ホンダ新型「ヴェゼル」が早くもヒット! 質感も走りもお値段以上にレベルアップ!
新型ヴェゼルのガソリン車はダークホース的存在!?
新型ヴェゼルの4WDはどうでしょうか。他社のハイブリッドモデルの4WDは独立したモーターを持つ電動式が多いなか、ホンダはプロペラシャフトを用いた機械式にこだわっています。
クラストップのリア駆動力と見た目よりも高めの最低地上高さを活かした悪路走破性はもちろん、アジャイルハンドリングアシストやスタビリティと軽快感をバランスさせる最適駆動力配分などにより、オンロードではFFよりも前後バランスが良い印象。鉄壁の安定感と4輪をさらに上手に使うことによる抜群のライントレース性能には驚かされました。
4WDはFFよりも70kgから80kg重いため、発進時やワインディングなどで力不足を感じるシーンがないわけではありませんが、オンロードでも積極的に選んでもいいと思います。ひとつ残念なのは、この走りの良さがまったく伝わらない「リアルタイム4WD」というネーミングでしょうか。
新型ヴェゼルは現在9割近くのユーザーがe:HEVを選択していますが、1グレードのみの展開するガソリン車は単なる廉価仕様ではなくダークホース的存在の逸品でした。
1.5リッターエンジンは必要十分な動力性能ながらも、レッドゾーンまでスムーズに回るピュアなエンジン特性と巧みな制御でいい意味でCVTらしくないCVTとの組み合わせで絶妙のバランスを生んでいます。
パドルシフトは未装着ですが「ブレーキ操作ステップダウンシフト制御付き」で、減速時はシフトダウン、コーナリング中は横G検知でエンジン回転をキープすることが可能。制御の緻密さを含めて「これならパドルいらず」と思う仕上がりでした。
シャシ系はe:HEVより100kg近く軽量な車両重量とハイトの高い16インチタイヤの組み合わせにより、クロスオーバーSUVを感じさせない軽やかな身のこなしとスッキリした足さばきなどから、「シビック」よりもシビックらしい乗り味に感じたくらいです。
ただ、現状のガソリン車は装備が乏しいので、装備を充実させたグレードもしくは特別仕様車などが用意されると選びやすくなると思いました。
ちなみにガソリン車にも4WDが設定されていますが、走りの部分では安定性の高さやバンドリングバランスの良さを感じるものの、FFと比べて100kgの重量増で非力さが否めないパワートレイン、軽快さが削がれたクルマの動きなど、「e:HEV×4WD」ほど積極的に選びたくなるかというと少々悩ましいところです。
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大成功したモデルのフルモデルチェンジは非常に難しいです。ここ最近のホンダ車を振り返ると「熟成方向」「キープコンセプト」のモデルが多いように感じましたが、新型ヴェゼルは半分キープコンセプト、半分コンセプトチェンジのように感じました。
開発責任者の岡部宏二郎氏は初代ヴェゼルの開発を担当、その後のマイナーチェンジを担当してきた「Mr.ヴェゼル」といってもいい方です。
初代の良し悪しを知っているからこそ、「継承と刷新」のバランスが取れたフルモデルチェンジができたのでしょう。そう、新型ヴェゼルには2代目のジンクスはなさそうです。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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