OPEL導入も間近! プジョー・シトロエン・DSを扱う「グループPSAジャパン」木村社長に聞く今後の展望とは

レクサスの立ち上げやボルボ・カー・ジャパンの元代表など、様々なメーカーで活躍した経歴を持つ木村隆之氏がグループPSAジャパンの代表取締役社長に就任して早4か月が経ちました。現在の心境や、グループPSAジャパンの今後の方向性についてお話を伺いました。

魅力ある新型車を次々と投入しているプジョー・シトロエン・DS

 プジョーやシトロエン、DSなどのフランス勢に加えて、近い将来オペルも輸入することが決定しているグループPSAジャパンの代表取締役社長として、2021年1月に木村隆之氏が就任しました。

グループPSAジャパン 代表取締役社長の木村隆之氏
グループPSAジャパン 代表取締役社長の木村隆之氏

 木村氏はボルボ・カー・ジャパン代表の時代に、ボルボのサブスクリプション「SMAVO(スマボ)」をはじめ様々な販売施策を講じ、大幅に台数を伸ばした功績があります。

 それ以前ではレクサスの立ち上げなどをはじめ様々なメーカーで活躍した経歴を持つ木村氏に、現在の心境や、グループPSAジャパンの今後の方向性についてお話を伺いました。

■フランス車の出来の良さに驚いた

Q:グループPSAジャパンの社長に就任なさったのが2021年の1月ですから、2021年5月でおよそ4か月経ちました。この4か月間でどのような印象をお持ちですか。

グループPSAジャパン代表取締役社長の木村隆之氏(以下敬称略):正直にいって実はこれまであまりフランス車には乗ったことがなかったのですが、改めて触れてみてクルマの出来が凄く良いなと驚きました。デザインが良いのは昔から知っていましたが、とくに最近ではプジョーのデザインは3008も5008も顔が変わり、ブランドとしての顔がちゃんと出来てきていますね。

Q:木村さんはこれまで様々な会社を経験なさっていますが、以前の職場と比べて、グループPSAジャパンはどのような印象ですか。

木村:ここは人数が少ないですし、リーンでよく働く人が多いなという印象ですね。ある程度ひとりひとりが必死で働かないと回らないなと思いました。役員会をやるとフランス人も何人かいますし、インド系アメリカ人もいたり、オペルもやる関係でドイツ人もいます。非常にダイバーシティなチームでもありますね。

 ボルボも割と“リーン”な方でしたが、グループPSAジャパンは商品のバリエーションも多いですし、なによりもブランドを分けていますので、それぞれで管理をしなければいけないので大変です。ボルボよりもやはり手がかかりますし、人がたくさんいないとまわらないはずなんです。

 グループPSAジャパンの認証部隊は4、5人いるのですが、ボルボではふたり。商品企画関連も3人、4人ですがボルボはふたり。それを考えるとボルボは1割がた人数は少ないのですが、仕事は何割か多いでしょうね、本当に素晴らしいと思います。

■プジョーはそのまま、シトロエンとDSはより訴求を

Q:これからプジョー、シトロエン、DS、オペルと4ブランドを扱うわけですが、それぞれのポジショニングはどのようにお考えでしょうか。

木村:プジョーは、ものすごくユニークな位置にいます。これは入社前からデータを持って知っていたので、とくに大きく変えるつもりはありません。こんなに数が売れるポジションでありながら、日本車とも競合出来るような価格帯のクルマを持っているというユニークなブランドはなかなかありませんので、そこは変えずに、もっともっと強化しようと単純に思っています。

 例えばブランドイメージについて。ドイツのブランド車はスポーティさとか、格好良いというところで大きく差をつけて評価が高いのですが、一方のプジョーはほかの量販ブランドと比較してもイメージでトップになる項目がすごく多いんですね。それはやはりプジョーらしい良いところだと思っています。

 一方、若干問題があるのはシトロエンです。競合のフランスメーカーと比較すると、それらとかなり近いイメージを持たれていて驚きました。自分としてはシトロエンの方が尖っていると思っていたのですが、イメージワードで一番になるものがシトロエンの方が少ないんです。

 そこで、もう少し新しいイメージでシトロエンブランドをしっかりと訴求しなければいけないなと思いますし、なによりファミリー的というイメージが競合よりも弱いことも気になります。シトロエンはやはりファミリー向けで、ミニバンのベルランゴが出て非常に明確になりましたので、よりファミリーに強いブランドとして、もう少しイメージを伝えていかなければいけません。

 ではDSはどうかといえば、これは認知度だけが問題ですね。イメージワードで1位になっているのはエレガントなどです。オーナーの購入理由としてもそこが挙がりますし、レアだとか希少性とかも入って来ます。DSのクルマは本当に良くて、プレミアムカーとして十分に通用します。

 量販ブランドが小手先だけで作ったクルマかと思っていたのですが、実はかなり良いクルマなのです。希少性に関しても、いまの10倍売れても十分希少性はあります(笑)。ということで5月の連休明けに初めてテレビCFを放映します。もう少し力を入れて訴求しないとせっかく良いクルマなのでもったいないと考えています。

 次にユーザー層のお話をしましょう。我々の3ブランドの平均年齢はいずれでも48歳ぐらいで、50歳を切っているんです。いまやジャーマン3やボルボ、フォルクスワーゲンまでも50歳を超えていて、52~54歳ぐらいなのに、です。

 そして、プジョーユーザーの平均年収は1200万円。シトロエンは1000万円。DSにいたっては、47歳で1450万円です。例えばドイツのプレミアムブランドと比較すると5歳若くて年収レベルは全然変わらないくらいのお客様層なのです。

Q:なるほど、とても良いユーザー層なのですね。では、今後としてはシトロエンとDSに注力していく方向性ですか。

木村:もちろん全ブランドに注力はしていきます。数的にはプジョーが一番見込めますし、まだまだ伸ばせると思っています。シトロエンもベルランゴという強い武器が出来ましたので、これとC3の両輪でまだまだいけるんじゃないかなと思います。

 何とかしたいのがDSです。本社からはあまり販売台数は求められていないのですが、もう少し知っていただいてもいいのではないかなと。エルメスの鞄を持って、カルティエの時計をして、シャネルの宝石をしているのに、どうしてクルマだけドイツ車なのでしょうね。ほとんどの富裕層がそうでしょう。

 そうしたカスタマー層の5%でいいので「フランスの高級車もあるわね」となれば、すごく良いと思うんですけれどね。そこを目指していきたいと思っています。

■オペルではGerman but Coolを打ち出す

Q:ではオペルはどうでしょう。

木村:来ましたね(笑)。オペルは結構期待しています。よくいう例えなのですが、我々はやはりクルマ屋ですので、プラットフォームは何かと気にします。プジョー3008、DS7クロスバック、シトロエンC5エアクロスSUVは実は同じプラットフォームです。

 しかし、私もそうですけれど、普通の人が乗ったら、全然違うクルマだと思いますよ。そのくらいブランドごとにキャラクターを立てた作りわけが上手いのです。その性能の良いプラットフォームに、今回日本に導入するオペル・グランドランドXはオペルがチューニングしますし、デザインもそれぞれ個性があります。

 いま、ドイツ勢はジャーマン3とフォルクスワーゲンですから、ちょっとかっこいいジャーマンみたいなイメージでいけるのではないかと思っています。プジョーユーザーの平均は48歳で年収1200万円ですので、例えばプジョーよりも5歳若くて43歳ぐらいで、当然年収も少し下がって、900万円とか1000万円くらいの層が振り向いてくれないかなと想定しています。

Q:オペルは輸入が途絶えてから十数年経ちますので、若い人たちにはイメージそのものがないでしょう。そこにどのように伝えていく戦略なのですか。

木村:なかなか難しいところはありますし、まだ明確な戦略は出来ていませんが、ジャーマンは打ち出していかないといけないでしょう。ただし、日本人の一般的なドイツ車のイメージは、高級車かフォルクスワーゲンと幅が狭いのです。

 オペルのような、こういうジャーマンもあるんだよという戦略になるのではないでしょうか。ジャーマンの幅を広げるみたいなイメージですね。こんなのもジャーマンブランドであるんだという感じで、全くオペルなんて知らない人にも認められるように、ある程度引っかかってくれるようにしなければいけないですね。

Q:ジャーマンだけ遊び心があまり伝わらないですよね。

広報:新しいオペルのブランドブックが内々の資料であるのですが、“ジャーマンのイメージは四角四面だがオペルは違う”ということを伝えています。

木村:German but Coolですね。

広報:ちょっとポップで、ちょっとクールで、ややフレンドリーなドイツ車。ダークスーツでビシッと決めるのではない、とっつきやすいジャーマンブランドです。

Q:他のPSAブランドとの関連性は見せていくのですか。

木村:それはあまり見せる必要はないんじゃないでしょうか。エンドユーザーにとって、乗って走って受ける印象が全然違うのであればプラットフォームは何でもいいでしょうし、あまり関係はないでしょう。ただし、ショールームの展開としては隣にシトロエンなどがあったりしますので、クロスショッピングする人は出て来るでしょうね。

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