300台目はまっ黒くろすけ! ブラックで統一したブガッティ「シロン・ピュールスポール」とは

それぞれが唯一無二、名門ブガッティのハイパーカーたち

 通算300台目のブガッティ・シロンとなったシロン・ピュールスポールのオーダー主は、2名の乗員にオープンスカイの視界を提供するオプション「スカイビュー」を選んだが、残念ながらドライバーは運転中に上の景色を楽しむ時間などほとんどないに違いない。ブガッティはあくまで敏捷性とハンドリング、パフォーマンスのためにピュールスポールを開発したからだ。

●シロン・ピュールスポールはハンドリングマシンだ

「シロン・ピュールスポール」のメインカラーは、闇夜のごとき「ノクターン(Nocturne)」を選択
「シロン・ピュールスポール」のメインカラーは、闇夜のごとき「ノクターン(Nocturne)」を選択

 グリップのために最適化されたタイヤ、および固定式とされたリアウイングによる洗練されたエアロダイナミクスにより、より多くのダウンフォースと横方向の運動性が保証されるという。

 また4輪を駆動するパワートレインは、シロン用と同じく8リッターW16+4ターボエンジンで、最高出力1500ps/最大トルク1600Nm。ただしピュールスポールでは若干高回転型とされ、最大6900rpmで最高出力を発揮するセッティングに再チューンが施されている。

 そして50kgの軽量化にくわえて、ドライブトレインのギアレシオを15%低めたことから、シロン・ピュールスポールの加速性能は元より超絶的な速さを誇る標準型シロンよりもさらにアップ。

 スタートから2.3秒で100km/h、5.5秒で200km/h、12秒以下で300km/hに到達すると謳われている。ただ、最高速度では400km/h超を達成したシロンには及ばない350km/h(リミッターによる制限)に留まるものの、その理由はブガッティ曰く「lateral acceleration(横方向の加速)」、つまり最強のハンドリングマシンとして開発されたからである。

 このシロン・ピュールスポールは、2020年秋からアルザス地方モールスハイムにある「アトリエ(工房)」にて、すでに生産がスタートしている。

 車両本体価格300万ユーロ(約4億円)からという単価で60台のみがモールスハイムのスタッフたちの手で製造されることになっており、2021年中にその大部分がオーダー主のもとにデリバリーされる予定とのことである。

 現在モールスハイムのアトリエでは、シロン/シロン・ピュールスポールにくわえて、世界限定40台の「ディーヴォ(Divo)」や同じく世界限定10台といわれる「チェントディエチ(CentoDieci)」の製作もおこなわれ、2021年現在における世界でもっとも高級かつもっとも高価なクルマの生まれ故郷として認知されている。

 これら超弩級モデルたちは、現代のブガッティが伝説的な高級自動車ブランドの復活に相応しい、ハイパースポーツカーの開発に成功したことを証明している。

 もちろん、総計500台がシリーズ生産される予定のシロンであっても、ライバルを圧するほどにユニークな存在であり、それぞれが独自のクラスを築き上げたハイパースポーツカーであることは認めねばなるまい。

 そして、今回ラインオフが伝えられたシロン・ピュールスポールも、これから誕生するであろう残り200台のシロンたちも、それぞれにカスタマイズが施された「唯一無二」の存在となるのは間違いないのである。

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