走行距離3000キロ未満の初代エリーゼが出た! どんなクルマだったか歴史を振り返る

1990年代のオープン2シーター復興ブーム時代、ライトウェイトで硬派なスポーツカーとして登場したロータス「エリーゼ」。その初期モデルは今後注目されるクルマになるのだろうか。

奇跡の新車同然のロータス「エリーゼ」

 1996年の登場以来、四半世紀の間、ほとんど基本構造を変えないまま進化を続けてきたロータス「エリーゼ」が、ついに生産を終えた。そのすべての基本となった初代モデルは、往年のロータス「ヨーロッパ」を思わせる愛らしい顔つきと、とびきりシンプルかつ軽量な仕立てで愛好家から高く評価されている。では生産終了を受け、オークション・マーケットでの評価は今後変化していくのだろうか?

●絶版のエリーゼは高騰するのか?

生産終了したロータス「エリーゼ」のごく初期モデルの新車同然コンディションの個体がオークションに出品された(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's
生産終了したロータス「エリーゼ」のごく初期モデルの新車同然コンディションの個体がオークションに出品された(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

 ロータスが「エキシージ」、「エヴォーラ」と共に、エリーゼの生産を終了するとアナウンスして以降、日本国内のユーズドカー市場におけるエリーゼは、高年式の低走行車を中心に、若干値上がり傾向となっているようだ。

 以前よりも“応談”の値札がついた販売車両も、何台か見かけるようになった。とはいえ、一時のフェラーリやポルシェを中心とするクラシックカー/コレクターズカーのような、急激な高騰はしていない。

 世界に目を向けてもそれは同じだ。RMサザビーズのこれまでの取引の傾向から見ても、F1マシンのような特別なものを除き、基本的にクラシック・ロータスは大きくプライスを上げてはいない。

 イギリスというお国柄ゆえ、専門店は多く、パーツの再生産や供給のルートも確保されているため、むしろ比較的安定しているといっていい(ただ、2021年夏に正式発表となる「タイプ131」がどんなモデルになるかで、状況は変わる可能性もある。ロータスはアルピーヌとの共同開発を発表したが、アルピーヌ側は今後はEVのみになると明言。はたしてタイプ131はEVだけになるのか、それとも内燃機関を搭載するのだろうか……)。

●走行わずか3000kmの1997年型エリーゼ

 しかし、ある意味今後のクラシック・ロータスの値動きの試金石となるであろう車両が、RMサザビーズに出品された。1997年型のロータス・エリーゼである。

 初代エリーゼは1995年のフランクフルト・モーターショーでデビューし、翌1996年6月から生産を開始。2000年11月にフェーズ2に切り替わるまでの約4年間生産されたが、出品車両はそのごく初期の、1997年2月−9月の生産車両であることが、シャシ・ナンバーから分かる。資料から変遷を辿ると、スターター・モーターのアップデートおよび、エンジン・マネジメント・フューズのリコール対策後のモデルのようだ。

 外装色はレーシング・グリーン・メタリックと比較的タマ数が多いカラーだが、マグノリアという明るいベージュの内装はなかなか珍しい。汚れやすい色だが、シートはもちろん、乗降時に足を引っかけがちで汚れやすい高いサイドシルを覆うトリムも、とても美しい状態を保っている。

 それもそのはず。なんとこの1997年型のエリーゼ、約24年間でわずか1739マイル(約2800km)しか走っていない! 4人のオーナーによって大切に大切に受け継がれてきた、ある意味四半世紀近く前からタイムマシンに乗ってきたような1台なのである。

 最初のオーナーはロブズ・ランプロウ氏で、購入時の書類をはじめ、過去のメンテナンスの履歴も完備している。装着しているタイヤ、ピレリPゼロはおそらく新車時のままだろうが、直近では2020年6月に50年の歴史を誇る英ロータス販売店のベル&コルヴィルにて整備を受けている。

 ここは老舗のディーラーである一方で、チューニングの世界でも名を馳せており、初代エリーゼを販売していた当時、同社のデモカーには某誌の取材であの佐藤琢磨選手が試乗し、完成度の高さに驚いていた。

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