ゴージャスすぎるロールス・ロイス5選 グランピングできそうなスペシャルモデルとは
ロールス・ロイスの最新作「ボート・テイル」は、スペシャルコーチビルド部門が手がけた1点ものだが、そもそもロールス・ロイスはすべてのモデルがスペシャルコーチビルドで製作されてきた経緯がある。そこで、現代の審美眼を持ってしても溜息が出るような仕上がりのロールス・ロイスを5台紹介しよう。
ロールス・ロイスではワンオフモデルが基本だった
ロールス・ロイスのスペシャルコーチビルド車両の最新作「ボート・テイル(BoatTail)」の世界初公開に合わせて、ロールス・ロイスは生産車部門から独立したスペシャルコーチビルド部門「ロールス・ロイス・コーチビルド」の正式設立についても大々的にアピールした。
近年、自動車のハイブランドでは、ワンオフモデルに代表されるビスポークが一大ムーブメントとなっており、世界最高級車を自認するロールス・ロイスもその流れに乗ったかのように受け取られるかもしれない。しかしその見方は、まったくの誤りといわねばなるまい。
ロールス・ロイスは、チャールズ・ロールスとヘンリー・ロイスの出会いによって1904年に創業したときから、馬車時代に端を発するスペシャルコーチビルドがデフォルト。第二次世界大戦後の1949年に、初の自社製全鋼ボディを持つスタンダードサルーン「シルヴァードーン」が登場するまでは、すべてのロールス・ロイス製乗用車がスペシャルコーチビルドで製作されていたのだ。
この時代には「バーカー」や「フーパー」、「フリーストーン&ウェッブ」、「H.J.マリナー」、「ガーニー・ナッティング」など、社外の名門コーチビルダーたちが競うようにボディを架装。また1936年にR-Rの完全子会社なった「パークウォード」なども、独自のボディを製作していた。
当時のコーチビルダーは、アッシュ材の木骨でボディ用フレームを製作し、アルミないしはスティールの手叩きパネルを張り付けるという馬車時代からの技法を護っていた。これは、シャシがボディと別体だったからこそ可能な工法だった。
一方顧客たちは、サヴィル・ロウのテーラーにスーツを注文したり、パリのクチュリエにドレスを注文したりするのと同様に、自身の要望をコーチビルダーと相談しながら、ボディのデザイン・架装を委託していた。ところが、1960年代を迎えて自動車のボディがモノコック化されたことによって、ボディやインテリアだけを製造するコーチビルダーの活躍の場は大幅に減少。数多くの老舗が歴史の幕を下ろしてしまう。
そして1965年10月に初めてモノコックボディを採用した「シルヴァーシャドウ」を誕生させたロールス・ロイスでも、R-R本社でデザイン・開発したパーソナルモデル「コーニッシュ」を、H.J.マリナーとパークウォードを合併させた「マリナー・パークウォード」に製作させることになり、古き良きスペシャルコーチビルドは注文製作のリムジン「ファントムV」および後継車「ファントムVI」のみとなってしまうのだ。
しかし、今世紀に入り本拠をグッドウッドに移した新生R-Rでは、2017年にデビューした現行型ファントムを皮切りに、「カリナン」、2代目「ゴースト」にも採用した「アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー」──ロールス・ロイス各モデルに対応できるようにゼロから設計された総アルミニウム製のスペースフレームが、スペシャルコーチビルドの新たな扉を開くことになった。
このスペースフレームを活用し、フリーハンドでデザインしたのが、同じ2017年に誕生した「スウェプテイル」、そしてこのほど世界初公開された「ボート・テイル」だったのだ。
一世紀以上にもわたり、スペシャルコーチビルドの粋を追求してきたロールス・ロイスが、これまで世に繰り出してきた傑作たちから、特にアイコニックな5台をここで紹介しよう。
●40/50HP Phantom I Brougham De Ville (1926)
「THE PHANTOM OF LOVE」の愛称で知られる1926年型「40/50Hpファントム I ブロアム・ド・ヴィル」は、ロンドンに住むフランス系アメリカ人実業家で、小売業界のトップ企業「ウールワース」CEOとなったクラレンス・ウォーレン・ガスクが注文主。
ウールワースの相続人でもあるガスクの妻、モードへの贈り物として、ウェスト・ミッドランズ州ウルヴァーハンプトンの「チャールズ・クラーク&サン」社によって架装された。「愛のファントム」の愛称は、その故事によるものである。
自身のルーツであるフランスのアンティーク愛好家として知られたガスクは、ヴェルサイユ宮殿のサロンのロココ調の雰囲気を再現するようなインテリアを依頼。磨かれたサテンウッドのベニヤパネル、フランス中部オービュッソン産のタペストリー、そしてマリー・アントワネットが所有していたというセダンチェアに着想を得たルーフ天張りは、その最たる例だろう。
また、前席とリアコンパートメントを仕切るパーテーションには、真鍮に金メッキを施したフランス式のオルモル装飾の時計が取り付けられているのも注目に値する。
内装へのあくなきこだわりも、このクルマをもっとも有名なR-Rのひとつとしている重要な要因なのだ。
●17EX (1928)
ロールス・ロイスの創始者ヘンリー・ロイスは、自社のシャシに架装された一部のボディが豪奢になるあまり、その重量とサイズが車両性能に悪影響を与えていることを懸念していたという。そこでロイス卿は、オープンで軽量、非常に合理化される一方で、新しい美の構築をも目指した「40/50Hpファントム」の試作車を製作することにした。
「10EX」の名のもと、1926年委発表されたこのトルペード型スタディは、架装を「バーカー」社にアウトソーシング。空気抵抗を克服するための重要な新しい方法論を示唆し、自動車デザインの大きな飛躍を表す一連のプロトタイプの基礎となる。
そしてシリーズの5番目である「17EX」は、ウィンブルドンのコーチビルダー「ジャーヴィス&サン」の架装により1928年1月に完成した。時速90マイルを超えるスピードを可能とし、ロイスはたとえ実験車であっても彼自身の名を冠した生産車と同様の仕上げにするべきと固く信じていたため、彼が構築したR-Rの厳格な基準に合わせたブルーのペイントが施された。
現代の色彩心理学では、青は信頼性や信頼感、安定性、落ち着きを体現するものとされるという。また、ロイス卿の親友であるマルコム・キャンベル卿が、国際スピード記録に挑戦するために、同じくジャーヴィス&サンが製作した一連のクルマやボート「ブルーフレーム号」が示すように、ハイスピードで非常に際立つカラーでもある。
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