業界騒然!! クーペより安価なチシタリアのカブリオの数奇な運命とは

わずか60台しか生産されなかったチシタリアのカブリオレとは

 RMサザビーズ「OPEN ROAD FEBRUALY」オークションにオーストリアから出品されたチシタリア202SCは、わずか60台が製作されたといわれるカブリオレの1台である

●1950 チシタリア「202 SC カブリオレ」

4気筒ながら、現在のクルマのデザイン源流でもあるチシタリアは、オークション・マーケットでは高額で取引されている(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's
4気筒ながら、現在のクルマのデザイン源流でもあるチシタリアは、オークション・マーケットでは高額で取引されている(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

 当時のイタリア製高級車の例にもれず、202SCには複数のカロッツェリアによってボディが競作された。そのなかでももっとも有名かつ歴史的な評価も高いのは「自動車デザイン史の記念碑的な1台」と称され、のちに「MoMA(ニューヨーク近代美術館)」にも永久展示されることになったピニンファリーナ製のクーペであろう。

 一方カブリオレ版は、ピニンファリーナ創始者であるバッティスタ・ファリーナ(のちのバッティスタ・ピニンファリーナ)の兄、ジョヴァンニ・ファリーナが率いる「スタビリメンティ・ファリーナ」と、同社出身の名職人アルフレッド・ヴィニャーレの2社が大部分を担当。2社とも同一に見えるボディを架装していた。

 今回の出品車、シャシNo.「#118 SC」にはスタビリメンティ・ファリーナのエンブレムがつくとともに、1976年に「チシタリア国際クラブ」がまとめたレジストリーでも同様の記述がされているものの、興味深いことに最近の研究ではコーチワークが「カロッツェリア・ヴィニャーレ」によっておこなわれた可能性があると指摘されているという。

 ヴィニャーレは1948年にスタビリメンティ・ファリーナから独立し、自らのカロッツェリアを興したばかりの時期で、当時は古巣からの下請け仕事も請け負っていたと推測されている。それゆえ、このような混同は充分に起こり得ることなのだ。

 チシタリア202SC「#118 SC」は、南米ウルグアイにチシタリアを輸出していたことで知られるイタリア人ディーラー、アダルベルト・フォンタナを介して、ウルグアイ在住の初代オーナーに納車。その後は半世紀以上にわたってウルグアイ国内に生息し、いずれかの時期にいったんボディをレッドに塗り替えられたという。

 2000年代初頭にイタリアへと帰還したのちは、ウルグアイ時代に欠品となっていたナルディ社製インテークマニホールドが装着され、ツインキャブレターが復活。その後はドイツやオーストリアの歴代オーナーのもとを渡り歩き、一時期はホワイトに塗装されていた。

 そして2011年に、やはりオーストリア在住の現オーナーが入手。その買収後、「#118 SC」はドイツの工房に持ち込まれ、ダークブルーのボディにベージュのインテリアという、現在のカラースキームでレストア。ボラーニ社製のワイヤーホイールも取り付けられた。

 チシタリア202SCは、復刻版「ミッレ・ミリア」を含む多くのクラシックカーラリーやコンクール・デレガンスで「Eligible(対象)」、つまり参加可能とされる一方、購入の機会は非常に限られたものとなる。

 そこでRMサザビーズ欧州本社は40万−45万ユーロ(邦貨換算約5200万−5850万円)という、かなり強気のエスティメートを設定していた。ところが、2月末におこなわれたオンライン競売では入札が進まず、落札価格はエスティメート下限に満たない37万5000ユーロ、日本円に換算すれば約4880万円に終わったのだ。

 わずか1100ccのスポーツカーとしては驚くほど高価に映るこの価格だが、実はもしも同じ条件で202SCピニンファリーナ製クーペが出品されていたら、おそらくはもっと高価な価格が付けられたと推測される。

 クラシックカーの世界では、クローズドよりもオープンボディが絶対有利。しかも202SCカブリオレはクーペ以上に希少なのだが、それでもクーペの方が高く評価される理由は、ひとえにピニンファリーナ製ボディの圧倒的な美しさにある。

 ルーフの有無を除いても、ややポッテリした感のあるスタビリメンティ・ファリーナ/ヴィニャーレ製よりも、スタイリッシュな緊張感のあるピニンファリーナ製こそがチシタリア202SC、という評価はそうそう崩せるものではないようだ。

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