クルマのシートアレンジ必要? 姿消した回転座席 背もたれ可倒式だけではもの足りない?

新たに提案されたものの普及しなかったシートアレンジは

 また、ここ10年ほどで新たに提案されつつ、普及が進まなかったものも存在。それは助手席のロングスライドです。

 2015年にデビューしたトヨタ「アルファード/ヴェルファイア」の一部仕様に組み込まれ、2017年にはホンダの軽自動車「N-BOX」にも採用されたこの機能は、それぞれ最大1160mm、570mmもスライドしてシートアレンジの幅を広げるのが自慢です。

ホンダ「N-BOX」。
ホンダ「N-BOX」。

 しかし、どちらも人気アイテムとはなりませんでした。「使うシーンをイメージしにくい」「使う頻度が少ないうえに、なくても不自由するようなものではない」「車両価格がアップする」などが理由と考えられます。実際に、メリットを実感できる頻度は多くないでしょう。

 こうして普及したシートアレンジと、消えたシートアレンジや提案されながらも普及しなかったシートアレンジを比べてみて、明暗が分かれるポイントはどこでしょう。

 それは「使うシーンがピンとくるか否か」「あると便利かどうか」そして「価格がアップするか」ではないでしょうか。

 消えていった回転シートは、カタログを賑やかせるには最適ですが、実際に使う人は少なかったようです。また助手席ロングスライドは、実際に使うシーンやメリットをイメージしにくいところ。

 一方セダンの可倒式リアシートやミニバンのリムジンアレンジなど定番化したものは、「日常的に使うもの」もしくは「“あれば大いに役立ちそう”というイメージが抱ける」と判断できそうです。さらにオプション装備ではないので価格アップなども感じません。

 この記事のタイトルにある「背もたれ可倒式だけでは物足りない?」との質問には、迷うことなく「はい」と答えることになるでしょう。

 市場は(定番化するかどうかは別として)新しいものを求めています。また、自動車メーカーはライバルとの差別化を図る手段として新しいシートアレンジを提案してくるでしょう。

 しかし、新たに生まれたシートアレンジがしっかり市場に残るかといえば、必ずしもそうとは限りません。

 残るには「使う状況をイメージできる」「価格アップがない(感じないほど僅か)」「買ったら実際に使う」などの条件を満たす必要があるといえそうです。

【画像】多彩なクルマの座席(7枚)

【2024年最新】自動車保険満足度ランキングを見る

画像ギャラリー

Writer: 工藤貴宏

1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。

1 2

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす

【NEW】自動車カタログでスペック情報を見る!

最新記事

コメント

本コメント欄は、記事に対して個々人の意見や考えを述べたり、ユーザー同士での健全な意見交換を目的としております。マナーや法令・プライバシーに配慮をしコメントするようにお願いいたします。 なお、不適切な内容や表現であると判断した投稿は削除する場合がございます。

メーカーからクルマをさがす

国産自動車メーカー

輸入自動車メーカー