スポーツ走行に不向き!? 走り好きにはなぜか人気のない「CVT」のメリット・デメリットとは

不評だった「ラバーバンドフィール」もいまや改善されている

 しかし、CVTにも弱点があった。それは伝えるパワーに限界があり、中型車や大型車への搭載が難しかったのだ。

 それをクリアすべく、日産は1999年に「エクストロイドCVT」を投入。これはベルトの代わりにローラーとディスクを使ったもので、セドリック/グロリアという大型車に世界初採用された。しかし、価格の高さなどもあって、普及することはなかった。

 一方スバルは、2009年に金属チェーンを使ったリニアトロニックを開発する。大パワーに対応するCVTを世に送り出したのだ。ちなみにアウディもDセグメントの「A4」のFFモデルに、マルチトロニックという名称の金属チェーン式のCVTを採用していた。

日産が1999年にセドリック/グロリアに採用した「エクストロイドCVT」
日産が1999年にセドリック/グロリアに採用した「エクストロイドCVT」

 かつては小型車専用であったCVTだが、金属チェーン式の登場で大型モデルにも使えるようになった。ここ数年でいえば、全日本ラリー選手権にスポーツ性能に振り切ったプロトタイプのCVTが投入され、好成績をおさめている。燃費性能だけでなくパワー伝達の面でも優れているのだ。

 しかし、CVTの普及は限定的だ。欧米ブランドの採用はとくに少ない。また、日本国内でもスポーツ派を自称するユーザーへの評判もよろしくない。

 では、CVTの不評はどのようなものなのか。その代表格が「ラバーバンド・フィール」だ。つまり、「ゴムのベルトを介したようなルーズさ」だ。具体的にいえば、アクセル操作とエンジン回転数、車速がピタリと一致しないことを指す。

 実際のところ、CVTをもっとも効率良く使おうとすると、どうしてもアクセル操作とエンジン回転数、そして車速は、固定ギアのMTやステップATとは異なるものになる。

 最初に、もっとも効率の良いエンジン回転数まで上昇させ、その後に加速。さらに車速一定のままエンジン回転数をダウン。もしくはエンジン回転数を一定のまま加速。そうしたCVT独特の変速がおこなわれる。とくにパワーのない小排気量のエンジンで燃費性能を高めようとすると、この独特さが強調されることになる。

 そこでスポーティに走りたいときだけ、ステップATと同じように変速比を固定化するという対策が取られているモデルもある。これは自在に変速比を変化させることのできるCVTだからこそ、できる技だ。

 効率は少々悪化するが、ドライバーに嫌われるよりはましということ。実際にリニアトロニック搭載のスバル車は、ステップAT大好きのアメリカで大人気となっている。

 また、日本市場においてもCVTのフィーリング改善は進んでいる。

スポーツモデル「GRヤリス」にも、RSというダイレクトシフトCVTを採用するグレードがある
スポーツモデル「GRヤリス」にも、RSというダイレクトシフトCVTを採用するグレードがある

 重要なのは、アクセル操作と加速感の一致だろう。これまでは効率が優先で、フィーリング面が後回しになっていた。しかし最近では、燃費競争も一段落したこともあり、どの自動車メーカーもCVTのフィーリング改善に力を入れている。

「変速の段付き感がなくてイヤ」という意見もあるが、アクセル操作に対するダイレクトな加速感があれば、そうした不満も解消されるはずだ。実際に、ギアのないEVに対して「変速の段付き感がなくてイヤ」という声を聴いたことはない。それはEVの加速感が非常にダイレクトだからだ。

 燃費とパワーの両立を狙ってCVTを開発したのが第一段階。それを小型車から大型車にまで拡大したのが第二段階。そして、フィーリングを改善する第三段階。現在は、その第三段階に突入しているといえるだろう。

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5件のコメント

  1. CVT急ブレーキで止まると、発進の時にもたつくんだよなぁ。
    理論的にはプーリーとベルトの関係でこうなるのは分かっているが、好かないと言うか回復するまでの方法がイマイチないみたいなんだよな。
    まぁ単にトロトロ走ればいいだけだし10秒とかからないが、もたついているからめんどくさい。

  2. 初代フィットの1300に乗った時はCVT悪くないな〜?と思ったもんだけどね。
    エンジンの美味しいところと言ったとこで、そんなエンジンが国産にあるのかね?

  3. スポーツ走行に限定してCVTのデメリットと言えば
    プーリーで挟んでベルトを回す構造上の摩擦熱による油温上昇による悪影響が
    他の変速機より大きい事に尽きるかな。

    大元のメリット&デメリットで言えば、
    無段階にシームレスな変速コントロール出来てエンジンの効率良い域内での制御をしやすいが、
    その分効率制御を優先し過ぎるとアクセル操作との乖離感を伴い
    自身で運転しているという気持ち良さを得られない事。
    無段階なのはよくともきめ細かい変速制御すればするほどプーリー可変時の駆動伝達効率が落ちる為、
    必ずしも燃費に良いとは言えない点もある
    変速のレシオカバレッジ(ローからハイまでの変速比幅)がプーリー径に影響する為、
    ミッションケースサイズの制約的にレシオカバレッジに限界がある。
    その為、近年は中~大型車向けには
    よりレシオカバレッジ拡大や駆動伝達効率を意識した多段速AT化が進んでいるので、
    電動化の流れもありCVTは国外ではもうオワコンと見られてるかも知れませんね。

  4. 実際にリニアトロニック搭載のスバル車は、ステップAT大好きのアメリカで大人気
    と書いてるけど、
    スバル車自体のアメリカでの人気や評価は高いけど、
    あまりリニアトロニック自体は良い評価はされていないですね、
    そこテストに出ますから間違えないように

    • はいはいw

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