激熱ヤケド注意!! ルノー・スポール渾身の「スピダー」と「クリオV6」とは
ルノーのレーシング部門であるルノー・スポールが手がけた、初期のストイックなまでのスポーツカー2台のヒストリーを紹介する。
見た目もスペックもレーシングカー然とした「スピダー」
2021年シーズンより、従来のFIA世界耐久選手権に加えてF1GPでも「アルピーヌ」ブランドへと移行した仏ルノーのレーシング部門だが、1977年に世界初のターボチャージャー付マシンとともにF1GPに参戦して以来、その責務を長らく担ってきたのは「ルノー・スポール(Renault Sport)」であった。
また前世紀末以降のルノー・スポールは、ルノーの高性能モデルを開発・生産するブランドとしても展開され、最新の「メガーヌRS」に至る名作の数々を送り出してきた。
今回VAGUEでは、ルノー・スポールがブランドとして自動車界に参入した初期の作品として、英国「シルバーストーン・オークション」社がさる3月下旬に開催したオンライン限定オークション「The Race Retro Live Online Auction 2021」に出品した2台のあらましと、オークション結果についてレポートしよう。
●1997 ルノー・スポール「スピダー」
仏ルノーは、1960年代に「R8ゴルディーニ」を供用して開幕させた「クープ・ナシオナル・ルノー・ゴルディーニ(通称ゴルディーニ・カップ)」以来、現代に至るまで、若手レーシングドライバーの登竜門となるワンメイクレースを熱心におこなってきたことで知られる。
使用されるマシンは、常にその時々のルノーでもっともホットなスポーツモデル。そのなかでもとくにユニークな車両のひとつが、「ルノー・スポール・スピダー」だろう。
スピダーは、長らくF1GPでも活躍してきたルノーのモータースポーツ部門「ルノー・スポール」が送り出した初の市販モデルとしても知られる伝説のミッドシップ・スーパースポーツである。もともとワンメイクレース「スピダー・トロフィー」用に開発されたが、1995年に発表された翌年から、ロードカーの市販もおこなわれた。
この生産はかつてアルピーヌの本拠であったディエップでおこなわれたことから、事実上のアルピーヌ後継車といっても過言ではあるまい。
パワートレインは、当時の「メガーヌ16V」に積まれた2000cc直列4気筒DOHC16バルブを、駆動系とともに横置きミッドシップに搭載したもの。シャシは角断面のアルミ押し出し材を溶接で組み上げたスペースフレームで、前後ダブルウイッシュボーン式のサスペンションはフォーミュラマシンさながらのプッシュロッド方式を採用するなど、本格的な作りを身上とした。
ボディはFRP製で、サイドウィンドウやソフトトップを持たない純粋なロードスターとなる。ドアは、斜め上に跳ね上がるシザースタイプとされた。
1996年に発売されたロードバージョンには「ソットヴァン」と「パラブリーズ」というふたつのバージョンが設定。後者のパラブリーズには大型のウインドスクリーンが与えられるが、他方ソットヴァンはウインドシールドさえ持たず、コクピット直前に「エアロスクリーン」と呼ばれるディフレクターを装着。これがスピダーのアイコンとなった。
発表の際にルノーがプレス向けに配布した広報資料にて「ルノー・スポール・スピダーはロードユースにも適合するレーシングカー」と謳っていたとおり、公道走行に最低限必要な保安部品以外は、エアコンやオーディオなどの快適装備はもちろんのこと、ABSやLSD、パワーステアリングやブレーキブースターなど、1990年代においてすでに常識となり始めていたアシスト装備も一切持たないという、きわめてスパルタンかつストイックなスポーツカーだった。
ディエップの旧アルピーヌ・ファクトリーでは、1日4台ペースのハンドメイドで、トロフィー仕様を含めて1726台を生産。今回のオークション出品車両は、英国市場向けに60台のみが生産されたといわれる右ハンドル仕様の「パラブリーズ」である。
走行距離はおよそ7800マイル(約1万2600km)と年式のわりには少ないが、主要なサービスはきちんとおこなわれているようだ。カムシャフトの駆動ベルトやウォーターポンプ、フルードやフィルターなどを含む消耗品はすべて新品に交換。オリジナルのアロイホイールも新調され、新しいフロントタイヤが組み合わされているという。
近年ではマーケットに出る機会もめっきり少なくなったスピダーだが、この個体はコンディションも含めて、なかなかよい1台にも見えた。しかし、3月28日に締め切りを迎えたオンライン競売では落札に至らず、現在では4万300ポンド、日本円にして約612万円で継続販売となっている。
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