走行距離3000キロ未満の初代エリーゼが出た! どんなクルマだったか歴史を振り返る
パワーよりも軽さこそ正義、はスポーツカーの常識
出品車は最高出力がわずか118psの、いわばスタンダードの「111」と呼ばれるモデルだ。この初代エリーゼが搭載するローバー製の1.8リッター直列4気筒DOHCエンジンは、年を重ねる度にパワー・アップしている。
1998年11月には135ps仕様の「スポーツ135」が85台造られ、1999年1月には可変バルブタイミング機構を備え143psを発揮する「111s」が登場。そして2000年2月には160ps仕様の「スポーツ160」が50台造られている。
もし、同じような走行距離のこうしたハイパワー仕様がオークションに登場したら、さらに貴重で価格が高騰するかといえば、そうとはいい切れない。なぜなら、この出品車の時代のエリーゼは、700kgを下回る車両重量を実現するため、徹底した軽量化が施されているからだ。
それを象徴する部品がアルミ製のブレーキ・ローターで、量産車としては初の採用だった。ただしノイズが出やすく、提供するサプライヤーが倒産したため1998年1月以降は一般的なスティール製のブレーキ・システムへと変更されてしまった。
初期のエリーゼ特有の、恐ろしく軽快な走りをもたらすこのキー・パーツは、後年のハイパワー仕様のエリーゼには付いていないのである。
●英国生産で純正オプションを装備
写真からは判別できないが、おそらくこの時代のアルミ・バスタブに用いられている接着剤は、現在の鮮やかなオレンジのものとは異なり、薄いグリーンのはずである。
いっぽう、ごく初期のエリーゼの特長のエンジン・フードのステーを兼ねるトランク・カバーは写真でしっかり確認できる。そのほか内外装は基本的には新車当時のままだが、クリアのヘッドライト・カバーや着脱式のモモ製ステアリング・ホイール、アルミ製のドア・レギュレータ・ハンドルなどは、当時のロータスおよびロータス・スポーツ・ディヴィジョンの純正オプション品のようだ(ステアリングのみ、若干リムのデザインが異なるようだが……)。
左右ドア・ガラスの上部と中央部の骨の上に被さる、まるで傘のような構造の薄いソフト・トップの状態も素晴らしい。初代エリーゼには1DINサイズのオーディオも装着できるようになっていたが、この車両は未装着である。そのため空調調整スイッチ(ヒーターのみでエアコンはオプション)サイドのパネルが横に長いタイプになっている。
エンジン・フード上部のアンテナも未装着だ。走るために必要なものはあるが、余計なものは一切ない、シンプルさが際立った仕様ともいえる。
なお、初代エリーゼはロータスがブガッティ傘下からプロトン傘下となった後に、数年ほどマレーシアのシャー・アラム工場での組み立てもおこなわれていたが、出品車は英国ノーウィッチのロータスの本拠地、ヘセル工場製である。
マレーシア生産のエリーゼは、お国柄かクーラーのみを装着し、なんとヒーター・レスという仕様で、日本へもわずかな台数が輸入されている。
このまるで新車のような初代エリーゼに、RMサザビーズは3万−3万5000ポンド(邦貨換算約450−525万円)のエスティメイト(推定落札価格)を設定している。内容を考えれば決して高いとはいえない値付けだが、はたしてどんな評価が下されるのか。注目のオークションになりそうである。
コメント
本コメント欄は、記事に対して個々人の意見や考えを述べたり、ユーザー同士での健全な意見交換を目的としております。マナーや法令・プライバシーに配慮をしコメントするようにお願いいたします。 なお、不適切な内容や表現であると判断した投稿は削除する場合がございます。