全面刷新のトヨタ新型「ランドクルーザー」は何が変わった? カーボンニュートラルに向けた「ランクル70年目」の挑戦とは

「カーボンニュートラルはあくまでも目的」とするトヨタ、新型ランクルでの「答え」はいかに?

 300系のメカニズムはどうでしょうか。

 新プラットフォーム「GA-F」は、ほかのTNGAモデルと共通の正しい運転姿勢、200系で懸念材料だったリアサスジオメトリー、重量配分の適正化(エンジン/TM搭載位置をより低く(28mm)、より内側(70mm)と最適化)と基本素性を大きく見直されています。

 ちなみに生産現場の匠の技と最新技術の融合による世界初の溶接技術の採用も相まって、剛性を大幅に引き上げながらもフレーム/車体を含めて-200kgの軽量化を実現。

 サスペンションは、公開されている写真を見るとフロント・ダブルウィッシュボーン式、リア・リジットのようですが、これらも新設計です。

 最近のSUVのなかにはオンロード性能のためにリアサスを独立式にするモデルも多いですが、ランクルはオフロードで大事な接地性やストロークの観点から、リジットにこだわったのでしょう。

 加えて、走行路面を判定し自動でモード選択する「マルチテレインセレクト」などの最新技術の活用により、200系を超えるオフロード性能を、「誰でも」、「安心して」、「快適に」実現していると考えていいと思います。

 オンロード性能の進化も300系の大きなポイントのひとつです。

 前出の横尾氏は200系でオーストラリアの舗装路を長時間走った際に「予想に反して疲れる」と実感。

「疲れにくいクルマ=運転のしやすい」ということから、その辺りも徹底してこだわったそうです。

 ただし、オフロード性能を「犠牲にせずに」ということで、そのひとつの武器が世界初採用となる「E-KDSS(エレクトリック・キネティック・ダイナミック・サスペンショシステム」という、スタビライザー効果を路面状況に応じて変化させる機能です。

 ちなみに200系にはショックアブソーバーの減衰力を最適制御するAVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンションシステム)などが採用されていますが、300系にはその進化版も搭載されているはずです。

 ちなみに筆者(山本シンヤ)は200系に乗ったときにステアリングの重さが気になっていました。

 当時の開発者にその理由を聞くと「オフロード走行には必要な重さ」と説明。

「それに順応して走らせるのがランクル乗り」といわれればそうですが、横尾氏の「運転のしやすい」という観点でいうとウィークポイントなのも事実で、個人的にはこの辺りの進化も期待したいところです。

 今回、通常モデル(200系のZX?)に加えてGRスポーツが設定されていますが、どちらもランクルとして必要な性能を備えつつも、通常モデルはオンロード重視、GRスポーツはオフロード重視のセットアップになっていると筆者は予想しています。

 パワートレインも刷新されています。ガソリン車は200系の4.6リッターV型8気筒エンジン(318馬力/460Nm)+6速ATから、3.5リッターV型6気筒ツインターボエンジン(415馬力/650Nm)+10速ATと、排気量を下げながらパフォーマンスを大きく向上。

 恐らくランクルの懸念材料のひとつであった燃費性能もカイゼンされているのはいうまでもないでしょう。

 そして、ディーゼル車は100系以来となる待望の国内市場への復活です。(200系の海外向けには4.5リッターV型8気筒ツインターボ(273馬力/650Nmを設定)

 300系には新開発の3.3リッターV型6気筒ツインターボ(309馬力/700Nm)+10速ATは、より厳しさを増している排出ガス規制をシッカリクリアする“超”クリーンディーゼルになります。

ランクルはどんな環境下でも「人々の命を守るクルマ」。トヨタを代表する1台が全面刷新!(海外のGR SPORT仕様)
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 ちなみに300系にはハイブリッド車を始めとする電動化モデルはライナップされていません。

 その理由のひとつは、トヨタのハイブリッドシステム(THS II)の構造的な問題です。

 THS IIは、バックギアがなくモーターの駆動力のみで後退させますが、ランクルの使命は「行って、帰ってこられる」であり、THS IIだとそれが“すべての道で”保証できないためです。

 トヨタは常日頃から「カーボンニュートラルが目的」でその実現のために「さまざまな選択肢を持つこと」が重要と語っており、ランクルとしての使命を犠牲にせずにカーボンニュートラルに向けた現時点の最適解が、今回新開発されたふたつのエンジンというわけです。

 社内の試算では200系に対して車両使用時の年間CO2排出量をグローバルの全台数分で約10%低減できる見込みだといいます。

 ただ、トヨタの北米法人は2021年4月に電気自動車の「bZ4X」を発表した際、「近い将来、ピックアップトラックのラインナップにも電動化を導入する予定」と語っており、その技術を水平展開する可能性も否めません。

 もちろん、先進安全性能も抜かりなしです。発表リリースには「最新の予防安全パッケージ『Toyota Safety Sense』を採用」と記載されていますが、プリクラッシュセーフティ/横断歩行者検知機能/緊急操舵回避支援機能などから推測すると、恐らく「第3世代」だと予想しています。

 このように、70年にわたり築いてきたランクルの伝統を後世に伝えるべく、すべてが新しくなった300系。

 2021年の夏以降に世界各地で発売予定ですが、6月10日現在、価格や全グレード体系については未発表となっています。

 日本向けの300系は、いつ我々の目の前に姿を現すのでしょうか。非常に楽しみな1台です。

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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4件のコメント

  1. 富裕層のこの車の使われ方見とったら地球環境に最悪😞⤵️⤵️今贅沢を止める発想を出来るのはトヨタなんやけど💦

  2. ランドクルーザーは、私が寝ている間に海の向こうの一度も行った事が無い国に家出をして、死んでしまったのか二度と帰って来ません。家を出て生きて帰って来られると言うのは、場合によっては間違いです。

  3. 今回マジでツインターボガソリンもいいしディーゼルもいい、GRグリル一択だが必要なのは堅牢なガレージとお金だけ

  4. このクルマもオラつきまくってイメージ悪くなるんだろうなぁ
    トヨタ車は本当にいいイメージがない。

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