「ル・マン」仕様は価値あり! ベントレーとアストンマーティンの特別仕様車は高値安定
「ル・マン」を制したことのあるメーカーだけの特権
RMサザビーズ「OPEN ROAD FEBRUALY」オークションに出品された、もうひとつの「ル・マン」由来モデルは、アストンマーティン「ヴァンテージV600ル・マン」である。
1959年のル・マン24時間レースにて、ロイ・サルヴァドーリ/キャロル・シェルビー組およびモーリス・トランティニヤン/ポール・フレール組の乗る「DBR1」とともに果たした1−2フィニッシュ40周年を記念して企画された限定車である。
●2000 アストンマーティン「ヴァンテージV600ル・マン」
ベースとなったのは、1990年代前半のアストンにおける唯一の市販車だった「ヴィラージュ」の高性能版として1993年に登場した「V8ヴァンテージ」の、そのまたパワーアップ版である「ヴァンテージV600」である。
V8ヴァンテージの機械式スーパーチャージャーつき5.3リッターユニットをさらに強化し、550psから名前どおりの600psまでチューンナップされた。
そして1999年のジュネーヴ・ショーにて、40年前のル・マン優勝車両である「DBR1/2」の傍らで発表。40台のみ限定生産されたV600ル・マンは、ありがちなペイントとトリムのみスペシャルとしたコスメチューンではなく、完全に強化・アップグレードされたモデルだった。
フロントスポイラーから取り入れたエアを、ボンネット上の巨大なエアダクトから放出することでダウンフォースを改善した一方で、往年のDBR1を連想させるレーシングタイプのフィラーキャップなど「ル・マン」独自のディテールも注目に値する。
またインテリアでも軽量孔が穿たれたアルミ製ペダルや、同じくアルミニウム製シフトノブ、「エンジンターンド」仕上げのメタルパネルが標準モデルのウォールナットに置き換えられるなど、クラシックスポーツカーのエッセンスが織り込まれている。
ただし、製作当時V600ル・マンに標準指定されていたアルカンターラ座面ではなく、本革レザーを全面に張ったレカロ社製シートを装備しているのは、今回出品されたシャーシNo.「#70271」固有の特徴であることは記しておく必要があるだろう。
加えて「アストンマーティン・ワークス」工房で40台が作られたV600ル・マンの30台目であるこの個体には、ル・マン仕様の特徴であるアップグレートされたブレーキとサスペンション、ダイマグ社製中空マグネシウムホイールも備えられている。
そして2000年に、オマーン王室のさる重要人物に新車としてデリバリーされたのち、スイス・アルプスのシャレーにある私設ミュージアム内にひっそりと秘匿されていたという。
初代オーナーによる約10年間の所有ののち、V600ル・マンは売却。2012年にアストンマーティン・ワークスに戻された。そして、いったんベアメタルまで剥離された上で、元色「ペニーン・グレイ(Penine Grey)」再塗装。「ペッパーレッド」レザーのインテリアにも、ボディ色に合わせたダークグレーのパイピングが施された。
もちろんこの際にはメカニカル系にもフルサービスが実行され、車両に添付されるサービスファイルの請求書によると、燃料システムやブレーキ部品、サスペンションのオーバーホールがおこなわれたことが記されている。
また、誕生以来20余年の歴史のいずれかの段階で、元のマニュアルトランスミッションから現在の4速オートマティックに換装されているものの、本来の仕様に戻すことは可能とされていた。
かつてのアストンの栄光を窺わせるこのV600ル・マンに、RMサザビーズ欧州本社が設定したエスティメートは20万−25万ユーロ。そして競売では15件のビッド(入札)があり、締め切り時には23万ユーロに到達。オークションハウスに支払われるコミッション込みで、25万3000ユーロ。つまり邦貨換算で約3300万円が、最終的な落札価格となった。
合わせて244台が製作されたといわれる、スタンダードのアストンマーティン「V8ヴァンテージ(V550)」ないし「V600」は、近年の国際マーケットでは2000万円台半ばで取引されているようだ。その相場から判断すれば、今回の落札価格はおおむね順当。あるいは、リーズナブルともいえるだろう。
コメント
本コメント欄は、記事に対して個々人の意見や考えを述べたり、ユーザー同士での健全な意見交換を目的としております。マナーや法令・プライバシーに配慮をしコメントするようにお願いいたします。 なお、不適切な内容や表現であると判断した投稿は削除する場合がございます。