわれており、ねじり剛性は現行比18%アップといいます。

 新型フィット以降、ホンダの走りの方向性はインパクトよりも本質が高められたセットアップになっています。

 新型フィットは、本質にこだわりすぎて牙を抜かれた感が否めませんでしたが、新型ヴェゼルは初代の軽快でキビキビした良さを残したまま実現していました。

 それを踏まえると、新型シビックは基本素性(ワイド&ロー)に優れることによるさらなるライントレース性の高さや操舵と挙動の一体感に加えて、キャラクターに見合ったハンドリングと乗り心地のバランスを期待したいところです。

 ちなみに、新型シビックの開発は基本性能を欧州の走行環境で鍛え上げ、各地域のニーズや交通環境特性に合わせた味付けをおこなっているということなので、心配はいらないかなとも思います。

 新型は静粛性の高さもポイントのひとつですが、単に音量を下げるだけでなく音の質にもこだわっているといいます。

 なおEXには、BOSEプレミアムサウンドシステムが採用されており、その能力を存分に発揮できる空間に仕上がっています。

 安全運転支援システムは、フロントワイドビューカメラ+ソナーセンサーシステム+リアコーナーレーダーの採用、自動運転レベル3を実現した「ホンダセンシングエリート」の技術を水平展開した制御系を用いた次世代の「ホンダセンシング」を搭載。

 踏み間違い衝突軽減システムの追加やACC/LKASの性能進化、アダプティブドライビングビーム(EX)などの機能追加など大きくレベルアップしています。

 ただ、残念なのは名称が「ホンダセンシング」と従来と同じで、変わったことをまったくアピールしていないことです。せめて「新世代」や「バージョン○○」など従来とは異なることをシッカリ伝えたほうがいいと思うのですが。

※ ※ ※

 このように見ていくと11代目は熟成方向の進化ですが、筆者は「日本市場でのシビックの扱い」が大きく変わったと思いました。

 その証拠にハッチバックとしては7代目以来となる日本生産、2グレード設定(先代は1グレード)、そして発表から発売のタイムラグがほぼ無いことなどは、いままでの「とりあえず用意しました」ではなく、開発陣の想いもこれまでより強い物を感じました。

 まずは食わず嫌いにならず、実際に見て・触って・乗ってみてから判断してほしいです。結構「シビックらしいシビック」に仕上がっていると思います。

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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