一般道で後席シートベルト非着用は約6割!? 罰則がなくても必ず着用すべき理由
衝突実験でわかる、着用/非着用における衝撃の違い
後部座席の乗員がシートベルト非着用の状態でクルマが衝突した場合、どれくらいの衝撃があるのでしょうか。
JAFが2017年に実施した「後部座席でのシートベルト着用の有無による衝突実験」の結果で比べてみましょう。
この実験は、前席と後席に2体ずつのダミー人形を乗せたクルマを時速55kmで前面から障壁に衝突させる「フルラップ前面衝突実験」で、運転席側の後席をシートベルト非着用として、衝突時のダミー人形の挙動と頭部障害基準値を計測したものです。
ここで用いられる評価基準が、衝突や落下などの衝撃による脳や頭蓋骨への損傷程度を表す「HIC値(頭部障害基準値)」。
一般的にHIC値が1000を超えると頭部に重大な損傷が発生する可能性があるといわれ、2000を超えると重傷や死亡に至るほどの致命的な頭部損傷を負う可能性があるとされています。
衝突実験の結果、シートベルト非着用で後席にいたダミーは前方に投げ出され、運転席のヘッドレストに頭部を打ちつけて運転席のダミーを押しつぶしてしまいました。運転席のダミーは後方から押しつぶされ、作動したエアバッグとの間に挟まれるという結果になっています。
この衝突時の後席に置いたダミーのHIC値は驚愕の2192。良くて重傷、当たりどころによっては死亡してもおかしくない数値を記録しています。
また押しつぶされた運転席のダミーが受けたHIC値は1171。こちらも頭部に重大なダメージが残るほどの衝撃を記録しました。
その一方で、助手席と助手席側の後席はシートベルトによって衝撃時も体が投げ出されずに済んだと報告されています。
以上の結果を踏まえると、事故発生時に後席でシートベルト非着用状態の乗員がいた場合、本人が重大な損傷を負うだけでなく、運転手などほかの乗員にも二次的被害を与える危険性があるということになります。
一般道でも幹線道路などの制限速度は時速50kmや60kmに設定されているところもあり、前方不注意などでノーブレーキのまま前車に突っ込んでしまったら、大きな事故になる可能性があります。
しかしシートベルト非着用時の衝撃の大きさを考えると、一般道においても後席もシートベルト着用を徹底したほうが良いでしょう。
それでも、後席のシートベルト着用を嫌がる人はいるものです。たとえば子供や高齢者のなかには、シートベルトの締め付けをきつく感じたり、体格によってはシートベルトの位置が合わなかったりする人もいるでしょう。
乳児や幼児などはチャイルドシートを使用しますが、チャイルドシートは卒業したけれど大人ほどのサイズはない、いわゆる「児童」と呼ばれる子供は、体格不適合によってシートベルトのミスユース(正しく着用していない状態)が38.9%もいるというデータがあります。
そんなときには、シートベルトの位置を変更できるアイテムを利用するのがお勧めです。最近人気なのが、両側にクリップがついた補助用ベルト。補助ベルトのクリップでシートベルト数か所を留めて角度を変えることで、子供のサイズに適合させるタイプのものがあります。
また、シートベルトの上から装着する補助パッド自体に角度を変える効果があるものもあり、食い込みを抑える商品が販売されています。
ただし注意したいのが、シートベルトを伸ばしクリップで留めることでテンションを緩めるタイプです。
現在、ほとんどのクルマには「シートベルトプリテンショナー」が装着されています。これは衝撃を受けたときに瞬時にシートベルトを巻き取ってシートに体を拘束させる機構なのですが、テンションを緩めるクリップを使うとシートベルトプリテンショナーが正常に作動しない可能性も考えられます。
このようなアイテムを使用する場合、安全性や作動性をクリアしたものを選ぶようにしましょう。
※ ※ ※
一般道では後部座席のシートベルト非着用でも違反とはならないとはいえ、最大限の対策として全席シートベルト着用を徹底することが大切です。
また、シートベルトができない事情がある人を除き、後部座席の人にも着用を促すのもドライバーのマナーとなりそうです。
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