タイガーマスクの愛車はランボルギーニ? それともジャガー? 長年の疑問が解決

タイガーマスクの愛車として作品内に登場するクルマは、ランボルギーニ「エスパーダ」なのか、それともジャガー「ピラーナ」なのか。その疑問に「マルツァル」の開発ストーリーも交えて答える。

夢のクルマとしてワンオフされた「ピラーナ」

 VAGUEのランボルギーニ「エスパーダ」のオークションレビューにて、「タイガーマスクの愛車に激似!!」というタイトルおよび、実はタイガーマスクの愛車が別のクルマであることを記した一節が、予想外に大きな反響となった。

『タイガーマスク』」は、原作:梶原一騎/作画:辻なおきのコンビによって描かれ、1967年から月刊『ぼくら』および週刊『ぼくらマガジン(のちの少年マガジン)』に連載されて大ヒットした少年マンガ。さらに1969年からはTVアニメーション化され、この時代の子供たちを大いに沸かせた。

 そしてこのアニメ版において、タイガーマスクの正体である「伊達直人」が、孤児だった彼自身が育てられた児童養護施設「ちびっこハウス」に「キザ兄ちゃん」として訪れる際に乗ってゆく豪奢なスポーツカーは、長らくランボルギーニ・エスパーダと信じられていた。

 しかし近年では、同じベルトーネ+ガンディーニがジャガー「Eタイプ」をベースに製作したコンセプトカー「ピラーナ」であるというのが新たな定説となっているようだ。

 そこで、2021年に60周年を迎えた名車ジャガーEタイプを祝うスピンオフ企画としての意味合いも込めて、ジャガー・ピラーナとランボルギーニ・エスパーダの相関関係を、今いちどひも解いてみることにしよう。

●新聞記者たちの夢からスタートしたピラーナ

ジャガー「ピラーナ」はワンオフの習作である(C)2019 Courtesy of RM Sotheby's
ジャガー「ピラーナ」はワンオフの習作である(C)2019 Courtesy of RM Sotheby's

 カロッツェリア・ベルトーネのワンオフ・コンセプトカー、ジャガー・ピラーナが誕生に至るいきさつについては、近年になって英国の自動車専門誌「OCTANE」が実に興味深いエピソードを掲載していた。

 その記事によると、ピラーナにまつわるストーリーは1967年の某日、イギリスのタブロイド日刊紙「デイリー・テレグラフ」の自動車ページ担当記者たちによっておこなわれた、「夢のクルマ」をテーマとする非公式のミーティングに端を発したそうである。

 その結論として「速くて機敏ながら快適、そしてスタイリッシュ」というのが夢のクルマの条件となったとされるが、話はそれだけでは終わらなかった。

 この時期、セレブや英国王室のゴシップなどで人気最高潮にあったデイリー・テレグラフ紙の首脳陣は、同じく当時のカリスマ的人気車であるジャガーEタイプをベースとして、記者たちに夢のクルマを創らせることを許可したというのだ。

 さっそくデイリー・テレグラフ紙はジャガーの創業者であるウィリアム・ライオンズ卿にコンタクトをとり、Eタイプ2+2のメカニカルコンポーネンツとボディシェルを入手する手はずを整える。その一方でボディのデザインとコーチワークについては、イタリア・トリノのカロッツェリア「ベルトーネ」に委ねることになった。

 これらの契約は1967年4月に締結され、ワールドプレミアの舞台は半年後の10月に開催される「ロンドン・モーターショー」にするというスケジュールも決定する。

 こうして、デイリー・テレグラフ発信のワンオフ・コンセプトカーの開発がスタートした。ジャガー・カーズから購入したエンジンは、265psを発揮する4.2リッターの「XK」直列6気筒DOHCユニット。当時オプション設定のあった、ボルグ・ワーナー社製3速オートマティック変速機が組み合わされていた。

 ボディデザインを担当したのは、当時のベルトーネのチーフスタイリスト、のちに巨匠と称されることになるマルチェッロ・ガンディーニである。ランボルギーニ・ミウラで才能の萌芽を見せていた彼は、ジャガーらしいロングノーズに大きなキャビンを巧みに融合させ、実にスタイリッシュなボディラインを構築してみせた。

 そして「ベルトーネ・ジャガー・ピラーナ」の名を与えられて、予定どおり1967年のロンドン・モーターショーに出品される。その反響は極めて大きく、遠く離れた日本でも精巧なプラモデルやミニカーが発売されるほどだった。

 そこで、機を見るに敏なデイリー・テレグラフおよびヌッチオ・ベルトーネは、ジャガーのライオンズ卿に限定生産を持ちかけたが、あえなく却下される。ピラーナは生来の目的のまま、ワンオフ習作に終わってしまったのであった。

 ちなみにこのピラーナは、RMサザビーズが開催した2019年のオークションにて、32万4000ドル(邦貨換算約3500万円)で落札されている。

 一方ランボルギーニ・エスパーダは1968年に正式デビューを果たすが、当然ながらピラーナがそのままエスパーダになったわけでない。エスパーダの誕生には「キー」となるガンディーニのデザイン+ベルトーネの製作によるコンセプトカーがもう一台存在したのである。

 それがランボルギーニ「マルツァル」である。

【画像】「ピラーナ」から「マルツァル」「エスパーダ」まで、デザインの系譜がよく分かる!(42枚)

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コメント

1件のコメント

  1. スーパーカー世代ですが、マルツァルの量産型がエスパーダという程度の認識で、ピラーナは知りませんでした。なるほどそうでしたか。
    あと、タイガーマスクの制作側がピラーナを選んだのは、タイガーに近い「ジャガー」という事もあったのかもしれませんね。
    また色々と掘り下げた記事を楽しみにしてますね。