わずか販売台数50台のモデルもあり? 愛すべき珍車5選

日本の自動車市場では月間2万台以上も売れる大ヒット車がある一方で、数十台、数百台しか売れないクルマもあります。そうしたモデルのなかにはもともと販売計画が少ないケースや、さまざまな理由で売れなかったクルマも存在。そこで、少量生産だったクルマのなかでも珍しいモデルを5車種ピックアップして紹介します。

限定車や特別仕様車だけでなく本当に売れなかったクルマもあり?

 現在、日本の自動車市場で大ヒットと評されるクルマは、平均で月間2万台ほどを販売します。一方で、月に数十台、数百台しか売れないクルマもあり、その理由もさまざまです。

わずかしか売らなかった、もしくは売れなかった稀代の珍車たち
わずかしか売らなかった、もしくは売れなかった稀代の珍車たち

 たとえば、高額なクルマではもともと販売目標が低く設定されていたり、台数限定の特別なモデル、モデル末期など人気が無いクルマなどが少量生産となっています。

 そこで、少量しか生産されなかったクルマのなかでも珍しいモデルを5車種ピックアップして紹介します。

●日産「セドリック ロイヤルリムジン」

旧車人気から現在もマイカーとして乗っている人もいる「セドリック ロイヤルリムジン」
旧車人気から現在もマイカーとして乗っている人もいる「セドリック ロイヤルリムジン」

 アメリカではセレブの送迎用のクルマとして、ホイールベースを延長したリムジンが古くから使われています。

 セダンをベースに車体を切り、伸ばして製作する「ストレッチリムジン」が一般的ですが、少数ながら当初からリムジンとして設計されたモデルもあります。

 国産メーカーではあまり馴染みがないジャンルですが、過去に三菱やトヨタ、日産がリムジンを販売していました。

 なかでもバブル景気の頃のリムジンとしてオーテックジャパンが日産7代目「セドリック」をベースに開発した「セドリック ロイヤルリムジン」があります。

 1987年に発売されたセドリック ロイヤルリムジンは、モノコックシャシを切って600mm伸ばし、つなぎ直す手法で製造されたストレッチリムジンです。

 後席は広大な空間となっており、前席との間にパーテーションを設置した仕様では専用のテレビやオーディオセット、ミニバーなどを装備。

 外観では専用にデザインされたフロントグリルが装着され、長くなった分のBピラーに小さな窓が設けられています。

 当時の価格は1000万円からで装備や内装の仕様はオーダーできることから、あくまでも定価は無いに等しいクルマでした。

 主な顧客は法人だったといいますが、どれほど売れたかは不明で、現存数の少なさからシリーズ屈指の珍車といえるでしょう。

 ちなみに、1996年に同じくオーテックジャパンから発売された「セドリック/グロリア ブロアムL」は、ホイールベースを150mm延長して大型のリアドアを装着したショートサイズのリムジンで、こちらは主にタクシーやハイヤーとして使われていました。

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●三菱「ピスタチオ」

三菱の技術力を投入した実験的なモデルだった「ピスタチオ」
三菱の技術力を投入した実験的なモデルだった「ピスタチオ」

 三菱は1996年に発売した8代目「ギャラン」と、兄弟車でステーションワゴンの「レグナム」に、量産車で世界初となる画期的なガソリン直噴エンジンの搭載車を設定しました。

 ガソリン直噴エンジンは燃料をシリンダー内に直接噴射して燃焼させる仕組みで、ディーゼルエンジンでは一般的でしたがガソリンエンジンでは均一な燃焼のコントロールが難しく、実現は困難でしたが、三菱は見事に量産化に成功。

 その後、ギャラン/レグナムに続いて次々と直噴エンジン搭載車を拡充します。

 なかでも非常に珍しいモデルとして1999年に発売された三菱「ピスタチオ」が挙げられ、1.1リッターという世界最小の直噴エンジンが搭載されました。

 ボディは同社の軽自動車「ミニカ」をベースとした4人乗りの3ドアハッチバックで、専用のバンパーによって全長は3440mmに伸ばされましたが、全幅は1475mmと軽自動車規格のままとされ、車重はわずか700kgです。

 トランスミッションは5速MTのみで、直噴エンジンはアイドリングストップも採用したことにより、30km/L(10・15モード)の燃費を達成。これは、当時の純粋なガソリンエンジン車で世界一の「低燃費」でした。

 しかし、ピスタチオはわずか50台のみの限定販売で、一般ユーザーには販売されず顧客は積極的に環境保全に取り組んでいる自治体や、公益企業などの法人のみに限定。

 なお、価格は95万9000円(消費税含まず)とかなり安価でしたが、実証実験の意味合いもあったようで、赤字覚悟だったかもしれません。

●オーテック・ザガート「ステルビオ」

まさにバブル景気が誕生させた超高級車の「ステルビオ」
まさにバブル景気が誕生させた超高級車の「ステルビオ」

 ザガートはイタリアの名門カロッツェリアとして名を馳せ、主にアルファロメオやランチアのクルマをベースに数多くの名車をつくってきました。現在は「SZデザイン」に社名を変え、継続して工業デザインをおこなっています。

 ザガートと日本車の関わりは数少ないのですが、1989年に発売されたオーテック・ザガート「ステルビオ」は衝撃的なデザインで大いに話題となりました。

 ステルビオはオーテックジャパンが開発し、主要なコンポーネンツは日産2代目「レパード」から流用され、デザインと一部のアッセンブリーはザガートが担当。

 外観はザガートにより一新された2ドアクーペで、ボンネットに内蔵されたフェンダーミラーが最大の特徴です。また、ダブルバブルのルーフやリアまわりのデザインには、ザガートのアイデンティティが色濃く反映されています。

 内装はレパードと共通の意匠ながら、ダッシュボードやシート、そのほかの内張りが本革に変更され、メーターパネルやセンターコンソールなどに本木目がふんだんに使われるなど、高級なイタリアンスポーツカーをオマージュ。

 搭載されたエンジンはオーテックジャパンがチューニングをおこなった、最高出力280馬力を発揮する3リッターV型6気筒ターボの「VG30DET型」で、トランスミッションは4速ATのみです。

 生産はベースとなるレパードのシャシを日本からザガートに送り、アルミ製ボディパネルやカーボンファイバー製ボンネットなどを架装して再度輸入され、最終的にオーテックジャパンが仕上げて販売するというものでした。

 200台の限定生産で日本のみならず海外でも販売されましたが、当時、日本での価格は1870万円と「シーマ」の3倍以上の高額に設定するなど、まさにバブル景気を象徴しています。

 しかし、船による輸送中に一部の部品が錆びてしまったり、ほかにも品質的な問題があったことから、陸揚げから納車までにかなり手間がかかっていまい、事業としては成功したとはいえませんでした。

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