驚愕の4000万円! 「190Eエボ2」が「M3」よりもはるかに高額な理由とは?
DTMに参戦するためのホモロゲーションモデルは常に人気のクルマだが、メルセデス・ベンツとBMWが熾烈な争いをしていた1990年前後のモデルはいま、どれくらいの価格で取引されているのだろうか。最新オークションの結果から調査してみた。
クルマの価値は、オークション開催地でも変わる
モータースポーツの世界で激しい争いを続けていたライバルであったメルセデス・ベンツ「190E 2.5-16EVOLUTION II」と、BMW「M3」。
どちらも市販車をベースとしたツーリングカーレースに出場するために必要なホモロゲーションを取得するためのクルマで、中古車市場でもいまだに人気が衰えない。
では2021年現在、どちらのクルマの人気が高いのかを調べるために、ほぼ同じ時期にオークションで落札された190Eエボ2と、M3で比較してみよう。
オークション結果を伝える前に、それぞれの個体がどういう状態なのかをまずは確認しておこう。
190E 2.5-16エボ2だが、これは1990年にフランクフルトで納車された個体で、全生産台数502台のうちの1台。その購入時のオーナーの元、定期的にメンテナンスがおこなわれており、最新のメンテナンス履歴は2020年3月にボディセラミックコーティングが施工されている。走行距離は2万7500kmだ。
樹脂製インテリアパネルやレザーシートにはスレなどがなく、エンジンルームも美しさを保っている状態だ。
一方のM3は、人気が高いレーシングパターンのトランスミッションを装備した個体だ。レーシングパターンとは、通常左上に1速、左下に2速、中間上が3速となっているシフトパターンとは違い、左下に1速、中間上が2速で中間下が3速となっているもの。サーキットではほとんど1速を使うことはなく、ヘアピンコーナーでも2速しか使わないため、こちらのほうが2速から3速へのシフトに要する時間が短くなり、またシフトミスも起こりにくいということもあって、スポーツ走行をするしないにかかわらずBMWフリークの間では人気がある。
この個体は新車でBMW本社に納入され、その後1989年9月までのわずかな期間、BMWの社用車として使われていた。社用車といっても、どのような使われ方をしていたのかは不明だ。
装備としてはパワーサンルーフやプレミアムサウンドシステム、軽量アロイホイールなど多くのオプション品が装備されているが、それは社用車として使うということも大いに関係しているのかもしれない。
BMW社が手放したあと、一般のオーナーの手に渡っており、現在の走行距離は14万kmあまりとなっている。写真を見る限り、ダイヤモンドブラックのボディやエンジンルーム、インテリアなどは、非常にコンディションがいい状態を保っているようだ。
では、落札価格を比較してみよう。
まず190E 2.5-16エボ2はアメリカで出品され、37万9000ドル(邦貨換算約4120万円)という高額での落札となった。一方のM3は、オランダで出品されており、5万2000ユーロ(約690万円)で落札されている。
このM3の落札価格は妥当なものといえるのだが、190E 2.5-16エボ2の4000万円というのは、昨今の相場と比べてみても高すぎるプライスだ。もちろん、エボ2は500台程度の生産台数しかない希少価値というのはある。落札された個体はワンオーナーでメンテナンスもしっかりおこなわれおり、走行距離が少ないというのもポイントだ。とはいえ、数年前なら2000万円でも落札されなかった190E 2.5-16エボ2が、4000万円というのは驚きのハンマープライスだ。
これには、25年ルールによって価値が高まりつつあるアメリカで正規販売されていなかった日本車も含む『エキゾチック・スポーツカー』人気が、その背景にあるのかもしれない。つまり、投機対象としてのクルマということだ。
オークションの世界では、開催される場所によっても落札価格に差が生じてしまうものなのだ。
いずれにしても、今回の落札価格対決は、190E 2.5-16エボ2が圧勝する結果となった。M3が初期の2.3リッターではなくて、「スポーツエボリューション2」であったなら、もう少しその差は縮まっていただろう。
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